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わいず

心配性だとかそんな次元の話じゃありません

「うぁぁ、戻ってきたぁ。今すぐにでも部屋に籠りてぇ」

テーブルに、ぐでぇっとだらしなく顔をつける止さん、それを座って苦笑いで座って見つめる私。
今はお店の休憩室にいます。

ここにいれば、長門さんと七瀬さんに会えるでしょう。

「……くるちゃん」
「ダメです」
「まだなんも言ってないぜ」

言わなくても言いたい事は分かります。
部屋に行きたいんですね? ダメです、それはさせませんよ。

もし、ここで止さんを部屋に行かしたら……止さんは部屋に籠るでしょう。
今までの口振りからして絶対にそうなります。

で、もしそうなったら……私が長門さんに色々言われます。
もうそりゃぁ凄い剣幕で言われて、盛大にやる気を無くしてお店を閉める事でしょう。

あ、これは私の予想です。
なので、そうなるとは限れません。

ただの予想ですけど……そうなりそうで怖いんですよ。
だから、止さんの事はずっと見ていましょう。

「うぅぅ、そんな見んなよぉ……ちょっとぐらい目を離しても良いじゃんか」
「出来ません」

膨れっ面で私を睨んできます。
……全く怖くありません、むしろハムスターみたいで可愛いです。

「くっ……仕方無い。諦めてゲームしよ」

そう言って、小さなポーチを漁る止さん。
ごそごそっと手を突っ込んで出てきたのは……黒色の二つ折り式の某ゲーム機です。
それの最新型ですね……何度もテレビのCMでみました。

それを起動して椅子にもたれ掛かってやり始めました。
……結構、ゲームと目の距離が近いですね。
それだと目を悪くしちゃいますよ?

「さぁて……今日は何しよっかな」

止さんは椅子に足をのっけて、三角座りします。
うわぁ……姿勢悪ぅ、注意したい所ですが……会って間もないですし、スルーしましょうか。

「決めた、これにしよ」

……っ……ドタッ……ドタッドタドタッガチャンっ!

と、その時だった。
騒がしい足音が聞こえたかと思うと、勢い良く扉が開かれた。

そこにいたのは、息と服を乱した長門さんだった。

「なっ、なっちゃん!」

ゲームをテーブルにがたんっ! と置いて驚く止さん。
そんな彼女に真剣な顔をして、ずんずん近づいていきます。

くっ空気がピリッとしてきました。
きっきっと、長門さんは怒ってる。

だから今から……説教が始まるんだ。

だんっ!
長門さんは、両手で強くテーブルを叩きます。
びくっ、と驚く止さん……真剣な表情かおの長門さんはゆっくりと口を開いた後、言い放ちました。

「止ぅぅぅぅっ!!」
「ひゃっ!?」

物凄く大きな声で、今まで長門さんの口から聞いた事のない優しい声音を出しながら止さんに抱き付く。
驚いた止さんは、がたんっ! と椅子を揺らして後ろに倒れそうになりますけど、長門さんによってそれを抑えられます。

「怪我してないか? お腹すいてないか? 病気になってないか? 貞操は無事か?」
「うわっ、うわわわっ、なっなっちゃん! だっ抱き付くなぁぁっ!」

ぎゅぅぅっと抱き付いた後、止さんを立たせて肩を持って、がくんがくん揺らします。

止さんは「やっやめろぉぉっ」っと言って嫌がります。

えっえと……こっこれは……なんと言いますか、その……。

「あぁぁっ、よがっだぁぁっ。本当によがっだぁぁっ」
「うわぁっ、なっ泣いてる! なっ泣くなよ!」
「だっだってぇぇっ」

……なんですか、これ。
怒ると思いきや、大泣きしてます。
想像と違った結果になって拍子抜けです……。

口をぽかーんと開けて2人を見る私は思いました。
これを目の前にして、私は何をすべきなんでしょう?

泣き叫ぶ長門さん、困り果てる止さん。
私は空気……なんにも出来ません、なので物凄く気まずいです。

止さん、長門さん……あまり私を置いていかないで下さい、気まず過ぎて色々と辛いです。

そう思う私を置いてわちゃわちゃと騒ぐ長門さんと止さん。
……このやり取りは暫く続きそうですね。

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