異世界で、英雄譚をはじめましょう。
第二百三十七話 偉大なる戦い・決戦編②
シルフェの剣。
それは、僕があの世界にやってきてエルフの隠れ里で手に入れた伝説の剣。
確かガラムドがエルフに託したものだったと思ったけれど、まさかこれがずっと昔から残されていたものだとは思いもしなかった。まあ、そもそも神様が残したものだから二千年以上昔に作られていてもおかしくはないか。
「シルフェの剣、ですか。いいですね、良い名前です。やはりあなたにお願いして良かった。あなたにお願いしていれば、きっといい名前が付けられるだろうと前々から考えていたのですよ。ですから、あなたにはこれを差し上げましょう」
鞘に収められた一振りの剣を、キガクレノミコトは丁寧に僕に差し出した。
その剣は、僕が初めてその剣を見た時と比べて、雰囲気が違っているように見えた。どんな雰囲気だったかというのは具体的にはっきりとは言い切れないけれど、見た感じただの剣にしか見えなかった。
では、あの世界で見た剣はどうだったかというと――どこか聖なる雰囲気を放っているように見えた。
「……この剣は、今は普通の剣です。当然と言えば当然のことかもしれません。ですが、これを如何に力を加えていくか。簡単なことです」
キガクレノミコトは刀身にそっと手を当てる。
いったい何をしでかすのかと思っていたが、キガクレノミコトが先に答えてくれた。
「これから、この剣に力を込めていきます」
「力を、込める……。それで、どうなるのですか? もしかして、次元を超えることが出来るとか……」
「そこまで甘いものではありませんね」
ばっさりと言われてしまった。
「次元を超えることが出来れば、さっさと私たちは力を剣に注入しているでしょうね。しかしながら、それなりに力を持つことになるでしょう。神の力……、その意味をあなたはいつか気付くことになります」
回りくどい話し方だったので、僕はキガクレノミコトに質問をしたかった。
しかしキガクレノミコトはその隙を与えない。
「この力は英雄の力と言っても過言ではないでしょう。なにせ、私たち神の力を注ぎ込むことになるでしょうから。ああ、もちろん剣だけではありませんよ? 同じような作り方で杖と弓も作っていますから、そちらにも同じように力を注ぎ込んでいきます」
「注ぎ込むことはいいんですけれど……」
「どうかいたしましたか」
キガクレノミコトは首を傾げる。
僕がずっと気になっていたことは、たった一つ。
「……力を注ぎ込むことによって、あなた方はどうなるんですか」
具体的には、今ここに居る『使徒』と呼ばれている存在はどうなってしまうのか。力を注ぎ込むことで消えてしまうのだろうか。
その質問に対して、キガクレノミコトははっきりと答えた。
「きっとあなたも想像出来ているのでは無いですか。力を注ぎ込むということは、私たちの生命力……正確に言えばこの世界に顕在していくために必要な力をすべて使い果たすということになります。ですから、剣・弓・杖に力を注ぎ込めば、それは即ち、私たちがこの世界に存在出来なくなる、ということになります」
「とはいっても、ストライガーは元々人間だったから、彼女は残るのかな?」
言ったのは欠番だった。
「そうなりますね。恐らく私は、神になっていた力を失うだけで、ただの人間になるだけかと思いますよ。いずれにせよ、この場に居ることは出来ないでしょうが」
「……いずれにせよ、消えてしまうということですよね?」
「ええ、そうですが?」
表情を変えること無く、キガクレノミコトは問いかけた。
僕の質問について、どうしてそのような質問をしているのか――と思っているようだった。
そしてそれは、消えて無くなってしまうことに疑問を抱いていないようにも思えた。
「……さっきから思ったのですが、もしかして私たちが消えることに、不安を思っているのですか。慈しみを思っているのですか。だとすれば、それは愚問ですよ。なぜなら私たちは少なくとも一万年以上この世界で過ごしています。人間とともに、生きてきました。長く居すぎたのですよ、この世界に。ですから、最後はこの世界に住む人間を助けるために、力を使いたいと思っているのです。どうか、その思いを……分かってはいただけないでしょうか」
「それは、皆さん決心している、ということですよね」
「当然」
短く答えた。
その目線は、じっと僕を捉えていた。表情は百戦錬磨の戦をくぐり抜けた兵士のようだった。既に覚悟を決めたような表情だった。
「受け入れて、いただけないでしょうか。この戦で、リーダーとして、勝ち抜くことを」
再度、キガクレノミコトは問いかける。
その目線がとても痛い。出来れば少し時間がほしいと思ったけれど、そうも行かない状況なのだろう。オリジナルフォーズが目覚める、それを携えて敵がやってくる、しかしいつやってくるかは定かでは無い。それを考えると、急いで対策を取らねばならない。
だったら、リーダーを決める段階で話がゴチャゴチャになっているのは、はっきり言って話にならない。
それに、この世界を救うために僕は元々の世界からやってきているんだ。
それを考えていたら、気がつけば僕はシルフェの剣をキガクレノミコトから受け取っていた。
それは、僕があの世界にやってきてエルフの隠れ里で手に入れた伝説の剣。
確かガラムドがエルフに託したものだったと思ったけれど、まさかこれがずっと昔から残されていたものだとは思いもしなかった。まあ、そもそも神様が残したものだから二千年以上昔に作られていてもおかしくはないか。
「シルフェの剣、ですか。いいですね、良い名前です。やはりあなたにお願いして良かった。あなたにお願いしていれば、きっといい名前が付けられるだろうと前々から考えていたのですよ。ですから、あなたにはこれを差し上げましょう」
鞘に収められた一振りの剣を、キガクレノミコトは丁寧に僕に差し出した。
その剣は、僕が初めてその剣を見た時と比べて、雰囲気が違っているように見えた。どんな雰囲気だったかというのは具体的にはっきりとは言い切れないけれど、見た感じただの剣にしか見えなかった。
では、あの世界で見た剣はどうだったかというと――どこか聖なる雰囲気を放っているように見えた。
「……この剣は、今は普通の剣です。当然と言えば当然のことかもしれません。ですが、これを如何に力を加えていくか。簡単なことです」
キガクレノミコトは刀身にそっと手を当てる。
いったい何をしでかすのかと思っていたが、キガクレノミコトが先に答えてくれた。
「これから、この剣に力を込めていきます」
「力を、込める……。それで、どうなるのですか? もしかして、次元を超えることが出来るとか……」
「そこまで甘いものではありませんね」
ばっさりと言われてしまった。
「次元を超えることが出来れば、さっさと私たちは力を剣に注入しているでしょうね。しかしながら、それなりに力を持つことになるでしょう。神の力……、その意味をあなたはいつか気付くことになります」
回りくどい話し方だったので、僕はキガクレノミコトに質問をしたかった。
しかしキガクレノミコトはその隙を与えない。
「この力は英雄の力と言っても過言ではないでしょう。なにせ、私たち神の力を注ぎ込むことになるでしょうから。ああ、もちろん剣だけではありませんよ? 同じような作り方で杖と弓も作っていますから、そちらにも同じように力を注ぎ込んでいきます」
「注ぎ込むことはいいんですけれど……」
「どうかいたしましたか」
キガクレノミコトは首を傾げる。
僕がずっと気になっていたことは、たった一つ。
「……力を注ぎ込むことによって、あなた方はどうなるんですか」
具体的には、今ここに居る『使徒』と呼ばれている存在はどうなってしまうのか。力を注ぎ込むことで消えてしまうのだろうか。
その質問に対して、キガクレノミコトははっきりと答えた。
「きっとあなたも想像出来ているのでは無いですか。力を注ぎ込むということは、私たちの生命力……正確に言えばこの世界に顕在していくために必要な力をすべて使い果たすということになります。ですから、剣・弓・杖に力を注ぎ込めば、それは即ち、私たちがこの世界に存在出来なくなる、ということになります」
「とはいっても、ストライガーは元々人間だったから、彼女は残るのかな?」
言ったのは欠番だった。
「そうなりますね。恐らく私は、神になっていた力を失うだけで、ただの人間になるだけかと思いますよ。いずれにせよ、この場に居ることは出来ないでしょうが」
「……いずれにせよ、消えてしまうということですよね?」
「ええ、そうですが?」
表情を変えること無く、キガクレノミコトは問いかけた。
僕の質問について、どうしてそのような質問をしているのか――と思っているようだった。
そしてそれは、消えて無くなってしまうことに疑問を抱いていないようにも思えた。
「……さっきから思ったのですが、もしかして私たちが消えることに、不安を思っているのですか。慈しみを思っているのですか。だとすれば、それは愚問ですよ。なぜなら私たちは少なくとも一万年以上この世界で過ごしています。人間とともに、生きてきました。長く居すぎたのですよ、この世界に。ですから、最後はこの世界に住む人間を助けるために、力を使いたいと思っているのです。どうか、その思いを……分かってはいただけないでしょうか」
「それは、皆さん決心している、ということですよね」
「当然」
短く答えた。
その目線は、じっと僕を捉えていた。表情は百戦錬磨の戦をくぐり抜けた兵士のようだった。既に覚悟を決めたような表情だった。
「受け入れて、いただけないでしょうか。この戦で、リーダーとして、勝ち抜くことを」
再度、キガクレノミコトは問いかける。
その目線がとても痛い。出来れば少し時間がほしいと思ったけれど、そうも行かない状況なのだろう。オリジナルフォーズが目覚める、それを携えて敵がやってくる、しかしいつやってくるかは定かでは無い。それを考えると、急いで対策を取らねばならない。
だったら、リーダーを決める段階で話がゴチャゴチャになっているのは、はっきり言って話にならない。
それに、この世界を救うために僕は元々の世界からやってきているんだ。
それを考えていたら、気がつけば僕はシルフェの剣をキガクレノミコトから受け取っていた。
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