住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

番外編 長門さんの1日 2

あの後、ヘリに乗り込み、そこで食事を済ませた後、私は……。

「じゃぁ、このプロジェクトを進めると言う事で、そこんとこよろしく」

天川コンチェルン本社の会議室で会議をしている。
ながぁいテーブルの前に高そうな椅子を並べた部屋……それが私が今いる部屋だ。

で、その部屋で今、大事な話をしてるのだ。
まぁ、ざっと話すと天川コンチェルンの、ゲーム部門の事を話してたんだ。

まぁあれだ、難しい話だから割愛するが……イベントを行うから、それについてを話してたりしてた。
分かってくれたか? 分からなかったらスルーしてくれて構わない。

と、そんな話よりもだ……ここから見える、景色は割りと綺麗だから私は好きだったりする。
ここは結構高いビルだからな、ビルの林を見れて結構壮大な光景だ、夜景も綺麗なんだぞ? 

……おっと、ダメだダメだ、これ以上見てたらいけないな。

少しだけ反省し、集まってる奴等の顔を見ずに外の景色を見る私、こんな事しちゃいけないのは知ってるが……まぁあれだ、会議の途中でも息抜きはしたい系女子だから仕方無いな、わっはっはっ。

だがまぁ、外の景色はそこそこに、冴えない男共見てやらないとな。
だけどなぁ、あんまり接したかないんだよなぁ。

だってさ、こいつ等例えるならあれだぞ? 恋愛漫画に出てくるモブ男子達だ。
何故なら私が色々と仕掛けても「え、あっあははは」って言う風に笑って誤魔化すんだぞ! もっと乗ってくれっ、私はそれを求めてるんだ!

だから、こいつ等と付き合うのは全くもってつまらない! これなら、私の店にやってくる客を相手してた方がマシだ。

まっ、そいつ等の大半、期待通りに乗ってくれる人はいないんだがな。

「あっあの、社長!」
「ん、どうかしたか?」

おっと、色々と考えてたら若い男が手を上げて話し掛けてきたな。
なんか困ってる顔をしている、はて何でだ?

「えとですね、その……」

その若い男はゆっくりと立ち上がり話始める。
ふむ、なにやら言いにくそうだな。
よしっ、ならば此方から助け船を出してやろうっ、少女漫画風になぁ!

「別に周りを気にする必要は無い、お前の全てを私が聞いてやる、だから言ってみたまえ」

ふふっ、私の渾身のイケメン決め顔+イケメンがしそうな仕種を交えて、イケメンが言うとキュンと来る台詞を言ってやった。

これで奴は、キュンキュンして逆に緊張が解けて言いずらかった事も言えるだろう、流石数々の少女漫画を読んだ私だけある、気づかいが完璧すぎて自分が恐ろしいな。

わっはっはっ……。
自分の偉大さに、心の中で高笑いしてると、若い男は何故か苦笑いし始めた。
しかも他の奴等も苦笑してる。

……? なぜそんな顔をするんだ? と言うか、こいつは一体、私に何を言うつもりなんだ?

と、疑問に思っていると。
若い男は、やっと喋りだした。

「こんびに、と言うコンビニの件なんですけど……男性客からの苦情が来てます、店長が絡んできてうざいって……でっですので、控えてくれたらなぁって事をですね、はっ話した次第です、あははは」

…………。
なるほど、何の事かと思ったらその事か。
まぁ、会議の時には毎回出てくる苦情でもあるが……今回も出てきたか。

そう言われるとショックなんだよな……私、自分が楽しみたいからやってるだけなのに……それをウザがられるなんてな、あんまりだ。

だがまぁ、そう言われたら直さねばいけないだろう。
そう思った私は、腕を組んで高らかにこう言ってやった。

「分かったっ、善処しよう!」

それを言い終わった後、若い男は「……あっあぁ、はい、わっ分かってくれて……その、幸いです」と言って席に座った。
そしたら、隣にいる歳の言った男に何か言われてる、少し遠いから良く分からないが、なんか慰められるてる感じがするな。
あの会話の中で慰められる様な所なんてあっただろうか? 可笑しな奴だなぁ。

まぁ、そんな事は置いておいて、そろそろ会議を終わらそう。
話す議題は全て済んだし、何より私がそうしたい。

会議って長引くとイライラするからな、重要な事を話していても「後は任せた!」と言って仕事を部下に押し付けたい位だ! まっ、実際にしないけどな。
腐っても社長だからなっ、その辺の事は、しっかりしてるつもりだ!

でもまぁ、今日の場合は会議はここまでにしても良いだろう、という訳で……。

「じゃぁ、今日の会議はここまで、次回はまた1ヶ月後にすると言う事で頼む」

私がそう言うと、男達は「はい」と口々に答えていく。

「では解散っ、お疲れ様」

私はそう言った後、会議室から出ていく。
少し重い木の扉を開けると……奴が出待ちしてくれていた。

「お疲れ様でございます社長」

ガタイが良くて、黒スーツ、黒サングラスを身に付けた男……その名もクロだ。

あっ、そう言えば名前を言ったのは初めてだったな。
改めて言うが、こいつの名前はクロ、勿論実名ではない、私はそう呼んでいるのだ。

「うむ、クロもお疲れ様……ずっと待っててくれたのか?」
「へい、待たせて頂きました」

おっおぉ、本当か? 結構長い時間掛かったぞ? 今時間は昼前だからな? 待ちすぎだからな? でも……。

「ふふ、有難う……これはあれだな、まるで放課後一緒に帰る為に先輩を待つ後輩みたいな行動だな」
「……? 言ってる意味が分かりやせんが、喜んで頂けてる様で幸いでごぜぇます」

クロは本当に少女漫画のイケメンキャラみたいだ。
身体はゴツくて顔はイカつい、されで中身は少女漫画に出てくるメイン男キャラ!

クロは毎回こう言う事してくれるからなぁ、嬉しいよ。

「あっ、社長……」
「ん、どうかしたか?」
「次のスケジュールが押してます、失礼しやすっ」

クロは頭を、ペコリっと下げた後……なっなんと! 私をお姫様抱っこしたではないかっ。

クロの豪腕で私は持ち上げられてしまった。
あぁ、なんて力強い包容だろうか……世の女性がこれを体験すれば昇天する事は間違いないだろうっ。
だって、お姫様抱っこは、少女漫画を愛する者の中では憧れの様な物だからな!

とっと言うか、うっうぉぉぉっ! てっテンション上がりすぎて体温上がってきたぁぁぁっ。
顔とか赤くなったるだろ私ぃぃっ。

「おっぉぅ、やっやばいな……こっこれはヤバイ、実際やられると……凄い、高ぶるっ」
「すみません社長、ヘリに付き次第降ろしやすっ」

その言葉を言い終わった後、タッタッタァッ……と廊下を掛けていく。
あぁ、これど青春だなぁ……嬉しいなぁ。

こんな体験が出来て、私は幸福のあまり顔が緩みきっているよ。

やっぱり、少女漫画的シュチエーションは最高だな! 私の事を恋愛漫画中毒だの言う胡桃に激しく熱弁してやりたいくらいだ!

「なぁ、クロ」
「はい、なんでしょう」

サングラスをキラリと輝かせながら語るクロ、私は続けてこう言った。

「今、私……青春してると思わないか?」
「は? えっえと……良く分かりませんが、してるんじゃないでしょうか?」
「ほぉ、そうか……やはりそうか、ふふっふふふっふはははははっ」

恋愛漫画的シュチエーションを軽々やってのけるクロが言うのなら間違いはない、今私は……まさしくっ! 青春してるのだ!

よぉしっ、この天にも昇る高揚感を保ったまま、次の仕事も完璧にこなしてやるぞぉぉっ。

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