住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

聖戦当日 山田のバレンタインデー

この日になると、男子は下駄箱でとあるシュチエーションを夢見る。
もしかしたら、そこにアレが入っているんじゃないかと……。

「ぐあぁぁぁぁぁっ!! 入ってないぃぃぃっ!!」
「くっ……まだだ、まだ慌てる様な時間じゃない! まだ時間はある!」
「そっそんな、バカな……」

そして、そんな夢を巨大鉄球で押し潰し破壊するかの様に男子の心を粉砕する。
そして、まだ僅かな希望を残す。

「いつも通りの光景、だな……」

そんな光景にクスリと笑い登校するのは……山田、つまり俺だ。
おはよう、暫くぶりだな。

あれから、まだ例のモヤモヤは消え去っていないが……なんとか日々を過ごしてる。

そんな気持ちでこの日を向かえた訳だが……正直、うん……複雑な気分だ。
チョコ入ってるかなぁ? って事と、今頃女の子同士でチョコを渡し合ってるんだろうなぁ……なんて事が頭の中で思い浮かべてごっちゃになってる。

「……行くか」

まぁ、うん……もう後半のそれは、深く考えない様にした。
なので俺は、自分の下履きが入ってる所に向かい……蓋を開ける。

「……え」

その時、衝撃を受けた。
なんと、小さな箱が入っていた、しかもその箱は……綺麗なリボンで結ばれていた!
なっ……え、うそ、こっこれは……っ!!

「チョコが……入ってる、だと!!」

なっ……なんで? え? なんで? え、ちょっ……しかも手紙付きだ。
とっとにかく、ここで読んだら目立つ! このチョコは……直ぐ様カバンに入れる!

どっ……どういう、事だ? どっドッキリか? 今もこの下駄箱の影か何処かで誰かが"ドッキリ大成功"ってプラカードを持って潜んでいるのか?

「あ、ありえない。いっ今まで母さんにすら貰った事無かったのに……だっだが、ほんとう……だったら?」

あ、あはは……。
こっ混乱してきた、混乱してきた……が、取り敢えず教室に行こう、考えるのはそれからだ。

ゆっくり歩きながら軽く見渡して見ると……。

「おかんにチョコ貰ったぁ」
「あ、俺もだわ」
「俺、ばぁちゃんに貰ったぞ。趣味がお菓子作りなんだわ」
「「へぇ……」」

どこもかしこも話題はチョコレートだな。
それと、全員ではないが……男子が落ち込んでるな……まぁ、大体の理由は分かる。

「くっ……下駄箱にも、机の下にもなかった……」
「まっまだだ、まだ……チャンスはある!」

うっうん……絶望するもの、僅かなチャンスに希望を見出だす者、バレンタインデーは色んな男子が見れる。
これ、もし俺がチョコ貰ったのがバレたら……恐ろしい事になりそうだ。

……おっと、教室に着いたな。
扉が開いてたから、そのまま入ると……そこは殆どの男子が絶望の眼差しで机に突っ伏してる姿があった。

なんだこの混沌とした空間は……!!

闇、まさに闇、そんな雰囲気がひしひしと感じる……えぇ、俺、こんな教室に入りたくねぇ。

だっだが、入らないとな……うん。

「うっ……くっ……下駄箱にも、机の下にも入ってなかった……」
「まっ、まだ……あ、あき、あきらめ……諦め……ないぃぃ」

嗚咽、声を圧し殺して泣く……しまいには無言で虚空を見て黄昏てる奴もいた。

「……」

やばい、これ……俺がチョコ貰った事をバレたら……大変な目にあうぞ。
よし……これは、秘密にしよう。

あのチョコは……うん、後でこっそり見よう。
放課後にこっそりとな……。

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