異世界で、英雄譚をはじめましょう。
第百五十四話 終わりの世界、始まりの少年①
僕は目を覚ました。
目を開けるとそこに広がっていたのは、真っ白い天井だった。僕が昔居た世界ではこれをどう呼ぶか、古くのアニメーション作品でこう言っていたような気がする。そう思って僕はそのフレーズを口にした。
「知らない天井だ……」
文字通り、そこに広がっていたのは見た事のない天井だった。無論、というか恐らくはあれからそれほど時間も経過していないことだろう。推測していけば、ここはリュージュのアジト、そのどこかという可能性が容易に想像できる。
……まあ、何かそれにしては清潔過ぎる気がしないでも無いのだけれど。清潔さは確かあの場所には見られなかった。待遇が変わって別の牢獄に入れられている可能性も考えられるけれど、あのリュージュがそう簡単に変えるとは思えない。
となると、考えられる可能性があるとすれば……。
「目を覚ましたようですね」
声が聞こえた。そちらに顔を向けようとすると、何かで制限されているのかそちらに顔を向けることが出来ない。 
「あー、そうでしたね。顔をこちらに向けることが出来ないんでした。序でに言っておきますと、起き上がることも出来ません。きになるようならば、試しにやってみてはいかがですか?」
そう言われたので、その通りに起き上がろうとしてみる。
しかし彼女の言った通り起き上がるどころか身体を十分に動かすことも出来なかった。いわゆる雁字搦め、というやつだった。
「……やはり、リュージュの関係者か!」
「いいえ? あんなやつと一緒にしないでください。寧ろ私たちは逆の立場に居るのですから」
逆の立場。
ということは、味方? 信じてもいいのか?
そういうことになるのかは未だはっきりとしていない。拘束していることからも良く解る。この人間は未だ信用するに値しないという判断なのだろう。
「……あなたの名前は解りますか?」
素っ頓狂に変な質問をされた。何を言っているんだ、記憶喪失でもしていると思われたのだろうか。名前は覚えている。僕の名前は、
「フル。フル・ヤタクミだ」
異世界での名称もすっかり板についた気がする。結構な回数言っているからかもしれないが。
それを聞いた彼女はゆっくりと頷いた後、手元にあった紙に何かすらすらと書いていった。
続いて、彼女は手元にあった鏡を取り出す。
「この顔は誰の顔ですか?」
鏡に映っている顔は自分の顔以外あり得ない。
「……自分の顔だ」
質問の意図が理解できないまま、そして苛立ちを隠せずにぶっきらぼうに返した。
そして彼女はまたも手元の紙に何かを記載していく。何だ、こいつはいったい何のテストなんだ?
「解りました。それでは、少々お待ちください」
そう言って彼女は扉の向こうへ消えていった。
……何というか、こちらにも質問をさせてくれよ。
そう言いたかったけれど、それよりも先に彼女が居なくなってしまったので、その虚しい思いだけが残る形となった。
次にその扉が開いたのは五分後のことだった。五分という数字をきっちりと計ったわけではないのだけれど、何となく体内時計で測定したら五分くらいだった、というだけに過ぎない。
それはそれとして、入ってきた人物は彼女以外にもう一人居た。金色の髪に赤い目、臙脂色のローブに身を包んでいた。彼女は暫く会わなかったからか少し大人っぽくなったような気がする。
「メアリー……、久しぶりだね。大丈夫だったかい?」
僕はメアリーにそっと声をかけた。
しかしながら、メアリーは何も言わない。
「メアリー……?」
メアリーは一瞥する。
その冷たい視線を感じ、僕は僅かながら恐怖を覚えた。
もう一人居た彼女から紙を貰い、確認していくメアリー。
「自己認識は問題なし。先程の反応からして他人に関する記憶も問題ないようね。……さて、これからどうしたものか」
「ねえ、メアリー。いったいどうしてしまったのさ。何があったんだよ、あれから。リュージュは? ルーシーは? バルト・イルファはどうなった?」
「……それについては」
メアリーが漸く僕に反応してくれて、ちょっとだけ嬉しかった。
だけれど、その嬉しさは直後に発生した横揺れによって破壊されてしまった。
横揺れが終わって、その直後。
ドタドタ、という足音の後、ノックもなしに扉が開かれた。
入ってきたのは僕の知らない青年だった。年齢は僕より少し上くらい。だけれど、開けて直ぐにメアリーに敬礼したところを見るとその地位はメアリーより低いのだろう。
「失礼いたします! 南の方向からメタモルフォーズによる攻撃を受けました! 至急、船室内甲板へお戻りください!」
焦っているようにも聞こえるその声だったが、対してそれを聞いたメアリーはなおも冷静だった。
目を開けるとそこに広がっていたのは、真っ白い天井だった。僕が昔居た世界ではこれをどう呼ぶか、古くのアニメーション作品でこう言っていたような気がする。そう思って僕はそのフレーズを口にした。
「知らない天井だ……」
文字通り、そこに広がっていたのは見た事のない天井だった。無論、というか恐らくはあれからそれほど時間も経過していないことだろう。推測していけば、ここはリュージュのアジト、そのどこかという可能性が容易に想像できる。
……まあ、何かそれにしては清潔過ぎる気がしないでも無いのだけれど。清潔さは確かあの場所には見られなかった。待遇が変わって別の牢獄に入れられている可能性も考えられるけれど、あのリュージュがそう簡単に変えるとは思えない。
となると、考えられる可能性があるとすれば……。
「目を覚ましたようですね」
声が聞こえた。そちらに顔を向けようとすると、何かで制限されているのかそちらに顔を向けることが出来ない。 
「あー、そうでしたね。顔をこちらに向けることが出来ないんでした。序でに言っておきますと、起き上がることも出来ません。きになるようならば、試しにやってみてはいかがですか?」
そう言われたので、その通りに起き上がろうとしてみる。
しかし彼女の言った通り起き上がるどころか身体を十分に動かすことも出来なかった。いわゆる雁字搦め、というやつだった。
「……やはり、リュージュの関係者か!」
「いいえ? あんなやつと一緒にしないでください。寧ろ私たちは逆の立場に居るのですから」
逆の立場。
ということは、味方? 信じてもいいのか?
そういうことになるのかは未だはっきりとしていない。拘束していることからも良く解る。この人間は未だ信用するに値しないという判断なのだろう。
「……あなたの名前は解りますか?」
素っ頓狂に変な質問をされた。何を言っているんだ、記憶喪失でもしていると思われたのだろうか。名前は覚えている。僕の名前は、
「フル。フル・ヤタクミだ」
異世界での名称もすっかり板についた気がする。結構な回数言っているからかもしれないが。
それを聞いた彼女はゆっくりと頷いた後、手元にあった紙に何かすらすらと書いていった。
続いて、彼女は手元にあった鏡を取り出す。
「この顔は誰の顔ですか?」
鏡に映っている顔は自分の顔以外あり得ない。
「……自分の顔だ」
質問の意図が理解できないまま、そして苛立ちを隠せずにぶっきらぼうに返した。
そして彼女はまたも手元の紙に何かを記載していく。何だ、こいつはいったい何のテストなんだ?
「解りました。それでは、少々お待ちください」
そう言って彼女は扉の向こうへ消えていった。
……何というか、こちらにも質問をさせてくれよ。
そう言いたかったけれど、それよりも先に彼女が居なくなってしまったので、その虚しい思いだけが残る形となった。
次にその扉が開いたのは五分後のことだった。五分という数字をきっちりと計ったわけではないのだけれど、何となく体内時計で測定したら五分くらいだった、というだけに過ぎない。
それはそれとして、入ってきた人物は彼女以外にもう一人居た。金色の髪に赤い目、臙脂色のローブに身を包んでいた。彼女は暫く会わなかったからか少し大人っぽくなったような気がする。
「メアリー……、久しぶりだね。大丈夫だったかい?」
僕はメアリーにそっと声をかけた。
しかしながら、メアリーは何も言わない。
「メアリー……?」
メアリーは一瞥する。
その冷たい視線を感じ、僕は僅かながら恐怖を覚えた。
もう一人居た彼女から紙を貰い、確認していくメアリー。
「自己認識は問題なし。先程の反応からして他人に関する記憶も問題ないようね。……さて、これからどうしたものか」
「ねえ、メアリー。いったいどうしてしまったのさ。何があったんだよ、あれから。リュージュは? ルーシーは? バルト・イルファはどうなった?」
「……それについては」
メアリーが漸く僕に反応してくれて、ちょっとだけ嬉しかった。
だけれど、その嬉しさは直後に発生した横揺れによって破壊されてしまった。
横揺れが終わって、その直後。
ドタドタ、という足音の後、ノックもなしに扉が開かれた。
入ってきたのは僕の知らない青年だった。年齢は僕より少し上くらい。だけれど、開けて直ぐにメアリーに敬礼したところを見るとその地位はメアリーより低いのだろう。
「失礼いたします! 南の方向からメタモルフォーズによる攻撃を受けました! 至急、船室内甲板へお戻りください!」
焦っているようにも聞こえるその声だったが、対してそれを聞いたメアリーはなおも冷静だった。
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