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わいず

がっこ生活、暗躍する親衛隊 1

胸のあたりがちょっぴりキツい白色の冬服の学生服を着た私は思う。
冬休みが終わって、がっこが始まってもう何日くらいたったんだろ。

「こんな事考えるのって、なんかお年寄りみたい」

誰にも聞こえないように小さく呟く私は、窓際の席でグラウンドをみる。
あぁ、朝早くから起きてべんとーに、おかずとご飯詰めて来たわけだけど、まだ眠い、超絶眠い。

「ふっあぁぁ……」

だからかな、欠伸が出ちゃった。
ふと教室を見てみると皆がわいわい騒いでる、アニメの話、ドラマの話、後はがっこめんどーとかそんな会話が聞こえてくる。

「好きなんだけどな、あたしは」

机に肘をついて、ぼけぇと天井を見る、がっこは確かにめんどーだけどクラスメートと会えるからね……だからあたしは好き。
って、あれ? なんか男子グループがあたしを見てる、なんだろう……まぁ気にしなくていっか。

「眠いし、ホームルーム始まるまで寝よ」

そんな事より眠気が勝ってる、だからあたしら机に寝そべるんだけど、この胸が邪魔で寝られないっ、ほんっと邪魔っ、イラつく。

寝そべったら胸が、むにぃっと押し潰されて痛いのよ、あぁ胡桃さんみたいな胸が羨ましい。

と、そんな事本人の前で言ったら……きっと殺られる、絶対にそう、口が避けてもいっちゃダメ、だから気を付けよう。

今頃お店どうなってるかな? 接客大変なんだろうな、てんちょは変人だし、七瀬は変態だし、あと部屋に隠ってる止は……多分ダメ、今頃部屋でゲームやってる。
お店でバイトしてるんだから、ちゃんと働きなさいよ。

「なんか、胡桃さんが可愛そうになってきた」

思えばまともなのは彼女だけじゃん、きっと今頃は苦労してるはず……だから、がっこ終わったら直ぐにお店に行こう。
また、このがっこの生徒会長みたいなお客が来たら困るだろうしね。

「……胡桃さん」

呟きながら目を閉じる、胡桃さんは綺麗な赤髪の女性、ちょっぴり目付きが恐いけど、全然そんな事は無いハスキーボイスの良い人、でも怒らせると超恐い。
あの人の前で胸の話は厳禁……二度と話したりしない。


あっ、そろそろチャイムが鳴る時間……皆が席につき始めたわね、でもまだ立っている人もいる、もぅ……早く座んないと怒られるよ?

と、他人の心配はそこそこに今日も、がっこの生活頑張りましょうか。


……場所は同じくして、ほんのちょっぴり時間は遡る。
ホームルーム開始間近の教室の出来事、とある男子生徒4人が寄り合う。

「今日も女神は美しい」
「ばっか、そんなもん分かってるわ」
「でっでもよ、つい言いたくなるよな……」
「そう、だな」

男子4人はとある女子生徒を見たがら小声で会話する全員の顔が緩みまくっている。

「おっおれ、通学の時に目があった」
「なっなにぃっ!」
「うっ羨ましいっ!」

小太りの男が興奮ぎみに言うと目付きが変わる男子、残りの一人は俯いている。
口々に「お前、それで全ての運を使ったなっ」だとか「くっそぅっ、マジかよ、俺目すら合わされた事ねぇのに」と言うおバカな会話をしている、思春期である。

「っておい、どうした元気ないな」
「ん、あぁ……」

そしたらバカ騒ぎしていた内の一人が俯いた男を心配する。
心配された方は続けて「はぁ」とため息つく。
その男は黒ぶちの眼鏡を掛けている、体型は少し痩せている。

「なっなんだよ、なんか気味が悪いな」
「気味が悪いか、言われて見ればそうかも知れないな」
「なっなんだよ、なんかあったのかよ」
「しっ心配なんだな」

俯いた男に対して3人は非常に友好的だ、うむっ、いい友達関係じゃないか。
それを見て俯いた男は顔を見上げ「お前ら……」と呟く。

「きっ聞いてくれるか? 実は言いたかったんだが、言い出しずらい事だったんだ」
「なに水癖ぇ事いってんだよ、俺達友達だろ?」
「そうだぜ」
「その通りなんだな」

3人は輝かしい笑顔を見せる、それを見て勇気が出たのか俯いた男は語り始める。

「じっ実はな……」

数秒間、間をおいて3人を見て話し出す。
4人の周りに緊張感が走る、唾を飲み込む者、息を止める者、緊張に耐える4人がそこにいた。

「俺、女神の横を通りすぎたんだ」
「なっ、てめっ! ずりぃぞっ」
「横通る時は4人一緒っていただろうボケッ」
「そうだぞっ、抜け駆けはダメなんだなっ」

とある人の横を通っただけでこの言葉、ほんとうにアホっぽい、と言うかアホそのものだ。
そんな3人に向けて「たったまたま、たまたま女神の席の近くの奴に用があったんだよ……」と世話しなく応える。

「で、それがどこの言い辛い話なんだよ、ただの自慢話じゃねぇか」
「そうだぞリア充」
「滅びろなんだな」

なんだコイツ等、リア充認定する基準が低すぎやしないだろうか?

「はっ話はこれからだよ、良いか? 良く聞けよ……」

もっと近くによる様に手で合図すると3人は顔を近付けてくる。

「俺、横切った時に聞こえたんだよ……」
「なっ、声まで聞いただと……断罪だ、ギルティだ!」
「粛清だっ、女神への冒涜だ!」
「親衛隊として見逃せない事案なんだな」

……あえて何も突っ込まないでおこう。

「だぁぁっ、うっせ、静かに聞け、いっ良いか? 女神はこう言ったんだ」

俯いた男は、ごくっと生唾を飲んだ後、静かに言った。

「好きなんだけどな、あたしは……とな」
「んなっ!」
「まっまさ……か」
「あっありえ……ないっんだな」

ごはっ! と言った後、だんっ! と机を思い切り叩き意味不明な精神的ダメージを受ける3バカ、するとその1
人が悲願するようにこう言ってくる。

「きっ聞き間違えだろ? ちょっぴり速いエイプリールフールのネタ……だよな? そうだよな?」

それを聞いた俯いた男は、目を瞑って首を横に振る。

「残念だが、俺は確定的な事を聞いたんだよ、動揺を押さえつつ、用事を済ませながらな」

さらっと言ったけど器用な事してるね、殆ど用の事頭に入らなかったんじゃない?

「なっなんといったんだ?」
「……胡桃さん、と言っていた、ひっ非常に遠くを見るような目で言ってた、あっあれは間違いなく……恋してる目だ!」

カッ! と目を見開き拳を握る。
すると3人は、ある生徒の方を向いて直ぐに俯いた男の方を見る、そして……。

「うぐぁぁぁぁっ! 俺達の青春はお仕舞いだぁぁっ!」
「くそぉっ、女神……いや、恵様は胡桃とか言う男に取られるのかぁぁっ!」
「あっあんまりなんだなぁぁぁっ!」

叫んでいる様に聞こえるが、実はそれほど叫んでいない、声を押さえている。
その分、拳に力を加えて気持ちを押さえているのだ。

「なぁ、嘘だろ? 嘘だと言ってくれ!」

俯いた男にすがり付く男、それを軽く振り払い悲しげな眼差しで「事実だ、紛れもなくな」とそう語った。

すると3人の目の光が消える。
だが俯いた男の目は光を失っていない、それどころか燃えている様に見える。

「聞いた本人が言うのも変な話だが、俺は事実確認をしにいく」

突然語った俯いた男の言葉に3人は目を見開く。
何を言ってるんだ? そんな表情をしている。

「もしかしたら、俺の聞き間違いかもしれない、だがそれが事実だとしても……確かめないといけないだろ?」
「……山田」
「お前ら、恵様親衛隊の3勇士なら……俺と共にいかないか?」

俯いた男、もとい山田は優しい笑顔をして3人をみる。
と言うかこの人達、恵の親衛隊なんだね。
親衛隊が出来る程、この学校では恵は人気者らしい。
その事を本人は知らないんだろうなぁ。

「山田、いや山田隊長……俺達も行くぜ!」
「胡桃とか言う男が本当にいるか確かめてやる!」
「事実なら胡桃とか言う男にじっくり問い詰めるんだな!」

そんな3人の言葉を聞き「ふっ、それでこそ3勇士だ」と呟き3人に向けて拳を付きだす。

「なら放課後までにメンバーを10、いや20人ほど集めておけ」
「任せろ、昼休憩に声かけてくる」
「寄り道はダメだから一旦家に帰ってからだな」
「規則正しく元気良く、抜け駆け粛清告白断罪が我が親衛隊のルールなんだなっ」

わぁお、今時の学生にしては本当に規則正しい。
だけど、行動がアホ過ぎる、あと胡桃の事を男だと言うけど……本人の前でそんな事を言ったら、生きて帰れないと思うから気を付けてね。

「あぁ、なら放課後までに詳しい計画を練ろう、では解散っ!」

山田の一言で3人は自分の席へ戻って行く。
それを見届けた山田は「胡桃とか言う奴、首洗って待っとけよ」……そう呟き、授業の準備をするのであった。

さぁ……なにやら波乱の予感、恵の知らない所で起きた馬鹿さわぎ、巻き込まれる胡桃……そして放課後、コンビニに彼等が押し寄せる。

予感ではなく、波乱が起きるのはもはや確定、さぁ胡桃と山田率いる恵様親衛隊の運命はいかに!

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