住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

バレンタインの夜 切なさとまたくる喜び、そして……

「あぁぁぁぅぅぅぅぁぁぁぁぁ…………」

仕事が終わって、すっかり暗くなってぇ……なんかもぉぉぉ、急に気力がなくってますぅぅぅぅ。

「くっ胡桃? どしたの?」
「あぇぇ? 」

自分の部屋のベッドで、べたぁぁぁっと倒れる私に、部屋に来てる恵さんが話してきました。どうやら遊びに来たみたいです、扉は開けてましたから勝手に入って良いよと言ったら入ってきて。

私を見た瞬間、驚いてます。

「バレンタインデーが、終わってしまいますぅぅ。やる気なくなりましたぁ」

うぅぅぅ、毎年この時だけは嫌なんですよぉ。大好きな日が去ってしまうこの瞬間がぁ。

「え、それだけ?」
「なんですか!! それだけって!」

他人事みたいに言わないでください! バレンタインデーはぁ、私にとって恋人みたいな物なんですよ!

恵さんは何も分かってないようなので、しゅばっ! とベットから立ち上がり、ぺたんと丸いクッションに座ってる恵さんに近寄ります、今から説明しないといけません!

「わ、ちょっ。ちか……」
「バレンタインデーが終わったら! また来年までバレンタインデーはお預けなんですよ!」
「え、あ……それ、当たり前じゃ……」
「なぁにをいってるんですかぁぁっ!! 今年のバレンタインデーは今年だけでしょぉぉぉっ!!!!」

毎年バレンタインデーには、その日だけの甘い物が生まれるんです。
バレンタインデーが過ぎたら、それはもう失われるんです! 恵さんは、それが分かってないみたいですね。

って、あれ? なぁんか、すっごい苦笑いしてますね。
何ででしょ。

「胡桃ぃ、今日ちょっと面倒くさいよ?」
「めっ!?」

面倒……くさい?

「なっ。なっなんでですか! 主にどの辺が!」
「バレンタインデーへのこだわりのとこ、全部」
「ぜんぶ!?」

えぇぇぇぇっ!! そっそんな全部って……なっなんでです? それ、本気で言ってます? と言うか、こだわってるつもりなんてありませんよ?

「胡桃も意外と可笑しな所あったんだね。驚きぃ」
「可笑しなって……可笑しくないですよ!」
「いや、可笑しいし」
「うっ……」

まっ真顔で言われちゃいましたぁ……。私、今日、そんなに可笑しかったです?

「まっ、いつも真面目な所ばっか見てたからなんか安心した。胡桃もそう言うとこあるんだ」
「なっなんか、酷いこと言われてる気がします……」

私、普通なのに……。

「あははは、すっごい落ち込んでるし」
「うぅぅぅ……」
「ほら。そんなに落ち込まないで、甘いのあげるから。まっ……これ、胡桃の部屋にあったのだけど」

そう言って、恵さんはテーブルに置いてあるあめ玉を私の口元に持ってきます。

「食べます」

だから、ぱくりっとそのまま食べちゃいました。

「うぇっ!? そっそのまま食べんの!?」
「……あ。ごへんなひゃい、つい」

ちゃんと、手で受け取るべきでしたねぇ。えへへへへぇ。

「あ。でも、やっと笑ったし。良かった」
「えへぇ。あまひものたべまひたかりゃぁ」

コロコロと口の中で転がしながら喋ると、恵さんが「胡桃ってば単純」と言って微笑みました。
単純じゃないですよぉ、私は甘い物を食べたら嬉しくて笑っちゃうだけですぅ。

「恵ひゃんも、たべましゅ?」
「あ。あたしは甘い物はパス、苦手なんだ」
「えぇぇぇ……」

それは人生の9割損してますねぇ……美味しいのに。

「ねぇ、胡桃」
「はんれすか?」
「話し掛けてなんだけど、さっきから気になってるから言うね。食べながら喋んないで、なんか……エロいよ」

……。
えっエロ、エロい……ですか、それは、うん。
気付きませんでした、きっ気を付けましょう 。

ピンポォォン…………

「っ!」
「わっ、なに?」

チャイムが鳴りました、お客様ですね。
誰でしょ? なんて思ってたら、ガチャリと扉を開けて入ってきました。

あれ? 恵さんに入ってくる時、鍵閉める様にいったんですけど……忘れたんですかね?

そう思ってると、お客様が顔を見せました。

「こんばんわ。遊びに来たわ」

お客様は、手に紙袋を持った七瀬さんでした。
おぉぉ、なんだか賑やかになりそうですねぇ。

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