住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

きたる金髪、荒ぶる私 1

1月4日、午後13時、今日の天気は雪、ちょっと積もってる程度の雪景色。

「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいませー」

外はそんなだけど、お店は暖かくて快適です。
その店内で、山びこの様に挨拶する私たち、昨日はお店を休みましたが今日は仕事をするみたいです。

「うぅさむさむ」

身体を震わせて入ってきたスーツ姿のお客様はドリンクコーナーへ向かいました。
そうですよね寒いですよね、まだ1月ですしね、早く春になって欲しいですよ。

「流石は仕事始め、サラリーマンが多い」
「そうですね、あっ七瀬さんレジ行ってきますね」
「ん、いってらっしゃい」

前だし作業してたら別のお客様がレジの前に立っているので私は向かいます!

「お待たせしましたお客様」
「あっ、いえ」

ペコリと一礼したあと、直ぐにレジうちします、すると隣のレジが騒がしくなりました。

「貴様、今私の手に触れたな? 胸キュンしたか? したよな?」
「えっあっいや、その」
「照れるな若手サラリーマン、よしっ、そんなお前を見たら気分が良くなった、ポケットティッシュをオマケしてやろう、夜のソロプレイの時に使うと良い」

まぁたお客さんを捕まえてます、気づいてないんですかね? お客さんのどうしていいか分からない顔になっているのが。

あとポケットティッシュの渡し方、なんとかなりません? そうやって渡したの今日で10回目ですよ? それを貰った時のお客さんの何とも言えない表情見ましたか? たまに表情が凍り付いた人もいましたよ?

「貴様、今気づかい出来て良い女だなと思ったな? 付き合いたいと思っただろ、だが残念だったな! 私は恋愛は出会いまでと決めているっ、だからすまんな……付き合うのは無理だ」

いりませんよそんな説明、だからドヤ顔するの止めてください、不愉快です。

「はぁそうですか、ははは」

ほら見なさい、お客さん愛想笑いしてるじゃないですか。

「まぁあれだ、また来ると良い」
「はっはい、分かりました」

苦笑しつつ商品が入ったレジ袋を片手で持ち苦笑いして帰っていくお客さん、絶対にもう来ないですね。

「合計854円になります」

と、そんな事を思いつつ接客します、あっ、このお客さん目で訴えてますね。
「早くしてくれ、絶対に絡まれたくないんだ」と……分かりますよその気持ち、ですからそれに応える様に素早く商品をレジ袋に詰めてお金を受け取りお釣りを渡します。

「ありがとうございました!」

ペコリと一礼する私、そしたらお客さんはそそくさと店から出ていきます、その時でした!

「待て!」

長門さんがレジに手を付け飛び越え出ていこうとするお客さんの前に立ちます。きっと「うわぁ絡まれたぁ」と思ってるに違いありません。

「出ていく前に私の胸キュンする台詞を聞いて、あっ、ちょっ! こらっ逃げるなっ! ちぃっ、行ってしまった、全く初な男だな」

これだから若手は、そう呟きながらレジに戻る長門さん、はぁ……とため息を吐いた後チラリと私を見ます。

「胡桃もそう思わないか?」
「……そうですね」
「なんだ今の間は」
「気にしないでください」

長門さん、私は貴女の様な恋愛漫画脳はしていません、ですので同意を求めないでください。
あと、七瀬さん……さっきからクスクス笑うの止めてください、不愉快で仕方ありません。

「そうか、まぁそう言う事にしておこう」

にっ、と笑った長門さんは笑いながら店内を見渡します。
まだ店内にはお客さんがいます、そりゃお昼時ですからね……しかも今日は仕事初めな訳ですしいるのは当たり前でしょうね。

「よしっ、決めた! あのパンコーナーにいる客相手に曲がり角際の出会いを実践してくる」

今にも飛び出しそうな長門さんにゆっくり近付いて後ろから羽交い締めする私。

「止めてください、迷惑です」
「止めるな胡桃っ、これは私の生き甲斐だ!」
「漫画の様な出会いをしたかったら乙女ゲーでもしててください  」

そんな生き甲斐なんて溝にでも捨てちまえばいいんですよ、と言うか凄い暴れてますね、そんなにやりたいんですか。

「ふっ2人が密着してる、やばい、色々想像出来てたぎってきたわ」

? 七瀬さんが何かを呟いてますね、何言ってるんでしょう。
まぁ良いか……今はこの自分のやりたい事に忠実な迷惑な店長を何とかしないといけません。

さて、まだ「離せぇ!」と暴れてます、一発お腹にパンチして黙らせましょうか? いえ……暴力はダメです、やはりここは話し合いで何とかするしか……そう思ってた時でした。

ティロリロリィンーー
お店の入店音が流れました、お客さんですね……挨拶しないといけません。

「いらっしゃ……っ!」

私は目を見開きました、理由は簡単です。
圧倒的存在感を放つ女性のお客さんが来たからです、あっありえません、なんなんですかあれは! とてつもない存在感に口をポカーンとあけてるいるとその人はニコッと笑いました。

「あぁ、あたしお客じゃないから挨拶無しでいいよぉ」

明るく優しい声でした、ショートヘアの金髪を揺らしながら私をじぃっと見てきます。
見た目は可愛らしい10代ぽいですけど、何歳なんでしょう?
          
「てかっあなた新人さん? そうでしょ? だって見たことないもん」
「え、あ……はい新人です」

声も明るく可愛らしいですね、やはり10代ですかね。

「そうなんだ、あたしはここでバイトしてるの、よろしくね」
「よっよろしくお願いいたします」

満面の笑みでの挨拶、天真爛漫とはこの事でしょうね、明るい娘って素敵だと思います。

「あっ、てんちょ押さえてるね、何かあった?」
「えっ、えと……ありました」

とか思ってたら対応に困る質問がとんできました。
どっどう答えたらいいですかね? そう思いつつ素直に答えます、すると。

「大変ね、てんちょって綺麗だけど変な事するのがたまに傷よね」

はい、おっしゃる通りです、苦笑する金髪ショートヘアの人、私も苦笑いで返します。
その方の背丈は女子高生くらい……暖かそうなその服はとってもお洒落です、七瀬さんの着こなしが綺麗なら、この方の着こなしは可愛いと言った所でしょうか。
と、思っていたらつんつんと頬をつつかれちゃいました。

「えと……新入りさん? てんちょの首絞めちゃってる」
「え? あぁっ!」

はっ! 静かだなぁと思っていたら首絞めちゃってたんですか! 慌てて離すと力なく床に崩れ落ちていく長門さん。
やっやってしまいました、でも結果的にお客さんには迷惑かからなかったからいいですよね?

「えと、そろそろ名前聞いて良いかな?」

自己解決してたらそう言われました、そう言えばそうですね名前言ってませんでした。

「あっ、はい! 私は桜塚 胡桃って言います」

その方を見ながらご挨拶、でも視線は"ある所"に向いてしまいます。
と言うかあれは見だるをえませんよ、あれがこの方の存在感の根元なんですから。

「あたしは日向 恵、高2だよ、胡桃は何歳なの?」
「私は24歳です」
「えぇっ嘘ぉっ! 年上、ごっごめん……なさい、思いっきりタメ口きいちゃった……ました」
「あっあははは、そんな気にしないで下さいよ」

ニコニコ笑う私、額には冷や汗を流しています。
くっ、あっあれは、あっあの、あの胸は! なんなんですかぁぁぁっ!

「いっいや、ぶっちゃけ、じゃなくて普通に考えて年上にタメ口聞いちゃ、聞いてはダメじゃん、イケナイデス」
「ふふっ、最後カタコトになってますよ? 楽に話して下さい」

私がそう言うと恵さんと言う方は「えっでも……」と呟きます。
そんなに気にしなくていいのに、とかそんな事はどうでも良いんですよ、問題はこの方の胸ですよ胸!

圧倒的大きさ、それはまるでメロンの様! そして圧倒的美形っ、ほんっと形が良すぎますっ、ただでさえ大きいのに形が綺麗ってなんなんですか! 私なんて綺麗な絶壁が出来てますよっ。

あぁあっ、さぞ触ると柔らかいんでしょうねっ、ちきしょうっ、うらやまけしかん!

ん? ちょっと待ってください、確かこの方……日向 恵って言ってましたよね?
なっ七瀬さんが言ってた方ってこの人だ! 聞いた通りの容姿ですし魔違いありません。

「えっえと、とっ取り合えず……その、敬語なんて慣れないし……ちょっとそこら辺目瞑って貰って良い?」
「別に構いませんよ?」

嫉妬の表情を隠し、私はにっこりと微笑みます。
そうですか、この人が日向 恵さんですか……ツンデレ以外全部当てはまる方と言うのが分かりました。

「ほっほんと!?」

たゆんっ。
豊満な胸が揺れました、その時、私の眉間にシワが寄ります。
ふっふふっ不愉快極まりないですねぇ、なんですかその胸は、私  にたいする挑戦か何かですか?

「えぇ本当ですよ」
「あっありがとっ! いやぁあたしって全然敬語とか使えないし、ぶっちゃけ苦手て言うか、まぁ堅苦しいのって嫌いなのよねぇ」

なるほど、これが恵さんの素の喋り方。
あっカウンターにもたれ掛かりましたね、そしたら胸がむにんっと持ち上がりました、これが10代にして与えられた美形巨乳、これがかくの差と言う奴ですか。

「胡桃、と流石に呼び捨ては不味いか、えと胡桃さんがそう言ってくれてあたし嬉しいよっ、ありがとね」
「いえ、どういたしまして」

恵さんは私に手を差し出してきました、なので私はその手を握ります。
柔らかい、細くて綺麗な指……こうして目を見てみると結構大きいんですね。
胸も大きいし目も大きい、その大きさを私に分けて欲しい……とかそんな嫉妬心を抱きつつ握手しました。

あはっあははは……耐えて下さい私の精神、初対面の人相手にキレてはいけません、そう何度も言い聞かせながら握手をしました。

あぁ、胸が痛い。

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