異世界で、英雄譚をはじめましょう。
第百四十七話 目覚めへのトリガー⑰
「知恵の木の実というのは、なかなかに面倒なものであってね。確かに使い勝手はいいかもしれない。それを摂取することによって代償を大幅に削減することが出来る。非常に強力な魔術や錬金術も行使することが出来る。デメリットといえば、嵩張る点かな。知恵の木の実は果物でそれなりに大きいから面倒臭いのだよね、持ち運びが」
ザン!! と一振りする。
それだけで空気が震え、その一振りだけでその武器の効力が十分に理解できるほどだった。ビリビリ、と空気が震える音がして微かにメアリーたちにも伝わってくる。
見せびらかすように槍を肩に乗せて、少女は溜息を吐く。
「……結局のところ、世界はどうなっても私にとってはどうだっていい。予言の勇者のプロセスとか、リュージュ様のプログラムとか、そんなことは私にとっては……。けれど、私の今の雇い主はリュージュ様ということ。それだけで私は戦っている、ということ」
「善悪なんて関係ない、ということ……?」
メアリーの問いに、当然だと言わんばかりに頷き、笑みを浮かべると、
「……逆に言わせてもらおう。お前は何を考えていて、何を正義で、何を悪だと考えている? まさか、自分こそが正義で、自分に立ち向かってくる敵はすべて悪だと考えているのではないだろうね? だとすればそれは非常に滑稽だし、なにも考えなくていい、ロボットだけで行動すればいいだろうよ。簡単に言えば、プログラムで善悪を判断しているのと同じ。それも簡単に組むことができる、ルーティンワークでね」
「そんなこと……!」
メアリーは直ぐに答えることが出来なかった。
それは彼女の中に明確な正義の答えが無かったからではない。
どう答えれば、少女の考える正義に合致するかということだった。
「はい、時間切れ」
悪戯めいた声が聞こえて、メアリーは少女のほうを見つめる。
そして、少女は槍を構える。
メアリーとルーシー、そしてレイナは攻撃がいつ来てもいいように、同じように武器を構えた。
「……答えは簡単だよ、予言の勇者。いいや、この場合はただの取り巻きとでも言うべきかな。何れにせよ、このアンサーは誰だって考えられることは出来るけれど、正しいアンサーを求めるには難しいことだと思うけれど。知識も十分に必要になるだろうし、それ以上に、世界を、空気を読む力? そういうものも必要になったりするからね」
「何が言いたいのか、私には全然理解できないけれどね」
メアリーは強気の表情でそう言った。
しかし現状では――それはただの虚仮脅しだった。はっきり言って、今の彼女たちでは実力が未知数である少女を倒すことが出来るかといわれると微妙なところだった。
怖かった。
それが今の彼女にとっての、正直な感想だろう。実際のところ、彼女はどうすればいいのか解らなかった。解らなかったからこそ、少女の戦法をじっくりと見る必要があった。見るだけではない、分析する必要があったわけだ。
「はてさて」
溜息を吐いて、少女は言った。
「古くは戦いをする前に、お互いの名前を話すことがあったらしい。過去のことはつまらないことばかりだと思っていたが、そういう習慣も面白いものだとは思わないかね?」
槍をメアリーたちに向けて、少女はニヒルな笑みを浮かべる。
「……私の名前はフェトー。魔術師……とでも言えばいいかな。この槍に魔力を供給することで魔術を放つことが出来る。なぜ、これを今話すか……解るかな?」
「私たちには倒すことができない……そう思っているのね?」
メアリーの問いに、フェトーは頷く。
メアリーは我慢できなかった。
そして、目の前にいる敵――フェトーがとても強い相手であることを充分に理解出来ているにもかかわらず、彼女は倒そうと思った。
そして、彼女は頷いて――杖を握り返した。
「私の名前はメアリー・ホープキン。私は錬金術師、とでも言えばいいかな。まあ、学生だからその見習いという冠がつくのかもしれないけれど。あとはルーシーとレイナ、弓と短剣の使い手。3VS1ね……。あなたにとっては劣勢に見えるけれど、倒すことが出来るかしら?」
「せいぜいほざいていなさい、学生気分の若造が」
そうして、一つの衝突が起こった。
ザン!! と一振りする。
それだけで空気が震え、その一振りだけでその武器の効力が十分に理解できるほどだった。ビリビリ、と空気が震える音がして微かにメアリーたちにも伝わってくる。
見せびらかすように槍を肩に乗せて、少女は溜息を吐く。
「……結局のところ、世界はどうなっても私にとってはどうだっていい。予言の勇者のプロセスとか、リュージュ様のプログラムとか、そんなことは私にとっては……。けれど、私の今の雇い主はリュージュ様ということ。それだけで私は戦っている、ということ」
「善悪なんて関係ない、ということ……?」
メアリーの問いに、当然だと言わんばかりに頷き、笑みを浮かべると、
「……逆に言わせてもらおう。お前は何を考えていて、何を正義で、何を悪だと考えている? まさか、自分こそが正義で、自分に立ち向かってくる敵はすべて悪だと考えているのではないだろうね? だとすればそれは非常に滑稽だし、なにも考えなくていい、ロボットだけで行動すればいいだろうよ。簡単に言えば、プログラムで善悪を判断しているのと同じ。それも簡単に組むことができる、ルーティンワークでね」
「そんなこと……!」
メアリーは直ぐに答えることが出来なかった。
それは彼女の中に明確な正義の答えが無かったからではない。
どう答えれば、少女の考える正義に合致するかということだった。
「はい、時間切れ」
悪戯めいた声が聞こえて、メアリーは少女のほうを見つめる。
そして、少女は槍を構える。
メアリーとルーシー、そしてレイナは攻撃がいつ来てもいいように、同じように武器を構えた。
「……答えは簡単だよ、予言の勇者。いいや、この場合はただの取り巻きとでも言うべきかな。何れにせよ、このアンサーは誰だって考えられることは出来るけれど、正しいアンサーを求めるには難しいことだと思うけれど。知識も十分に必要になるだろうし、それ以上に、世界を、空気を読む力? そういうものも必要になったりするからね」
「何が言いたいのか、私には全然理解できないけれどね」
メアリーは強気の表情でそう言った。
しかし現状では――それはただの虚仮脅しだった。はっきり言って、今の彼女たちでは実力が未知数である少女を倒すことが出来るかといわれると微妙なところだった。
怖かった。
それが今の彼女にとっての、正直な感想だろう。実際のところ、彼女はどうすればいいのか解らなかった。解らなかったからこそ、少女の戦法をじっくりと見る必要があった。見るだけではない、分析する必要があったわけだ。
「はてさて」
溜息を吐いて、少女は言った。
「古くは戦いをする前に、お互いの名前を話すことがあったらしい。過去のことはつまらないことばかりだと思っていたが、そういう習慣も面白いものだとは思わないかね?」
槍をメアリーたちに向けて、少女はニヒルな笑みを浮かべる。
「……私の名前はフェトー。魔術師……とでも言えばいいかな。この槍に魔力を供給することで魔術を放つことが出来る。なぜ、これを今話すか……解るかな?」
「私たちには倒すことができない……そう思っているのね?」
メアリーの問いに、フェトーは頷く。
メアリーは我慢できなかった。
そして、目の前にいる敵――フェトーがとても強い相手であることを充分に理解出来ているにもかかわらず、彼女は倒そうと思った。
そして、彼女は頷いて――杖を握り返した。
「私の名前はメアリー・ホープキン。私は錬金術師、とでも言えばいいかな。まあ、学生だからその見習いという冠がつくのかもしれないけれど。あとはルーシーとレイナ、弓と短剣の使い手。3VS1ね……。あなたにとっては劣勢に見えるけれど、倒すことが出来るかしら?」
「せいぜいほざいていなさい、学生気分の若造が」
そうして、一つの衝突が起こった。
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