現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第24話、穐斗の家族関係はこんな感じです。

「先輩……大変なことがあったんですか?」

車を回しながら、祐也ゆうやが問いかける。

「いや、取材が鬱陶しいのと、こいつが、風遊ふゆさんに会いたいって」
「はぁ、穐斗あきとのお母さんですし?」
「いや、醍醐だいごは風遊さんが好きなんだ」

祐也に買って貰ったジュースを口に入れた穐斗が吹き出す。

「こ、こら‼穐斗‼ティッシュ‼」
「ご、ごめんなさい……鼻痛い……」
「帰ったら、薬を飲むぞ」
「二人とも~?人の恋愛のことを、聞かないふりはやめましょうね?」

ニッコリ笑う醍醐に、穐斗が、

「だ、だってぇ~‼いくら、醍醐先輩が優しくて、かっこよくて、僕の父親よりもできた人でも、母さんあれで、36~‼」
「は?」

日向ひなたは呆気に取られる。

「ちょっと待て。今、幾つって言った?」
「36才です。母さん、年上ですよ~‼」
「おかしなことを聞いたぞ‼前に聞いたが……高校は……?」

穐斗が、えっと首をかしげて答える。

「母さん、小さいときに子グマ拾って、面倒見てたんです。でも、でっかくなって、もう山に返せないからって特別に動物園に引き取られて~。で、泣いてる母さんに、じいちゃんがテディベアをあげたら、テディベアの勉強する~‼って、廃校になってるあの、お祭りの会場でもある中学卒業したら、ドイツに留学して~イングランドに留学してたときに、うちの父に出会っちゃって~お……」

醍醐に口を押さえられもごもごする。

「話いろいろ聞いてますからね。わかった上で、好きなんですよ」
「僕の父より、先輩応援したいです‼でも、怖いです‼」

穐斗の声に、

「まぁ……私と風遊さんでは、釣り合いませんけど……私は普通ですし……」
「お前のどこが普通だ‼」

突っこみ、日向は、

「まぁ、こういうことと、こちらも、ただすの執筆に支障も出るし、で邪魔だろうけれどと思ってな」
「はぁ……」
「僕はうれしいです‼頑張って、母さん口説いてください‼僕、弟欲しいです‼」
「ちょっと待て‼穐斗‼母さんの再婚を押していいのか‼」

祐也に、

「うん‼いい‼どうせ、あの人浮気三昧、恋人ばっかりだよ~?倫理観ないもん」
「あっち?イギリスは紳士の国って……」
「……ないない」

視線をそらす。

「あったら、姉ちゃんにもう一人のモルガーナお姉ちゃんおらんもん」
「モルガーナお姉さんって……」
「母さんと変わらんよ。と言うか、上やったかな?うん、二つ上。僕と同い年の息子と、二つ下の息子がおるけんね」
「はぁぁ‼」

穐斗のあっさりさ加減に、呆れる周囲。

「同じ年の子がガウェイン。下のがモルドレッド、言うんやけど、ウェインは仲良しで、よぉ文通しよるけど、レッドは、ハーフの僕を馬鹿にしとるなぁ……モルガーナお姉ちゃんは、母さんとなかよしやけん。時々僕にも手紙くれるし、向こうにおいでって言うてくれるけど」
「ちょっと待って‼」

糺が、鶴姫つるひめだっこしたまま手をあげる。

「さっきから聞いてるけど‼お姉さんの名前のモルガーナ、マルガレーテはドイツ語読みで、イングランドの名前にしたらマーガレット‼、モルガーナお姉さんの息子のガウェインとモルドレッドって、どう考えても、有名なあの伝説の登場人物と同じ名前じゃないの~?」
「はい。アーサー王伝説です。僕の父、アルテミスって言うんです。でも、女の子の名前が恥ずかしいってアーサーって名乗ってます。昨日、大学の医務室の先生に言われた通り、向こうのじいちゃんはアンブロシアって言って、ユーザー・ペンドラゴンの綴りはほぼ一緒で、読み方を変えたものなので、ユーザーで通してて、モルガーナお姉ちゃんはマルゴーから、姉ちゃんはモルガン・ル・フェイ、モーガンとも言いますよね。そこからです」
「……」
「で、父さんが、結婚の時に、母さんに向こうの名前を付けて、グィネヴィアって……で、ブチって」

そら、言うわ……。

と4人は心の中で呟く。
グィネヴィアは、アーサー王伝説の中で、アーサーの王妃であり、アーサー王伝説の第一の騎士ランスロットを惑わし、マルゴーの息子のモルドレッドが、アーサー王が遠征に出ている間に裏切り、終焉を迎えるアーサー王伝説の転機となる鍵を握る存在である。

「先輩‼父から母さん奪って、頑張ってください‼ランスロット役‼」
「それはぁ……いい意味で言ってます?穐斗くん?」
「だってぇ~僕の父、本当にだらしない、最低のアーサーだしぃ~。それだったら湖の騎士のランスロット‼良いじゃないですか。そ、それとも、ひとつ違いの息子の僕、嫌い?」

ベソをかいた穐斗に、

「それはないんですけど、逆に、反対するのかと……」
「全くありません‼どうぞ‼僕のお父さんになってください‼あ、でも、先輩京都に戻るんですよね?」
「いえ、あぁ、知りませんでしたっけ?私の家は遡れば元々奈良時代のとある姓に繋がるんですよ~。藤原氏に政権を奪われ、没落して本家は途絶えて、分家のそのまた分家になるんですけどね~?本家が途絶えたときに、一度、地方に下っていた分家にある程度の色々なものを送ったらしいと聞いていて、それを調べるために、こっちに来たんですよ~。でも、余り詳しく調べずにポッと来たもので、困っていたらその時に、祐也君に知り合って、色々と考古館とか連れていってもらって、それに、市の図書館と県の図書館も。まだまだ調べ足りませんし~それに、調べ始めると、色々と知りたくなるので、ホタルを見に来たでしょう?初夏に。そうしたら、この地域のことも知りたくなって……親には伝えたんですよ。こっちにいるって。そうしたら、両親は賛成してくれたんですけど、鬱陶しいのが……」

遠い目をする醍醐に、

「頑張って下さい‼僕も応援します‼」
「じゃぁ、春にでも、一緒に行きますか?まつりに」
「えぇ‼行ってみたいです‼葵祭あおいまつりですよね‼わぁぁ‼斎王代さいおうだいの神事は見れないんですよね。でも、でも‼」
「店は松尾大社まつのおたいしゃの近くなんですけど、祖母の実家が賀茂かも姓なんですよ。道沿いに家があって、二階から見るんが、毎年恒例です。今年は、二人がサークルにはいる前でしたから、来年は見に行きますか」

と言う感じで、家に帰っていったのだった。

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