現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第22話、先輩たちから緊急連絡が入ってきました。

祐也ゆうやは、初めて食べる肉に興味津々で、口にいれる。
口を動かすと、呑みこみ……。

「もっと生臭いんかとおもっとった。想像よりやらかいし、すこぅし癖があるけんど、嫌な感じじゃないなぁ。うまいわ‼母さんにばあちゃん」
「ほぉか?良かったわ。もっとあるで」
「うん、だんだん‼ほら、穐斗あきとも」

箸を置いていた穐斗が、

「祐也、ごめんね?姉ちゃんが……」
「穐斗が謝らんでかまんで。それより食べよで」
「でも……」
「ほら」

口に入れると、もごもごとして、

「うまぁぁ‼」
「やろ?せっかくおっちゃんが獲ってきてくれたんやけん。食べんともったいないで?」
「うん‼……あれ?スマホ?」

鳴っているスマホに近づき、取ると、

「あー‼醍醐だいご先輩‼だんだん‼……あ、ありがとうございます。ちょっと元気になりました‼」
「醍醐先輩‼」

穐斗が、

「はい、はい……え、エェェ‼先輩たちにも?ちょっと待ってくださいね?」

手を押え、

「祐也。それにじいちゃん、ばあちゃん、母さん、おいちゃん。どうしょうか?なんかなぁ?サークルの先輩らの家にも、取材陣がきよって、困っとんやって。で、今、紅葉山公園もみじやまこうえんの駅におるんやって」
「紅葉山って……」

祐也は穐斗と顔を見合わせる。

紅葉山公園駅は、JRの駅である。
穐斗の実家から一番近い駅ではあるが、それから、山道を15分程度車で走る。

「ちょっと待ってや。まぁ、一回だけ3人と、ここに来たときに送ってもらった駅やけど……」
「迎えにいかんと‼」

立ち上がろうとする穐斗に、祐也が、

「母さん。先輩たち迎えにいってもええやろか?俺が車運転するし」
「僕が道案内する~‼」
「祐ちゃんは安心やけど、穐斗は心配やなぁ」

言いながら、鍵を取りだし、

「はい。祐ちゃん。穐斗もよろしくなぁ?」

と、言いながら手渡す。

「はい、じゃぁ、いってこうわい‼」
「いってこうわい……って、あれ?祐也。ぴょこぴょこしよるよ~?」
「あぁ、鶴姫つるひめも来るんか?おとなしゅうしとんで?」
弁慶べんけい義経よしつねもいきたいって」
「はぁぁ?まぁ、先輩たちは平気やけどな。行くか~?」

二人と3頭が出ていくのを、

「いっといでや~」

と4人は見送る。

「二人の先輩って……」
「あぁ、3人よ。一人がほんっとかわええ女の子で、スゥちゃん。スゥちゃんの旦那さんのひなちゃん。ひなちゃんの親友が醍醐くんや」
「DAIGO言うて、あのテレビの?」
「アホか‼」

猟の犬はもう飼っていないものの、銃は置いている麒一郎きいちろうは、拳で殴る。

「京都の醍醐。醍醐寺の醍醐や。蛍を見にきとったやろが、穐斗の先輩や言うて。小さい女の子と、眼鏡をかけたきりっとした坊主と、もう一人……」
「あぁ、綺麗な顔した兄ちゃんな。頼りなさそな感じの……」
「お前は絶対に、アホや」

麒一郎は呆れ果て、晴海はるみは、

「あの醍醐くんはなぁ、京都の有名な和菓子のお店の松尾まつのおの坊っちゃんやで?」
「松尾……言うて、エェェ‼あの?前に、テレビで交渉しても予約と、常連優先とかいうんか?」
「そうそう。本人も相当なおいしいお菓子を作ってくれてなぁ?」

息子同様和菓子党の風遊ふゆである。

「ホントにええ子やで。でも、こもたなぁ……夏樹のせぇで、こがいなことになってしもて……あぁ、3人の部屋はどないしよか……新婚のスゥちゃんとひなちゃん言うんも、いけんし……今日はスゥちゃんとうちが寝て、上に、ひなちゃんと醍醐くん、穐斗と祐ちゃんやなぁ」

立ちあがり、

「まっちゃん。こっちの客用布団。持ってくの手伝わんかいね」
「いっつもわをつこうて、お前は鬼か‼」
「ハイハイ。後で、酒おのみや」

恋愛感情のない幼馴染みは、顎で使われるのである。

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