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わいず

黒髪ツインテールさんとの一時 2

「あ、やっ……そこっ、そこはダメです!」
「きしししっ、 おれの攻めは終わらねぇぜ」

黒髪ツインテールさんは、巧みな手捌きで私を攻めてきます。
私はそれを成す術無く受けています。
たまに攻めたりするんですけど、それはその娘には通じません。

「 いやっ、あぁぁっ、止めて、いやぁぁぁっ」

私の悲鳴も届かないまま、その娘は、どんどん私を攻めて攻めて攻めまくります。
あぁ、あと少しで……あと少しで……あぁ、ダメになっちゃいますぅ。

息を荒げ、手に汗が出ながらも、私は必死に抵抗します。

「てっ手加減っ、手加減して……あ、いや!」
「きししし、これで止めだ!」

バキッドンッ! シュババババッ……。
『KOッッッ!!』

と、思った矢先、その娘は大技を使ってきました。
そのせいで私の使ってるキャラが倒れてしまいました。

盛大に殴られ蹴られ、アッパーで止め。
そしてHPが尽きて格好良いKOの文字が出て来て、直ぐにyoulooseユールーズの文字が出てきました。

はぁ……また負けました、これで5回連続ですね、強すぎますよ、あの娘。
え? さっきから何をやってたか……ですか?

格闘ゲームですよ? キャラを選んで戦うあれです。
私とあの娘はそれをしてたんです。

いやぁ……全く敵いませんでした。
やっぱり適当にレバーをガチャガチャしたりボタンをポチポチ押してる様じゃダメなんでしょうね。

はぁ……。
とため息を吐いた時です。
あの娘がこっちにやって来ました。
先程のゲームは対面式でしたからね、さっきまでこの娘は私の向こう側にいたんです。

「お姉さーん、どうだった? 楽しかったか?」
「楽しかったですよ? コテンパンにヤられちゃいましたけど……」

言った通り楽しかったです。
負けはしましたけど、あんな風にコテンパンにヤられれば逆に楽しくなってきますよ。

「きししし……それはごめんな、おれはゲームには何時でも本気出すタイプだからな」
「そっそうですか」

その娘は、えっへんと胸を張ります……。
ここ、ドヤ顔する必要ありますかね? なんて思いましたが口には出しません。

と、ここで私は思いました。
多少強引ですが、もう名前を聞くべきなのでは? と。

ずっと、黒髪ツインテールさんって思うのも悪いきがしますからね……よしっ、聞きましょう。

「お姉さん! 次はなにする? まだ格ゲーするか?」
「あ、いえ……その前に聞きたい事があります」

私がそう言うと、この娘は首を傾げて「聞きたい事、それって何だ?」と言ってきます。

「名前、教えてくれませんか? 私は桜塚 胡桃っていいます」
「ん、お姉さん胡桃って言うのか」

うぉっ、いきなり名前呼びですか……まっまぁ、別に良いですけどね。

「そういや名乗って無かったな。こんなの、なっちゃんにバレたら怒られるな、マナーがなってないって……」

ん? なんか、もごもごいってますね……何を言ってるんでしょう。

「えと、お名前教えて貰っても……良いですか?」

と、気になりましたが、名前の方が先だと思ってそう言いました。
そしたら、その娘は、はっ! となって「わりぃわりぃ、考え事してた」と言って、姿勢を正します。

「じゃ、名乗らせて貰うぜっ、おれは小が……」

と、その時です。
少し遠くで、ガンっ!ガンっ! って音が鳴りました。

騒がしかったゲームセンターが、少しだけ静かになり、電子音だけが耳に聞こえてしました。

「おぅ、ボケゴラァァッ」

と、そんな時聞こえて来たのは怒号……。
その声は少し遠くで聞こえます。

「なっなんだ? おっオバケか?」
「いっいえ、絶対に違います……」

恐がる黒髪ツインテールさんは、私にピッタリと寄り添ってします。
なので、優しく頭を撫でて上げました。

そしたら、気持ち良さそうに目を細めました。
あぅ……かっ可愛い。

なんて思ってると、黒髪のリーデントで、いかにも不良ですって感じのチャラチャラした服を着て、ガタイが良くて、背が高い男性が私とこの娘の方へ、首や腰に巻いたシルバーアクセサリーをカチャカチャ鳴らしながらズンズン歩いて来ました。

……時代錯誤の不良か何かですかね?

あっ、その人、なんか怒ってる様に見えます……。

はっ! まさか喧嘩ですか? ゲームセンターで喧嘩吹っ掛ける気ですか? ダメですよ暴力は。

なんて考えて身構えていると……その人は私達を横切って、さらに奥に行きました。

そこには、ヒョロリとした痩せた男性がいました。
その男性は、ガタイの良い男性を見てカタカタ震えています。

「おぅこらっボケ」
「はっはひ、なっなんで……はわわっ!」

怯える男性に凄み、胸ぐらを掴み、ヒョロリとした男性を強制的に立たせる。

あ、これ、穏やかじゃないですね……。

「おぅ、一方的にボコボコにして楽しいか? あぁん?」
「ひっひぃぃぃっ」

チャラい男性に凄まれ、完全に怯えるヒョロリとした男さん。
……えと、これ、何が原因でこうなってるですか?

なんて、考えてる場合じゃありません、止めましょう。
皆は、あのチャラい男が怖くて近づけないのか、遠くで見てるだけですし……ここは私が止めましょう。

「あの、すみません……ってあれ?」

という訳で、黒髪ツインテールさんにその事を伝えようとしました。
伝えようとしたんですが……側にいたあの娘は居ませんでした。

え? えぇ? どっ何処に言ったんですか? まっまさか、こんな時に迷子……ですか?

そう考えて顔面蒼白すると……。

「おいデカブツ!」

あの娘の声が聞こえてました。
その方を見ると、あの娘は……チャラい男を指差して睨んでました。

……えっえと、その。
なっ何してるんですかぁぁぁぁっ!!

「あぁん? なんだチビっ」

え? え? えぇ? 
あの娘、チャラい男に説教でもしに行ったんですか? むっ無茶ですよ。
背丈を考えて下さい! 貴女とチャラい男とではまるで、大人と子供ですよ!

「お前、客の迷惑だから止めろよな」

あぁぁぁ、言っちゃいました。
そんな事を言ったらチャラい男はキレますよ? 私には分かります。
あの手の輩は必ずそう言います!

「はぁ? テメェには関係ねぇだろうが、俺に説教すんじゃねぇよ」

ほら思った通りです。
くっ、こうなったら殴られる覚悟で助けに行きましょう!

と、私がそこに走り寄ったその時です。

「まず、なんで怒ってるのか相手に言えよ! ヒョロい人困ってんだろ! 人間話し合いが大切なんだぞ!」

黒髪ツインテールさんはそう言いました。
その時、私とヒョロい男さんと皆の思いが1つになりました。

「「いや、注意する所そこかよ!」」

私は盛大にずっこけました……あっあははは。
ずっずれてる、注意する所がずれてますよ。

ほら見なさい、チャラい男はポカーンとしてるじゃないですか。

と、まぁ……ずっこける事にはなりましたが私は、その娘の所へ辿り着きました。

……まだ状況は変わってないですね。
チャラい男はポカーンとしてましたが、直ぐにキレた顔に戻っちゃいました。
やれやれ、まずは何とかこの男の話を聞きますか。

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