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わいず

その者、気持ちに正直 3

「うんまいなぁ……やっぱりハンバーガーは良いよな」
「そっ、そうですね」

わいわいがやがや……。
先程の笑顔注文騒動は何処ヘヤラ、楽しそうな会話が周りから聞こえて来ます。

私と小片さんは、空いている席に座って、注文した物を食べています。
因みに席は2階窓側です、そこに向い合わせで座ってます。

あ、言ってませんでしたが、実はこのモニャ、2階があったんです。
なんとなくですが、2階の席に座りたいとなって、今に至ります。

「くるひゃん、ほれ……おいひぃか?」

ぱくりっ……。
とても肉肉しいハンバーガーを小さなお口でかぶり付いた後、喋ります。
あぁ……口元にソースがついちゃってます。

「美味しいですよ、と言うか……口の中に物を入れて喋るのはダメですよ」
「ふぁい」

私に言われて、もごもごと口を動かして、こくんっと飲み込みます。

一々行動が可愛らしいですね……貴女は小動物か何かですか?

なんて思ってると、なんか目をキラキラさせて見てきました。
……あ、今から小片さんが言う事察する事が出来ました。

「おれさ……モニャに来たら、絶対に肉三昧バーガーかドデカ肉三昧バーガーのセットしか頼まねぇんだよなぁ」
「そっそうですか」

なんて甘えた声なんでしょう。
そんな声を聞いたら、心にぐっと来ちゃうじゃないですか。
と言うか……お肉好きですね。
もしかして、野菜嫌いですか?

「だからさっ、一口! 一口だけ頂戴!」

あ、そうでも無いかもです。
私の頼んだハンバーガーって、殆ど野菜しか入ってませんからね。
上からレタス、トマト、ベーコン、レタス、トマトですもの。

あ、私はベジタリタンって訳じゃないんですよ? ただ、このバーガーが好きなだけです。

だって、トマトって美味しいじゃないですか。
あの甘味と独特な酸味……あれを味わったら病み付きになっちゃいます。

「べっ別に良いですよ? だから……そんな目をしなくても大丈夫です」

にっこりと微笑んで言ってあげると、小片さんは嬉しそうに笑いました。

そして私の手をがしっ! と掴んできます。

「ほっほんとか!」
「本当です」
「やりぃぃっ」

おっおぉ……そんなに喜ぶ事ですか?
まぁ、小片さんにとってはとても嬉しいんでしょうね。

「あ、でもかじりかけですけど……大丈夫ですか?」
「問題なっしんぐだぜっ、と言う訳で、早くプリーズっ」

私の手を話して、手を受けます。
小声で「はよはよ」言ってます。
そんな小片さんに苦笑しながら「どうぞ」と渡します。

「おぉ、これがベジタボゥバーガー……」

ごくりっ。
唾を飲む小片さんは、ベジタボゥバーガーを受け取り、まじまじと見つめます。

えっえと、そんなに凝視する物でも無いと思いますよ?
それ、何の変鉄も無い、お野菜多目のハンバーガーですよ?

「なんか野菜ばっかだな」
「まぁ……ベジタボゥバーガーですから」

肉三昧バーガーは、上からハンバーグ 、ピクルス、ベーコン、チーズ、ハンバーグ、こんな感じで肉ばかりですもの。

このバーガー、今日は肉をお腹一杯食べたいっ! と思う人以外が頼むと、ちょっぴり後悔するんですよね……主に肉ばかりで脂っぽいと言う理由で。

「ダメだぜくるちゃん、野菜も良いけど、肉食わないと力が出ないぜ?」
「はっはぁ……ご心配ありがとうございます」

にこっ。
と、笑ってベジタボゥバーガーをトレイに置いて肉三昧バーガーを手に取り、私のトレイの方に置いてくる小片さん、小声で「1口どぞ」って言ってきました。

なので、軽く頭を下げて「あっありがとうございます」と応えました。

「じゃ、さっそく食べよっと。くるちゃんも遠慮せずに食うんだぜ?」
「はっはい……」

遠慮せずにですか……。
まぁ、あれです、常識の範囲内での1口で頂きますよ。

と、その前に……今更ですが聞いておきますか。

「あの、小片さん?」
「んにゃ?」

あ、大口でかぶり付いちゃってる……まっまぁいいんですけどね。

私に呼ばれた小片さんは、もごもごと口を動かして、こくんっと中の物を飲み込みます。

「なんだぜ? あ、おれの事は止か、とまちゃんで宜しくっ!」
「あ、はい……とっ止さん」

と、私が言った時です。

「さん付け禁止! もう俺とくるちゃんは友達じゃん。だから、さんは無し!」
「えっえぇ……」

頬をぷくっと膨らませて言ってきました。
ハムスターみたいで可愛いです、って……そうじゃなくて、さん付け禁止ですか……こっ困りましたね。

「あ、あの……さん付けは私の癖みたいな物なんです」

だから勘弁して欲しい……と続けようとしたら。

「敬語も禁止!」
「ひゃいっ!」

ビシッ! と言ってきました。
え、もしかして敬語もダメですか?

「くるちゃん、赤髪でハスキーボイスなんだからさ、もっとワイルドに喋って」

え、なにその、自分の中の理想を押し付けた物言いは。
ダメですよ、自分の理想を相手に押し付けちゃ、嫌われますよ?

「えっえと……」

と、それは置いといて……こっ困りましたね。
敬語禁止ですか……恵さんにも言われて困ったんですよね。

うぅぅ……自分では敬語って感じじゃ亡いんですけど、やっぱり堅苦しいんですかね?
でっでも、今すぐにそれ以外の喋り方をしろって言うのは……むっ難しいです。

と、困りに困ってあたふたした時です。
止さんが伏せ目がちに言ってきました。

「もっもしかして……困ってるか? 困ってるなら、さん付けも敬語もそのままで良いぜ?」

……あ、私の気持ち察してくれたんですか? あっ有り難いです。

「え? あぁ……はい、そうしてくれると嬉しいです」

と言った瞬間、伏せ目がちだった表情をころっと替えて笑顔になります。

「じゃ、さん付けも敬語もして良いぜ」

おっおぅ……何と気持ちの切り替えの速さ、ちょっと驚いちゃいました。

「んで、何か聞きたい事あんの?」
「あ、そうでした!」

忘れる所でした、言ってくれて良かったです。
私は一呼吸置いたあと、聞きたい事を聞いてみます。

「そのっ、くるちゃんて言うのは、私の事……ですか?」
「そうだぜ? なに? 恥ずかしかった?」
「いっいえ……そうじゃないんです。気にして無いです」

頭に ? を浮かべる小が……じゃなくて、止さん。
初対面に対してあだ名で呼ぶとは……良く言えばフレンドリー? な方ですね。

「そか、良かったぁ……ダメかと思ったじゃんか」
「いっいえ……ダメじゃないですよ」

安心した様にため息をはいた止さん。
その後、ベジタボゥバーガーをじぃっと見て、また私を見てきました。

「あと1口だけ、良い?」
「え」

まさかの2口目の要求。
もしかして、気に入りました?

「いっ良いですよ?」
「くるちゃん、太っ腹ぁ! んじゃ、おれのも2口食べてね」
「あ、はい」

……なっなんでしょう。
止さんの上目使いを見てたら、断れませんでした。
いや、別に断るつもりなんて無かったんですが……なっなんででしょうね。

止さんの事を可愛い可愛いと思ってた私ですが……こっここまで可愛いと思う物ですか?

まっまさか……止さんには魔性の可愛いさがあるとでも言うんですか!
……なんてアホっぽい事を思いながら食事を楽しみました。

食べ終わったら、長門さんのお店に連れて帰りましょうか……。

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