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わいず

ある日のポテチの話し 4

皆様お久し振りね、霜月 七瀬よ。

あれから、なんとポテチは飛ぶ様に売れた。
と言うのも、全て胡桃のお陰なのだけどね。
流石私の嫁の1人、やる時はやってくれるわ。

「いらっしゃいませ、只今私達がお薦めするポテチを買うとコン介カードのポイントが大量に入るイベントをしています」

そうにっこり言うのは胡桃、レジに立って、にこやかに言ってる。
隣のレジにいる長門は「世の男は薄塩の様な男になるべきなのだ」と訳の分からない事を言っている、でも、そんな長門、私は大好きよ。

「っ! なっなんだ……今、妙な気配を感じたぞ?」

あ、ビクついたわね、その仕草も可愛い過ぎるっ、あぁぁぁ! ほんっと萌え過ぎて鼻血が出るわ! なに? あのクールな表情からの戸惑った表情は! もう、さいっこう!

おっと、いけない。
つい暴走してしまったわね、落ち着かないと、深呼吸しましょう、すぅぅ……はぁぁ……。

よしっ、落ち着いたわ。

「きっ気のせいか?」

きょろきょろと辺りを見渡す長門、そんな彼女を私は商品棚に身を隠し見てる。
あぁぁっ、もうっ、あれ誘ってる様にしか見えないわ、私、可笑しくないわよね?

「いらっしゃいませ! 只今……」

と、私がこんな風に萌えに燃えていると、胡桃が声を出してる。
にこやかな表情、ハスキーな声で一生懸命、ポテチのキャンペーンを告知する姿はさながら……マッチ売りの少女の様! あぁぁっ健気! すっごく健気! そして可愛い! 今すぐにでも結婚したいっ。

でもね、私は側にいるだけで充分なの、と言うか、私が女の子に告白したら緊張で身体が爆発しちゃいそうだもの。

だから側で、ずっとずぅぅっと見て上げるの、何年、いえ何十年もね、うふふふふふ。

「推しポテチキャンペーン実施中、っ! なっなんでしょう、急に寒気を感じました」

あっ、なんだか知らないけど怯えたわね。
その怯えた表情もナイスっ! 全く、ここの従業員は全力で私を萌え殺しに掛かって来るから困ったものだわ。

「っ、きっ気のせい、ですよね?」

ガクガクブルブル震えて胡桃は再び、キャンペーンの事を言い始める。

さて、ここで1度店内を見てみましょうか。
店内は女性客の方が多いわ、私にとっては天国ね、ほんと、さいっこーだわ。
と、いけない、見すぎて私を怯えた目で見てきてる。
それはそれで興奮するから、ずっと見ててあげたいけど今は止めておきましょう。

と思いつつもチラチラ見てみる。
時間帯がお昼をちょっと過ぎた頃だから、来てるのは20代以上のお客、勿論、私より年上の方もいるわ。

「ふへっふへへへへ」

嬉しくて、つい変な笑い方をしてしまった。
なので、こほんっ! と咳払いした後、眼鏡をくいっと上げる。

ダメよ七瀬、しっかりしなさい。
いくら女子が沢山いる空間にいるからと言って浮かれてはいけないわ。

気をしっかり持ちなさい。
こんな時は……そうね、何時もは自分と誰かでカップリングを考えるのだけど、今日は胡桃と長門で眼妄想しましょう。

それをしながら仕事をすれば、自分の心も抑えられ、仕事の効率も上がる。
ふふふっ、さぁて、仕事が終わるまでやってやるわ。
ふふっ、ふふふっ、ふふふふふふ……。


「……ふーん、七瀬仕事中に倒れたんだ」
「はっはい! そうなんですよっ、いきなり血を吹き出して、ばたぁぁんって!」

はい、所変わって私の部屋です! その部屋には学生服を着た、恵さんがいます。
私の私を目を細めて聞いてます、あっあぁぁっ、大変です、ほんっとうに大変な事が起きたんです!

 と言うのも、実は今日の仕事が急に止めざるを得なくなって、早い時間にお店を閉めました。

理由は私が言った通り、七瀬さんが血を吹き出して倒れたんです! いきなり「キマシっ!」って言って棚に倒れ込んでぶっ倒れたんです!

そりゃもう大変でしたよ! 幸い、向こう側にお客様はいませんでしたが、商品はぐちゃぐちゃ、お客様はあたふた、七瀬さんはぐったり、長門さんはそれを見て「わっわぁぁぁぁっ!」と大声を出して慌てた後、「大丈夫かっ!」と言って、七瀬さんの方に駆けて行きました。

そしたら「やっぱり、長門はタチより……猫……ね」と七瀬さんが言って、力なくがっくりと意識を閉ざしたんです。
もう顔が真っ青になって、私はずっと、おろおろしてました。

そんな事があったので、状況を知らない恵さんに話してるんです。
あぐらをかいて私の話を全て聞いた恵さんは、「だから帰ってきたら店が荒れてたのね、暴動が起きたのかと思ってビビったし……」と呟きました。

そっそうですよね、誰でもそう思ってしまいます。
でも暴動じゃないんです、七瀬さんが倒れたんです! あぁぁっ、どうしましょうっ。

「だっ大丈夫ですよね? 七瀬さん、元気になりますよね?」
「え、ちょっ、胡桃さん? なんで泣いてるのよ!」

そっそりゃ、泣きもしますよ! だって一緒に働いてる仲間が倒れたんですよ? もう凄くて心配なんです。
そんな私に対して恵さんは、ぽんっと肩を叩いて来ました。

「大丈夫よ、七瀬は明日になったら、ケロッとした顔で戻ってくるわよ、だから心配しなくていいよ」
「で、でも」

あの倒れ方はやばかったですよ? いきなり糸が切れた人形の様にパッタリとですよ? しかも血を吹き出して……。

「大丈夫、あいつはそんな人よ、だから泣いちゃダメ、ほらっ笑って」

にっこり、とまでは行きませんが、なにやら引きつった笑いをする恵さん。
私の頬を引っ張って無理矢理笑顔にさせる、いっいひゃい。

でも、恵さんのお陰で少しだけ元気になりました。
でも、まだ心配は拭えません。
本当に大丈夫ですよね? そう心配するなか、暫く恵さんと話した後、病院まで七瀬さんを連れていった長門さんが帰って来て「明日には戻ってこれるらしい」と言う話を聞いて安心しました。

それを聞いてからは、長門そんと暫く話して、皆でご飯食べて、お風呂に入ったりして寝ました。

と言っても、深い眠りとはまではいきません、だって心配ですから。


そんな思いを抱いて朝を迎えました。
眠た眼で、パジャマから私服に着替えて洗面台で歯磨き、その後は部屋でぽけーとしてたらインターホンが鳴ります、誰でしょう?

そう思って、モニターで確認してみると、私の身体に電気が走りました。

直ぐに玄関まで駆けて行って、扉の鍵とチェーンを外します。
そして扉を開けて、目の前にいる人物に飛び付きます!

「うわぁぁっ、七瀬さぁぁんっ!」
「えっ、おっ、あっ! ちょっ、これっヤバ!?」

そこにいたのは、暖かそうな白の服と、暖かそうな紺のロングスカートを着た七瀬さん、私が抱き付いたら奇妙な声を上げました。

「うっ、うぅぅぅっ、心配しましたよぉぉぉっ! 急に倒れちゃダメじゃないですかぁぁ!」
「えっ、あっ……その、ごめんなさい……」

顔を赤くしながら、ぽつりぽつり言う七瀬さんの肩をぽこぽこ叩く私、多分泣いちゃってますね。

でも、そんなのは関係ありません、本当に無事に帰って来てくれて嬉しいです!

「胡桃」
「はっはい?」

泣く私の頭を撫でて七瀬さんは微笑みます。

「心配かけてごめんなさい」
「うっぅぅ、そうですよ……七瀬さんの……ばかぁぁ」

再び肩をぽこぽこ叩く私、七瀬さんが痛そうにしてますけど、止めてあげません! これはお仕置きですっ、嫌がっても暫くし続けますからね!


と、そんな事があった朝、長門さんも、恵さんも七瀬さんを見て「元気そうで何よりだ」とか「ふんっ、なによ、倒れた割りには物凄く笑ってるじゃない」とか声を掛けてました。

はぁ、今日は何もしていないのに、どっと疲れが出ちゃいました。
それもこれも全部、七瀬さんのせいです、後でとっちめてやりましょう。

あっ、因みに今日は七瀬さんが病み上がりと言う事で、お店はお休み、明日からお店は通常営業するそうです。

七瀬さん、もう心配掛けちゃダメですからね?

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