現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……
第10話、穐斗と祐也のサークルはこちらです。
心臓に悪いHRを終え、残りの授業もなんとかこなした二人は、祐也が手を引きながら、歩き出す。
週に二回開かれるサークルに顔を出すためである。
「今日は、なるべく早く帰れるように副部長に頼むか?」
「大丈夫かなぁ?部長はあれだし」
言いながら、図書館に入る。
図書館は、4年間二千円の入館料がかかる。
その為、入る人間は少ない。
二千円を払って、図書館に行くのなら、遊びに使うと言う人間もいるためである。
しかし、表向き脳みそまで筋肉質と言われる祐也だが、何を隠そう、読書好きであり、ここの大学を選んだのは図書館の蔵書が他の国立大学のなかでも群を抜いて多く、特に、最初は兄弟と一緒にしていたゲームから世界の神話、伝承、特に北欧神話とワルキューレ、ロキのことを勉強している。
穐斗は、世界の神話も好きだが、世界の妖精譚、特にイギリスの妖精、それに関連してアーサー王伝説を調べている。
入り口で職員にカードを提示する。
お互いに頭を下げると、入っていき、奥の扉を開ける。
一種の、戻ってきた本の一時的な置場所兼修復する空間、そして、二人の入っている、読書サークルの部屋である。
「こんにちは。先輩。お早いですね」
「あぁ……」
顔をあげるのは、少々冷たい印象の細いフレームの眼鏡の青年。
2年生の、一条日向。
本人は名前が嫌いだと言うのだが、先輩からも後輩からも『ひなちゃん』『ひな先輩』と呼ばれている。
「祐也に……穐斗か?ずいぶん普段と違う格好だな。それに顔が大変だ」
「朝の挨拶にトンって叩いたら突き飛ばした感じになっちゃって……鼻の骨が折れちゃったんです」
「木曜日に、又病院行くんです。手術したんです」
「ほぉ……無理はするなよ?穐斗」
「はーい‼」
見た目は冷たいが、とても温厚な人である。
と、扉が開き、
「あぁ、遅れちゃいましたか?すみませんね~?」
大きな袋を持って入ってくるのは、副部長の2年生、松尾醍醐。
松尾と言う名字もあり、生まれは京都。
元々おっとりとした青年で、言葉遣いもはんなりとしていたが、少しだけ早口になったと本人は述べている。
「おやぁ?ひなに、祐也くんに、女の子ですか~?彼女さん?」
「違いますぅ‼醍醐先輩‼僕です‼穐斗です‼」
「おやぁ?眼鏡は?それにそのお顔はどうしましたか?傷だらけではありませんか~?」
「祐也が背中叩いたら、顔面から倒れたんだと。祐也にも悪気はなかったんだが、鼻の骨が折れたらしい」
「ひな~?説明ありがとうございます。でも、大変ですねぇ。可愛い顔に」
荷物をよいしょっとテーブルに置くと、
「でも、治ったら、髪切りましょうね。穐斗くんはひどいくせ毛ですからねぇ」
「はーい‼」
「じゃぁ、はい。お茶はダメですから、ジュースにしてますよ~?それと、作ってみたんですよ~実家の和菓子をアレンジしてみました」
「わぁぁ‼醍醐先輩、ありがとうございます‼」
ジュースのペットボトルと、お菓子の包みをもらい、てててっと自分のお気に入りの場所、部屋の隅に誰かが無理矢理椅子を挟み込んだ場所に行き、目的の本を取りに行くと読み始める。
「ひな先輩も醍醐先輩も、穐斗のあの小犬オーラ大丈夫なんですね……」
ふと呟いた祐也にお茶のペットボトルとお菓子を渡しつつ、
「いえ、結構ビックリですよ。お目目クリクリで、えへっと照れ笑いされると頭をナデナデしたくなりますねぇ~」
「と言うか、あの地味な使用前、今の使用後のギャップは結構きついだろう。でも、私は気にならん」
「ひなは結婚してますからねぇ。部長と」
ニッコリ笑う醍醐に、うっすら頬を赤く染め、
「五月蠅い。表向きは先輩後輩だ」
と、最後に扉が開き、
「遅れてごめんなさいね。皆さん」
こちらもちんまりとしたかわいいワンピースの少女。
童顔に、世界的家族ブランドのLiuliの可愛らしいフリルやレースの似合う、3年生で部長の一条糺。
一つ年下の日向と結婚して2年、未だに新婚ホヤホヤオーラ全開である。
「ひなちゃん‼来てたの‼遅れてごめんなさい‼」
「いや、それはいいけれど、転んだりはしなかったか?」
「大丈夫‼心配してくれてありがとう。……あら?女の子?」
いつもの祐也の席の手前でもある椅子に座っている穐斗を見つめ、呟く。
「いや、穐斗だ。穐斗は転んで顔面強打。鼻骨骨折で手術したらしい」
「エェェェ‼あきちゃん‼大丈夫?」
「大丈夫です~‼ありがとうございます。先輩」
「あらぁ、眼鏡はずして、お洋服は女の子もの……可愛い~‼似合うわ‼」
糺は近づく。
「ちょうど洗濯してて、服がなくて、姉の着なくなったって送ってきてた服を着たんです。恥ずかしいです」
「良いのよ。サイズが合えば」
「そうですか?でも、先輩のように、ちゃんと似合う格好ができればなぁっていつも思います。ひな先輩と合わせたり、とてもお似合いです」
ニコッと笑う穐斗に、
「まぁまぁ……可愛い~‼どうしましょう‼このときめきは、小説に書かないと‼」
「糺……あぁ、又自分の世界に……穐斗に文句も言えないし‼」
「まだまだ甘いんですよ~」
「五月蠅い」
日向は親友を睨み付ける。
この部は、性別年齢不詳の小説家、日向糺の執筆活動のための部屋でもあり、醍醐は京都を中心とした寺社仏閣等の歴史研究、日向は中国の歴史研究をしている。
自分で自由に図書館から本を持ってきて読んだり、今、穐斗がしているようにノートに書き込みをしておくなりとできるようになっている。
一応サークルとしては、副部長の醍醐が形を整えているのだ。
5人はそれぞれ、自分の研究、調べもの等に時間を費やすのだった……。
週に二回開かれるサークルに顔を出すためである。
「今日は、なるべく早く帰れるように副部長に頼むか?」
「大丈夫かなぁ?部長はあれだし」
言いながら、図書館に入る。
図書館は、4年間二千円の入館料がかかる。
その為、入る人間は少ない。
二千円を払って、図書館に行くのなら、遊びに使うと言う人間もいるためである。
しかし、表向き脳みそまで筋肉質と言われる祐也だが、何を隠そう、読書好きであり、ここの大学を選んだのは図書館の蔵書が他の国立大学のなかでも群を抜いて多く、特に、最初は兄弟と一緒にしていたゲームから世界の神話、伝承、特に北欧神話とワルキューレ、ロキのことを勉強している。
穐斗は、世界の神話も好きだが、世界の妖精譚、特にイギリスの妖精、それに関連してアーサー王伝説を調べている。
入り口で職員にカードを提示する。
お互いに頭を下げると、入っていき、奥の扉を開ける。
一種の、戻ってきた本の一時的な置場所兼修復する空間、そして、二人の入っている、読書サークルの部屋である。
「こんにちは。先輩。お早いですね」
「あぁ……」
顔をあげるのは、少々冷たい印象の細いフレームの眼鏡の青年。
2年生の、一条日向。
本人は名前が嫌いだと言うのだが、先輩からも後輩からも『ひなちゃん』『ひな先輩』と呼ばれている。
「祐也に……穐斗か?ずいぶん普段と違う格好だな。それに顔が大変だ」
「朝の挨拶にトンって叩いたら突き飛ばした感じになっちゃって……鼻の骨が折れちゃったんです」
「木曜日に、又病院行くんです。手術したんです」
「ほぉ……無理はするなよ?穐斗」
「はーい‼」
見た目は冷たいが、とても温厚な人である。
と、扉が開き、
「あぁ、遅れちゃいましたか?すみませんね~?」
大きな袋を持って入ってくるのは、副部長の2年生、松尾醍醐。
松尾と言う名字もあり、生まれは京都。
元々おっとりとした青年で、言葉遣いもはんなりとしていたが、少しだけ早口になったと本人は述べている。
「おやぁ?ひなに、祐也くんに、女の子ですか~?彼女さん?」
「違いますぅ‼醍醐先輩‼僕です‼穐斗です‼」
「おやぁ?眼鏡は?それにそのお顔はどうしましたか?傷だらけではありませんか~?」
「祐也が背中叩いたら、顔面から倒れたんだと。祐也にも悪気はなかったんだが、鼻の骨が折れたらしい」
「ひな~?説明ありがとうございます。でも、大変ですねぇ。可愛い顔に」
荷物をよいしょっとテーブルに置くと、
「でも、治ったら、髪切りましょうね。穐斗くんはひどいくせ毛ですからねぇ」
「はーい‼」
「じゃぁ、はい。お茶はダメですから、ジュースにしてますよ~?それと、作ってみたんですよ~実家の和菓子をアレンジしてみました」
「わぁぁ‼醍醐先輩、ありがとうございます‼」
ジュースのペットボトルと、お菓子の包みをもらい、てててっと自分のお気に入りの場所、部屋の隅に誰かが無理矢理椅子を挟み込んだ場所に行き、目的の本を取りに行くと読み始める。
「ひな先輩も醍醐先輩も、穐斗のあの小犬オーラ大丈夫なんですね……」
ふと呟いた祐也にお茶のペットボトルとお菓子を渡しつつ、
「いえ、結構ビックリですよ。お目目クリクリで、えへっと照れ笑いされると頭をナデナデしたくなりますねぇ~」
「と言うか、あの地味な使用前、今の使用後のギャップは結構きついだろう。でも、私は気にならん」
「ひなは結婚してますからねぇ。部長と」
ニッコリ笑う醍醐に、うっすら頬を赤く染め、
「五月蠅い。表向きは先輩後輩だ」
と、最後に扉が開き、
「遅れてごめんなさいね。皆さん」
こちらもちんまりとしたかわいいワンピースの少女。
童顔に、世界的家族ブランドのLiuliの可愛らしいフリルやレースの似合う、3年生で部長の一条糺。
一つ年下の日向と結婚して2年、未だに新婚ホヤホヤオーラ全開である。
「ひなちゃん‼来てたの‼遅れてごめんなさい‼」
「いや、それはいいけれど、転んだりはしなかったか?」
「大丈夫‼心配してくれてありがとう。……あら?女の子?」
いつもの祐也の席の手前でもある椅子に座っている穐斗を見つめ、呟く。
「いや、穐斗だ。穐斗は転んで顔面強打。鼻骨骨折で手術したらしい」
「エェェェ‼あきちゃん‼大丈夫?」
「大丈夫です~‼ありがとうございます。先輩」
「あらぁ、眼鏡はずして、お洋服は女の子もの……可愛い~‼似合うわ‼」
糺は近づく。
「ちょうど洗濯してて、服がなくて、姉の着なくなったって送ってきてた服を着たんです。恥ずかしいです」
「良いのよ。サイズが合えば」
「そうですか?でも、先輩のように、ちゃんと似合う格好ができればなぁっていつも思います。ひな先輩と合わせたり、とてもお似合いです」
ニコッと笑う穐斗に、
「まぁまぁ……可愛い~‼どうしましょう‼このときめきは、小説に書かないと‼」
「糺……あぁ、又自分の世界に……穐斗に文句も言えないし‼」
「まだまだ甘いんですよ~」
「五月蠅い」
日向は親友を睨み付ける。
この部は、性別年齢不詳の小説家、日向糺の執筆活動のための部屋でもあり、醍醐は京都を中心とした寺社仏閣等の歴史研究、日向は中国の歴史研究をしている。
自分で自由に図書館から本を持ってきて読んだり、今、穐斗がしているようにノートに書き込みをしておくなりとできるようになっている。
一応サークルとしては、副部長の醍醐が形を整えているのだ。
5人はそれぞれ、自分の研究、調べもの等に時間を費やすのだった……。
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