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わいず

ある日のポテチの話し 3

「塩チョコ味か、食べた事ないなぁ」

そう呟き長門さんは「七瀬はどうだ? 食べた事あるか」と聞きます。
すると、首を横に振って「無い」と答えました。

そうなんですか、無いんですか。
勿体ないですねぇ、人生のちょっとは損してますよ。

「あったら是非食べてください、美味しいですよ」

なので、薦めます。
あれを食べないなんてダメです、是非食べて欲しいです!

「ほぉ、そこまで言うとは、中々美味しいんだろうな」
「はい、美味しいんですっ!」

微笑む長門さんは椅子に深く腰掛け足を組みます、すると、不適に笑い出しました。

「なるほど、そうなってくると色々思い付きそうだなぁ」


え……なんでしょう、今この瞬間、嫌な予感がしちゃいました、七瀬さんもそれを見て目を細めてます。

「よし! 良い事を思い付いたぞ!」
「いっ良い事、ですか?」

恐る恐る聞いて見ると頷いて答える長門さん、私と七瀬さんは顔を見合わせて察します。
きっと、突拍子も無い事を言い出すと……。


ーーそこから数分くらい経った頃、お昼休憩の時、代わりに働いてくれてた人達と変わって午後の勤務。
お客様の入りはそこそこ、男性客が4、女性客が6の店内……やはり女性客がポテチを買うのが目立ちます。

そんな中、こんな事が起きています。

「今、推しポテチキャンペーンを実施している! 私達が勧めるポテトチップスを買うとコン介カードのポンイトが沢山はいるぞ!」

はい、七瀬さんが言った通り今、突発的に始まった"推しポテトキャンペーン"をしています。
あっ因みに今、長門さんが言ったコン介カードと言うのは、このお店で使えるポイントカードの事です。
ポイントが貯まると色んな物に交換できるそうですよ。

と、そんな事は今はいいんです! 推しポテチってなんですか! そんな言葉初めて聞きましたよ!

私が心の中で突っ込みを入れている時、長門さんは威勢良くカウンターで声を上げてて、私はレジに立って、七瀬さんはポテトの棚を整理してます。

「ほら、胡桃も七瀬も声を出せ! 自分の推しポテトをアピールするんだ!」
「え、あっあの、その……わっ分かりました」

ぶっちゃけ言いましょう、超恥ずかしいです。
でもこうやって、顔を真っ赤にして従ってるのは、長門さんの勢いが凄くて断れないからです。

なので、嫌々やってます。
くっ……普通にポテチを売るのなら喜んでやるのに、売り方が普通じゃないですからね、なんと言うか、その……逃げたい気分です。

おっと、そろそろ、どんな売り方をしてるのか教えましょう、それは……。

「私が推すポテチは、断然薄塩だ! 何故なら、どことなく硬派な感じがするだろう?」

と、この様にドヤ顔晒してポテチの謎アピールをしなければいけないからです。
なんですか、硬派な感じがするって、それ聞いたお客様の反応聞きましたか? 半笑いで「はっはぁ……そうですか」って言った後、苦笑いしたんですよ? それに気付いて下さい!

「良いよな硬派な奴って、例えばの話だが……」

あぁ、長門さんが長々と話始めましたね。
こりゃ長くなりそうです、この隙にお客様に救いの手を差し出しましょう。

「お客様、こちらへどうぞ」

長門さんにバレない様に小さな声で言います。
まぁ今は、目を瞑って自分の世界に入ってますから多少騒ぎ立ててもバレそうにないですけど、一応です。

私の声に気付いたお客様達は私の所へ集まります。
長門さんの所のレジはガラッガラです。

それに気付かない長門さんは「つまりだ、薄塩は薄塩なりに良い所がある、で、何処が硬派なのかと言うとだな……」と言う風に話続けています。
一生やってろ、とか思ったのは内緒です。

と、その時です。
七瀬さんが私をじっと見てきました、気になって見つめ返すと。

親指を立ててグーサインを出して来ました、なるほど、私の今の行動はナイスって事ですね? ふふふっ、褒められちゃいました。

でも七瀬さん? 貴女も何とかしてくれれば良かったのに……と、そう言う不満は今は抜きにして、この突発的に始まったキャンペーンを平穏に終わらせましょう。

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