異世界で、英雄譚をはじめましょう。
第二百五十一話 偉大なる戦い・決戦編⑯
「……おい!」
僕が現実に揺り戻されたのは、ストライガーの声だった。ストライガーは呆れたような苛立っているような、そんな表情だった。いずれにせよ、淡白な反応をしている僕に対しての反応だったのだろう。
ストライガーの方を向いて、首を傾げた。
「どうか……したか?」
「それはこっちの台詞だ」
ストライガーは深い溜息を吐いて、
「今は何の話をしていたか、きっと分かっていないだろうから、最初から説明してやる。オリジナルフォーズという勢力をいかにして無効化するか。それについて対策を話し合っていたのに、当の本人がそうなってしまっては、これからが大変だな」
「それは言い過ぎじゃない? 急に言われて、頭が混乱しているのよ、きっと」
そう言ったのは茶屋の店主だった。はっきり言ってその救い手はとても有り難かった。実際、話を聞いていなかったーーということになってしまうのだから。
ストライガーは二対一になって自分の立場が悪くなったことに気付いたのか、咳払いを一つして、カウンターに置かれた水を飲み干した。
「……それじゃあ、これからの作戦について、話し合うことにしましょうか」
ストライガーはそう言うと、作戦について語り始めた。
作戦についての談義は世間話も交えながらだったため、簡単に自分の中で整理すると、とんでもなくシンプルな作戦だった。
一言で説明するならば、相手を迎え入れる。
やってきたオリジナルフォーズをジャパニアで迎え撃って、そのまま撃退する。非常に単純な作戦だとは思うけれど、問題はそれを現実に実行出来るか、ということだ。やっぱりそこは一番の問題だと思うし、そこは何とかしないといけないだろう。
ストライガー曰く、戦いに参加するのはほとんどが男性、しかも十八歳以上と限られている。理由は、女性と子供は非力であり、さらに守るべき存在であるということだった。成る程、確かにそれは間違っちゃいないだろう。
「では、こちらの戦力はどれくらいなんだ?」
僕はストライガーに質問を投げかけた。
ストライガーは溜息を吐いて、
「言いましたよね。ジャパニアの戦力は、どれほど掻き集めても一万人くらいだ、と。なので、最大戦力がそれくらいと言っていいでしょう」
一万人。
ジャパニアの最大戦力ーーとどのつまり、言い換えればそれはその人数が兵力と言ってもいいだろう。ろくに兵器がないのに、一万人しか使えない? 負け戦と言っても過言ではないように思えるが、それは間違っちゃいないのだろうか。
ストライガーの話は続く。
「……人数ははっきり言って多くはありません。けれど、それは致し方ないことなのです。どうかご理解いただきたい。ジャパニアに居る人間の中で、戦争への賛同とその準備をしていただけているのはその人数だけ、となるのですから」
「ということは、それよりももっと多くの人間が参加する可能性があった、と?」
なるべくなら怪我する可能性のある人員は必要最小限にしたほうがいいだろう。しかしながら、問題はオリジナルフォーズの戦力だ。たとえ一万人の戦力が居るとして、技術力は低い。
となると、オリジナルフォーズに対抗するためには出来る限り人を集めておく必要がある、ということになる。さっきの話と矛盾するが、オリジナルフォーズの戦力が未知数であることを考慮すると、仕方ない。
「まあ、あなたが心配するのも致し方ないでしょう。実際、あなたにこの話をするまで、何度も交渉を重ねていました。けれど、失敗に失敗を重ねて、結局その人数に落ち着きました」
「もともとはどれくらいですか?」
「一万三千五百人、端数はもっとありますけど」
つまり三千五百人が不参加ということか。まあ、総数からのその人数は多いほうだろうし、全然問題はないだろう。寧ろストライガーは功労賞を与えてもいい気がする。
ストライガーは立ち上がり、僕の方を向いた。
「とりあえず、あなたには今回の戦いを勝利に導いてもらわなくてはなりません。そうしなければ、人類に勝利はありませんから」
そしてストライガーはそのまま立ち去っていった。
問題は山積みだった。そして、その問題を如何に解決していくかを考えるために、家に帰る足取りはとても重たかった。
「……まずは一花に『あの力』が宿っているのかどうか、それを確認しないといけないな」
恐らく、その力が彼女に宿っていたら彼女は紛れもなくあの存在へと昇華することとなるだろう。
ガラムド。
この世界の神的立ち位置に居る存在で、僕にこの試練を受けるよう指示した存在でもある。
「もし、彼女がガラムドだと言うならば……、僕は、風間修一は、ガラムドの親ということになる」
別にそれは間違った認識では無いと思う。
確かに色々な宗教の神も、普通の人間から生まれていたような気がするし、それについては認識の違いという一言で片付けられるだろう。
だが、ほんとうにそうなのだろうか?
ほんとうにそれで片付けてしまっていいのだろうか。
「……やはり、色々と確認しないといけないな」
結局、まずは現状を把握しなければ何も始まらない。だから僕は、一花に会いに、家に帰るのだった。
僕が現実に揺り戻されたのは、ストライガーの声だった。ストライガーは呆れたような苛立っているような、そんな表情だった。いずれにせよ、淡白な反応をしている僕に対しての反応だったのだろう。
ストライガーの方を向いて、首を傾げた。
「どうか……したか?」
「それはこっちの台詞だ」
ストライガーは深い溜息を吐いて、
「今は何の話をしていたか、きっと分かっていないだろうから、最初から説明してやる。オリジナルフォーズという勢力をいかにして無効化するか。それについて対策を話し合っていたのに、当の本人がそうなってしまっては、これからが大変だな」
「それは言い過ぎじゃない? 急に言われて、頭が混乱しているのよ、きっと」
そう言ったのは茶屋の店主だった。はっきり言ってその救い手はとても有り難かった。実際、話を聞いていなかったーーということになってしまうのだから。
ストライガーは二対一になって自分の立場が悪くなったことに気付いたのか、咳払いを一つして、カウンターに置かれた水を飲み干した。
「……それじゃあ、これからの作戦について、話し合うことにしましょうか」
ストライガーはそう言うと、作戦について語り始めた。
作戦についての談義は世間話も交えながらだったため、簡単に自分の中で整理すると、とんでもなくシンプルな作戦だった。
一言で説明するならば、相手を迎え入れる。
やってきたオリジナルフォーズをジャパニアで迎え撃って、そのまま撃退する。非常に単純な作戦だとは思うけれど、問題はそれを現実に実行出来るか、ということだ。やっぱりそこは一番の問題だと思うし、そこは何とかしないといけないだろう。
ストライガー曰く、戦いに参加するのはほとんどが男性、しかも十八歳以上と限られている。理由は、女性と子供は非力であり、さらに守るべき存在であるということだった。成る程、確かにそれは間違っちゃいないだろう。
「では、こちらの戦力はどれくらいなんだ?」
僕はストライガーに質問を投げかけた。
ストライガーは溜息を吐いて、
「言いましたよね。ジャパニアの戦力は、どれほど掻き集めても一万人くらいだ、と。なので、最大戦力がそれくらいと言っていいでしょう」
一万人。
ジャパニアの最大戦力ーーとどのつまり、言い換えればそれはその人数が兵力と言ってもいいだろう。ろくに兵器がないのに、一万人しか使えない? 負け戦と言っても過言ではないように思えるが、それは間違っちゃいないのだろうか。
ストライガーの話は続く。
「……人数ははっきり言って多くはありません。けれど、それは致し方ないことなのです。どうかご理解いただきたい。ジャパニアに居る人間の中で、戦争への賛同とその準備をしていただけているのはその人数だけ、となるのですから」
「ということは、それよりももっと多くの人間が参加する可能性があった、と?」
なるべくなら怪我する可能性のある人員は必要最小限にしたほうがいいだろう。しかしながら、問題はオリジナルフォーズの戦力だ。たとえ一万人の戦力が居るとして、技術力は低い。
となると、オリジナルフォーズに対抗するためには出来る限り人を集めておく必要がある、ということになる。さっきの話と矛盾するが、オリジナルフォーズの戦力が未知数であることを考慮すると、仕方ない。
「まあ、あなたが心配するのも致し方ないでしょう。実際、あなたにこの話をするまで、何度も交渉を重ねていました。けれど、失敗に失敗を重ねて、結局その人数に落ち着きました」
「もともとはどれくらいですか?」
「一万三千五百人、端数はもっとありますけど」
つまり三千五百人が不参加ということか。まあ、総数からのその人数は多いほうだろうし、全然問題はないだろう。寧ろストライガーは功労賞を与えてもいい気がする。
ストライガーは立ち上がり、僕の方を向いた。
「とりあえず、あなたには今回の戦いを勝利に導いてもらわなくてはなりません。そうしなければ、人類に勝利はありませんから」
そしてストライガーはそのまま立ち去っていった。
問題は山積みだった。そして、その問題を如何に解決していくかを考えるために、家に帰る足取りはとても重たかった。
「……まずは一花に『あの力』が宿っているのかどうか、それを確認しないといけないな」
恐らく、その力が彼女に宿っていたら彼女は紛れもなくあの存在へと昇華することとなるだろう。
ガラムド。
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