一兵士では終わらない異世界ライフ
卒舎の試験
〈トーラの町・街道〉
ザワザワ……ザワザワと町の人々は領主邸より続いている大通りを歩く集団を見て、色めき立っていた。
集団の先頭に立つのは、男にしては長めな黒髪をしているが……それでも女々しさというものはなく、むしろ威厳を感じさせる風格がある。その男、ギルダブ・セインバースト……『剣聖』と呼ばれる剣術の達人級であり、ここトーラの町一帯を領地に持つ領主だ。
その男の隣には、とても綺麗な金髪を腰にまで伸ばした美しい美女が歩いている。その美女、アリステリア・ノルス・イガーラといい、公爵令嬢である。
そして、その後ろを追従する六人の美女集団は『花に集う戦乙女』と呼ばれる、アリステリアの護衛騎士だ。その護衛騎士達の先頭を歩くのが、『花に集う戦乙女』の隊長であるアフィリア・フォンマター……亜麻色の髪を背の中程までに伸ばし、その髪をひと束三つ編みで結っている。真紅の瞳は鋭く、まさに戦乙女……。
と、そのアフィリアの後ろを歩く騎士達はこんなことをボヤいた。
「なーんでアタシ達がガキのお守りなんてしないとなんないのよー」
「……」
アフィリアはそう言った騎士の失言を咎めようと口を開きかけたが、事実彼女も本音ではそう思っていた。どうしてアリステリアの護衛騎士である我々『花に集う戦乙女』が学生の試験で……しかも、六対一の試合などをしなければならないのか……アフィリアはそれが不満だった。
一対一ならば分かる。だが、まさかの多対一だ。納得しろという方が無理な話だ。
彼女達はアリステリアの護衛として高いプライドがある。何の説明もなしに、昨日突然護衛対象であるアリステリアから、「この方と試合をしていただきます」と命じられたのだ。命令だからと割り切っていたが、それでもプライドが傷つくような試合をしろとはどういうことか……アフィリアは説明が欲しかった。
そんな不満たらたらなアフィリアの顔を横目で見たアリステリアは、困ったような笑みを浮かべて言った。
「……不満ですか?」
「……いいえと言ったら嘘になります」
「正直ですわね」
アリステリアはまあ仕方がないと思いつつ、続けた。
「しかし、きっと今回の試合は貴女達にとって良い経験となると思いますわ」
「そこまで……なのですか?そのグレーシュ・エスォンスという人物は」
訊かれて、アリステリアは顎に指先を当てて逡巡する仕草をとってから答えた。
「さあ……どうなのでしょう?」
「ど、どうなのでしょうって……」
アフィリアは呆気にとられるしかなかったが、アリステリアの方は実に楽しそうだ。
「楽しみですわね!ギル……」
そう言いながら、手を後ろに組んで隣を歩くギルダブの愛称を呼んだ。ギルダブはチラッと視線だけアリステリアに向けると、ふっと笑って再び視線を前に戻した。
アフィリアはそんな二人を後ろから眺め、溜息を一つ零した。
グレーシュ・エスォンス……どのような人物かは知らないが、アリステリアやギルダブが評価するような人間だ。だから、アフィリアは一途の期待を胸に、トーラ学舎を目指した。
〈グレーシュ・エスォンス〉
妙なことになったなぁ……と、俺は闘技場の控え室のソファの上に仰向けになって溜息を吐いきつつ、そんなことを思った。
俺が昨日帰ってきてから進んでいたらしい卒舎の試験内容は『花に集う戦乙女』に加えて、エドワード先生とギシリス先生……計八人を相手にする試合形式の実戦試験だ。
しかも、俺が今日顔を見せにくることを見越して既に準備しているとはさすがの手腕ですよねぇ……エドワード先生は。
まあ……非公式の試合で闘技場は開いてないから身内しかいない闘いになるわけだ。観客がいないなら、無用な心配もいらないだろう。ある程度なら本気が出せそうだ。
………………なんだかなぁ。この五年で自分で言うのも何だが、少し血の気が多くなった気がする。嫌だわぁ……血の気の多い男ってモテないらしいし。
俺がそんなふざけた思考に耽っていると、控え室の扉が徐に開かれて、仰向けに寝ながらも視線だけ出入り口へ向けた。
「あ!ギシリス先生!」
俺は向けた視線の先にいたのがギシリス先生だと分かって、直ぐに起き上がってパタパタと近寄った。
「うむ……久しいな」
「はい!先生は……お変わりないようで何よりです!」
ギシリス先生は相変わらずフサフサな耳と尻尾をお持ちで、健康的な褐色肌はいつ見ても美すぃ。美しいのではない……美すぃのだ。
どうでもいいな……。
「お前は大きくなったな」
「はい!五年も経ちましたから」
「そうだな……」
ギシリス先生は頷きながら、ゆっくりと俺に近づいてきて優しく肩をポンポンと叩いた。先生ーこういう時はー感動的な抱擁?とかがーテンプレだとー思うんすよぉー。
俺が残念な気分になっているところで、ギシリス先生は少し嬉しそうに笑って言った。
「ほぉ……身体も随分としっかりしているな。全く体幹がブレていない……頑張ったのだな」
「ギシリス先生……」
よし……このままギシリス先生に抱きついても流れ的に問題ないよね?いいよね?でゅふ……。
いや、アカンやろ。
俺は自重して、頭をブンブン横に振ってからギシリス先生に向き直った。
「まあ、僕の成長は試合の中でしっかりとお見せしますから」
「うむ……八対一か。大きく出たものだな。楽しみにしているぞ」
「はい!」
それだけ言って、ギシリス先生は控え室を後にした。五年ぶりに再会したのに随分と呆気ない……が、ギシリス先生はもともと言葉で語るタイプの人ではない。彼女は己の剣で語る熱い人だからな……そんなギシリス先生の熱い剣に負けないように俺も頑張らないとな。
それから暫くして、準備が整ったというエドワード先生の連絡を受けた俺は舞台に上がった。
※
舞台に上がった俺は、まず目の前に立つ美女集団を目にして目ん玉を飛び出させた。
「うがぁぁあ!」
文字通り、本当に目ん玉が飛び出しそうになって神経が悲鳴を上げ、俺も悲鳴を上げた。危ない危ない……これも敵の作戦か……引っかかるところだったよ。マジ。
視線を上げて、観客席の方を見るとVIP席に懐かしいギルダブ先輩とアリステリア様が並んで座っていらっしゃる。本当に仲がよろしい……と、アリステリア様が手を振ってくれたので俺も振り返したら美女集団に、物凄い剣幕で睨まれた。
ふえぇぇ……怖いよぉ〜。
「ふ……まさか当日になって八対一になっているとはな……嘗められたものだ」
と、『花に集う戦乙女』の一人がそう言った。
いやぁ〜俺も出来れば舐めたいんだけどねぇ。ぺろぺろと……そして、「あ、アマァイィ!」とかって叫んじゃう。
よし、自重しようか!
「アタシ達を愚弄したことを後悔させてやる!」
ひえぇぇ……と、ギシリス先生とエドワード先生に目を向けると二人は既に戦闘態勢だ。
いつでも来いってわけか……。
『花に集う戦乙女』の美女達も、剣を抜いて構えをとった。
俺はそんな八人を相手に素手で構えた。その瞬間、またまた美女さん方がギャーギャー騒ぎ出した。
「す、素手だと!どこまで私達を馬鹿にすればっ」
と、その美女が言いかけたところで『花に集う戦乙女』の人の中でも特に強そうな、亜麻色の髪をした美女がそれを遮って言った。
「油断するな……体術の使い手かもしれない」
その意見にハッとなったようだが、俺のことを知っているギシリス先生とエドワード先生は訝しげな視線を送ってくる。
まあ……なんでもいいさ。まずは小手調と行かせてもらおうかな……俺がどれだけ強くなったのかのね。
俺は挑発するために、ちょいちょいと手招きした。すると単細胞なのか、美女集団が躍起になって突っ込んできた。短絡的だ……しかし、踏み込みは鋭く早い。一気に間合いを詰められた。
俺は意識を切り替えて、戦闘モードへ移行する。視点が一人称だったものから三人称へと切り替わり、視界がオープンになる。
右左と……前後を美女達が囲み、俺の視線を撹乱するために動きながら攻撃の隙を伺っているようだ。
「速い……」
思わず俺は舌を巻いた。連携もさることながら、動きは軽やかで蝶が舞うが如しだ。個々の力も総じてレベルが高いことが見受けられる。挑発したとしても、簡単に突っ込んではきてくれないみたいだ。
俺は油断なく構え、『花に集う戦乙女』が仕掛けるのを待ち……一人が背後から襲いかかってきた気配を感じた俺は、振り向きざまに足を大きくスイングさせて回し蹴りを放った。
完璧な反応とタイミングだったが、『花に集う戦乙女』の騎士も素晴らしい反応速度で、上体を反らしてスレスレで俺の蹴りを躱した。
回し蹴りのモーションの終点の俺へと他の騎士達が鋭い剣を四方から浴びせかけてくる。なるほど……攻撃の終わりを狙っていたのか。まんまと引っかかってしまったが、なぁに……大したことはない。
俺は大きくスイングしていた右足を止めずに、勢いそのままにまずは一人の剣を上から叩き落とし、支えの足を曲げて重心を落として地面に手をつき逆立つと、足を開脚させて地面についた手を起点に身体を回す……開脚した足が四方から襲いかかってきた騎士達を薙ぎ払っていく。
初級風属性体技【嵐脚】……風邪を纏って回転する俺を中心に突風が巻き起こる。
「くぅ……」
それで女騎士達は、後退を余儀なくされて後ろに飛び退き、俺から距離を取った。
「よっと……」
俺は逆立ちの姿勢から戻ってから手を払い、目の前にいる騎士達と先生二人を見据えてボヤいた。
「なるほどー……さすがにギルダブ先輩が教えているだけあって良い動きをしますね。連携もさることながら、個々の力も高い……しかし、この中で俺と真面に戦えるのはそこの亜麻色の髪の騎士さんと先生くらいですかね」
またもや挑発気味に言った俺に対して、『花に集う戦乙女』達は憤怒した。あら……ごめんあそばせ?
「エドワード……見たか」
「うむ……まさか体術とは」
何やら後ろの方でギシリス先生とエドワード先生が話し始めたな……要注意かね。俺の中でもはや『花に集う戦乙女』が記憶の隅に追いやられそうになった時、先ほどの亜麻色の髪の騎士が前に躍り出てきて言った。
「我が名はアフィリア・フォンマターだ。我々がここまで侮辱されたのは初めてだ……」
そうですか……そりゃあ今までされなかっただろうな。ギルダブ先輩から剣を教えられ、アリステリア様の護衛なんだから……でもな、あんたらは少し固すぎるよ。お高くとまってるだけじゃ、アリステリア様の護衛なんざ務まらないぜ?
俺はそれを口にこそ出さなかったが、表情だけで表し、それを読み取ったアフィリアという騎士はやる気になったのか鋭い視線で俺を射抜き、剣を構えた。他の騎士も同様に剣を構えた。
さっきまではお互いにウォーミングアップ……互いに互いの力をある程度測るための茶番だ。
ここからは俺もギアを上げていく……そうして俺は手を前に突き出してから魔力保有領域を解放した。
「【錬成】」
俺が使うのは錬成術だ。これもこの五年で学んできた技術である。
俺の命令に従い、魔力が地面へと流れていって、唯の土塊から硬質な真っ黒の剣を作り出した。
そいつが地面から飛び出してきたのと同時に柄を掴んで決めポーズ……決まった。最高にかっくうぃいぜ……。
「よぉし……」
俺は超合金製の片手剣を右手に握り、計八名と向き合う……ちょっと挑発し過ぎたかな?殺気を感じるよぉ……ふえぇぇ。
「……しっ!!」
俺が構えて暫くして、一人が剣を振って突っ込んできた。やっぱり速い……しかし、その程度なら受け流せる。
俺は軽い感じで構えて、突っ込んできた騎士の攻撃を全て受け流す。速さもあるが重みもあって、受けていてはやられてしまうかもしれない。
そうやって俺が一人の相手をしているところに左右から二人が挟撃してくる気配を感じ取り、一度後ろに回避する。だが、後ろからもくる気配を感じたので振り向きざまに柄の先で脇腹を強打した。
「がはっ……」
騎士の一人はその一撃で沈黙……まずは一人。
「くっ……上級闇属性剣技【ネガブレイク】!やあぁぁぁ!!」
先ほど、正面から攻めてきた騎士が仲間をやられて焦ったのか剣技を使って再び突っ込んできた。
あらら……。
「バカッ!よせ!」
アフィリアの怒号が轟くが、剣技というのは途中で止めることが出来ない。それが剣技の弱点でもあり、これにカウンターを喰らってしまえば致命的だ。
だからこそ、剣技や体技といった類いの技はここぞという時以外に使うと痛い目に遭う。
俺は【ネガブレイク】を放ってきた騎士の攻撃をヒラリと躱し、すれ違い様に再び柄の先で腹部を強打して気絶させた。
「はい、二人目……おほほ〜」 
俺は余裕こいて高笑いしてみたのだが、騎士達の顔が真剣そのものになっていて全然受けなかった。悲しい……。
仕方ない……おふざけはここまでだ。こっからは真面目にやるぞ……。
残り六人。
次はギシリス先生が突っ込んできて、俺との鍔迫り合いに持ち込んでくる。ギシリス先生は女性とはいえ獣人……力では残念ながら人間である俺は敵わない。だからこそ、【ブースト】のドーピングが必要だが、敢えて使わずにギシリス先生の力を利用してバランスを崩した。
「はっ!」
「……っ!」
バランスが崩れたところを狙って剣を振り下ろしたが、さすがはギシリス先生といったところで、直ぐに体勢を立て直すとギリギリで俺の剣を躱して、直ぐに反撃してきた。
剣を振り下ろしている俺には防げない上半身への攻撃……俺は上体を屈めて避けて、上体を起こす勢いで右腕に力を込めて斜めに斬り上げた。
風鳴りが鼓膜を震わせ、ギシリス先生の胸を僅かばかり掠る……上体を反らして避けられたようだ。そこからギシリス先生は、反らした身体を前に持って行って前傾になり、両手で握る剣をズバンッと鋭い踏み込みとともに放ってきた。
常人の反応速度では到底反応し得ない速度だったが、俺には見えていたし反応出来た。
ギシリス先生の放った攻撃を半身になってギリギリで躱し、肉迫する距離で剣を振るった。
しかし、俺の振るった剣はギシリス先生が引き戻した剣で遮られ、そのまま激しい打ち込み合いとなった。
アカン……ギシリス先生の相手をするので手一杯だな……ここでエドワード先生の援護が入ると非常にまずいですわね!
あ、これフラグ建築しちゃってね?
案の定、エドワード先生が詠唱して放った中級氷属性魔術【アイススピア】……氷の槍が幾つも俺に向かって飛来してきた。
ギシリス先生は俺を最後まで引き付けてから離れ、残された俺は【アイススピア】の迎撃のために剣を振るった。
「はっ!」
短い気合いの後に、次々に飛んでくる氷の槍を剣の腹で滑るようにして受け流していく。この程度の弾幕なんざ慣れたものだ。某幻想シューティングに比べたら甘い甘い!
氷の槍を全て受け切った後、間髪入れずに『花に集う戦乙女』が背後から襲ってきたのを感じた。俺は大きく跳躍し、宙返りしながら背後にいた騎士のさらに背後へ着地し、首筋に手刀を打ち込んで気絶させる。
これで三人……。
「グレーシュは相手の位置を正確に察知する能力がある。迂闊に死角に回って攻撃するのは控えた方がいい」
ギシリス先生は俺に鋭い視線を向けたまま、『花に集う戦乙女』の残りに言った。ありゃーバラされちゃった。あのまま背後を……死角を狙われていれば、そのまま全員倒せたのに。
「……エーデルバイカ殿」
と、アフィリアは俺に剣先を向けながら隣に立つギシリス先生の名前を呼んだ。
「どうした」
ギシリス先生は目線だけアフィリアに向けて、依然として俺への警戒は怠っていない。むぅ……隙がない。
「この試合……『花に集う戦乙女』として勝利して同然だと……そう思っていた。しかし、我々は既に半分がやられてしまった……あの男一人に。ここからは我らの誇りを賭けて本気を出すが……宜しいか?」
アフィリアの瞳の中に光が宿り、空気が変わったのを俺は感じた。ギシリス先生もそれに気が付き、目線を俺に戻してから頷いた。
アフィリアはそれを確認すると、深く腰を落として叫んだ。
「固有剣技……【刹那】」
その瞬間、俺の視界からアフィリアが消え、代わりに気配が直ぐ近くにまで来ていることを確認し、反射的に気配のした方向に剣を構えてアフィリアの攻撃を防いだ。
なんだ今のはっ……!
アフィリアと鍔迫り合いになり、強引に押し込もうとするが、さすがに剣術の熟練級だ。足腰がしっかりしていて、力押しが出来ない。
アフィリアは俺を引き付けている間に、残った騎士達に命令を下す。
「全員……【刹那】の使用を許可する。この男を本気で叩くぞ」
おっと……目がマジだ。ついに本気にさせてしまったようだな。
今まで簡単にやれていたのは相手が俺のことを格下だと決め付けていたお陰だ。しかし、今はそんな侮りはなくした『花に集う戦乙女』は、本来の力をフルに使ってくる……本気で来る前にもう少し減らして置きたかったんだけどねぇ……。
俺は前後左右を高速移動する騎士達について行けず、一度目の前のアフィリアと間合いを取る為に飛び退いた。
あの【刹那】という剣技……一瞬で加速して敵との間合いを詰めるのか。恐らくはギルダブ先輩の固有剣技……厄介なことこの上ないな。
本気になった彼女達を剣で相手にするには骨が折れる……そろそろ俺も本気を出そう。
俺は前後左右を駆け回る『花に集う戦乙女』が斬りかかってくる前にことを済ませるために、迅速に行動を開始した。 
「【錬成】」
俺は魔力保有領域を解放して、黒い剣を別のものに作り変える……作り出すは弓……そして矢と矢筒だ。
俺は数秒の間に全ての準備を整えて、弓を構えた。
「弓だと……?この速さの我ら当たるはずがない!」
騎士の一人が駆け回りながら言った。さて……それはどうかな?
俺は黒い弓に黒い矢を番え、高速で俺に迫る一人の頭の横スレスレを狙って放った。
「えっ……」
俺の放った矢は、狙い通りに頭の直ぐ近くを通り過ぎると、矢が通り過ぎた衝撃だけで騎士は気絶してしまった。
これで四人……。
「このっ!」
またもや【刹那】という剣技でもう一人が突っ込んできたので、俺はそれを躱して通り過ぎていく騎士の首根っこを掴んで地に叩きつけた。
これで五人だな。
俺は弓を構えながら、残った三人に向けて言った。
「さぁて……あと三人ですね」
ザワザワ……ザワザワと町の人々は領主邸より続いている大通りを歩く集団を見て、色めき立っていた。
集団の先頭に立つのは、男にしては長めな黒髪をしているが……それでも女々しさというものはなく、むしろ威厳を感じさせる風格がある。その男、ギルダブ・セインバースト……『剣聖』と呼ばれる剣術の達人級であり、ここトーラの町一帯を領地に持つ領主だ。
その男の隣には、とても綺麗な金髪を腰にまで伸ばした美しい美女が歩いている。その美女、アリステリア・ノルス・イガーラといい、公爵令嬢である。
そして、その後ろを追従する六人の美女集団は『花に集う戦乙女』と呼ばれる、アリステリアの護衛騎士だ。その護衛騎士達の先頭を歩くのが、『花に集う戦乙女』の隊長であるアフィリア・フォンマター……亜麻色の髪を背の中程までに伸ばし、その髪をひと束三つ編みで結っている。真紅の瞳は鋭く、まさに戦乙女……。
と、そのアフィリアの後ろを歩く騎士達はこんなことをボヤいた。
「なーんでアタシ達がガキのお守りなんてしないとなんないのよー」
「……」
アフィリアはそう言った騎士の失言を咎めようと口を開きかけたが、事実彼女も本音ではそう思っていた。どうしてアリステリアの護衛騎士である我々『花に集う戦乙女』が学生の試験で……しかも、六対一の試合などをしなければならないのか……アフィリアはそれが不満だった。
一対一ならば分かる。だが、まさかの多対一だ。納得しろという方が無理な話だ。
彼女達はアリステリアの護衛として高いプライドがある。何の説明もなしに、昨日突然護衛対象であるアリステリアから、「この方と試合をしていただきます」と命じられたのだ。命令だからと割り切っていたが、それでもプライドが傷つくような試合をしろとはどういうことか……アフィリアは説明が欲しかった。
そんな不満たらたらなアフィリアの顔を横目で見たアリステリアは、困ったような笑みを浮かべて言った。
「……不満ですか?」
「……いいえと言ったら嘘になります」
「正直ですわね」
アリステリアはまあ仕方がないと思いつつ、続けた。
「しかし、きっと今回の試合は貴女達にとって良い経験となると思いますわ」
「そこまで……なのですか?そのグレーシュ・エスォンスという人物は」
訊かれて、アリステリアは顎に指先を当てて逡巡する仕草をとってから答えた。
「さあ……どうなのでしょう?」
「ど、どうなのでしょうって……」
アフィリアは呆気にとられるしかなかったが、アリステリアの方は実に楽しそうだ。
「楽しみですわね!ギル……」
そう言いながら、手を後ろに組んで隣を歩くギルダブの愛称を呼んだ。ギルダブはチラッと視線だけアリステリアに向けると、ふっと笑って再び視線を前に戻した。
アフィリアはそんな二人を後ろから眺め、溜息を一つ零した。
グレーシュ・エスォンス……どのような人物かは知らないが、アリステリアやギルダブが評価するような人間だ。だから、アフィリアは一途の期待を胸に、トーラ学舎を目指した。
〈グレーシュ・エスォンス〉
妙なことになったなぁ……と、俺は闘技場の控え室のソファの上に仰向けになって溜息を吐いきつつ、そんなことを思った。
俺が昨日帰ってきてから進んでいたらしい卒舎の試験内容は『花に集う戦乙女』に加えて、エドワード先生とギシリス先生……計八人を相手にする試合形式の実戦試験だ。
しかも、俺が今日顔を見せにくることを見越して既に準備しているとはさすがの手腕ですよねぇ……エドワード先生は。
まあ……非公式の試合で闘技場は開いてないから身内しかいない闘いになるわけだ。観客がいないなら、無用な心配もいらないだろう。ある程度なら本気が出せそうだ。
………………なんだかなぁ。この五年で自分で言うのも何だが、少し血の気が多くなった気がする。嫌だわぁ……血の気の多い男ってモテないらしいし。
俺がそんなふざけた思考に耽っていると、控え室の扉が徐に開かれて、仰向けに寝ながらも視線だけ出入り口へ向けた。
「あ!ギシリス先生!」
俺は向けた視線の先にいたのがギシリス先生だと分かって、直ぐに起き上がってパタパタと近寄った。
「うむ……久しいな」
「はい!先生は……お変わりないようで何よりです!」
ギシリス先生は相変わらずフサフサな耳と尻尾をお持ちで、健康的な褐色肌はいつ見ても美すぃ。美しいのではない……美すぃのだ。
どうでもいいな……。
「お前は大きくなったな」
「はい!五年も経ちましたから」
「そうだな……」
ギシリス先生は頷きながら、ゆっくりと俺に近づいてきて優しく肩をポンポンと叩いた。先生ーこういう時はー感動的な抱擁?とかがーテンプレだとー思うんすよぉー。
俺が残念な気分になっているところで、ギシリス先生は少し嬉しそうに笑って言った。
「ほぉ……身体も随分としっかりしているな。全く体幹がブレていない……頑張ったのだな」
「ギシリス先生……」
よし……このままギシリス先生に抱きついても流れ的に問題ないよね?いいよね?でゅふ……。
いや、アカンやろ。
俺は自重して、頭をブンブン横に振ってからギシリス先生に向き直った。
「まあ、僕の成長は試合の中でしっかりとお見せしますから」
「うむ……八対一か。大きく出たものだな。楽しみにしているぞ」
「はい!」
それだけ言って、ギシリス先生は控え室を後にした。五年ぶりに再会したのに随分と呆気ない……が、ギシリス先生はもともと言葉で語るタイプの人ではない。彼女は己の剣で語る熱い人だからな……そんなギシリス先生の熱い剣に負けないように俺も頑張らないとな。
それから暫くして、準備が整ったというエドワード先生の連絡を受けた俺は舞台に上がった。
※
舞台に上がった俺は、まず目の前に立つ美女集団を目にして目ん玉を飛び出させた。
「うがぁぁあ!」
文字通り、本当に目ん玉が飛び出しそうになって神経が悲鳴を上げ、俺も悲鳴を上げた。危ない危ない……これも敵の作戦か……引っかかるところだったよ。マジ。
視線を上げて、観客席の方を見るとVIP席に懐かしいギルダブ先輩とアリステリア様が並んで座っていらっしゃる。本当に仲がよろしい……と、アリステリア様が手を振ってくれたので俺も振り返したら美女集団に、物凄い剣幕で睨まれた。
ふえぇぇ……怖いよぉ〜。
「ふ……まさか当日になって八対一になっているとはな……嘗められたものだ」
と、『花に集う戦乙女』の一人がそう言った。
いやぁ〜俺も出来れば舐めたいんだけどねぇ。ぺろぺろと……そして、「あ、アマァイィ!」とかって叫んじゃう。
よし、自重しようか!
「アタシ達を愚弄したことを後悔させてやる!」
ひえぇぇ……と、ギシリス先生とエドワード先生に目を向けると二人は既に戦闘態勢だ。
いつでも来いってわけか……。
『花に集う戦乙女』の美女達も、剣を抜いて構えをとった。
俺はそんな八人を相手に素手で構えた。その瞬間、またまた美女さん方がギャーギャー騒ぎ出した。
「す、素手だと!どこまで私達を馬鹿にすればっ」
と、その美女が言いかけたところで『花に集う戦乙女』の人の中でも特に強そうな、亜麻色の髪をした美女がそれを遮って言った。
「油断するな……体術の使い手かもしれない」
その意見にハッとなったようだが、俺のことを知っているギシリス先生とエドワード先生は訝しげな視線を送ってくる。
まあ……なんでもいいさ。まずは小手調と行かせてもらおうかな……俺がどれだけ強くなったのかのね。
俺は挑発するために、ちょいちょいと手招きした。すると単細胞なのか、美女集団が躍起になって突っ込んできた。短絡的だ……しかし、踏み込みは鋭く早い。一気に間合いを詰められた。
俺は意識を切り替えて、戦闘モードへ移行する。視点が一人称だったものから三人称へと切り替わり、視界がオープンになる。
右左と……前後を美女達が囲み、俺の視線を撹乱するために動きながら攻撃の隙を伺っているようだ。
「速い……」
思わず俺は舌を巻いた。連携もさることながら、動きは軽やかで蝶が舞うが如しだ。個々の力も総じてレベルが高いことが見受けられる。挑発したとしても、簡単に突っ込んではきてくれないみたいだ。
俺は油断なく構え、『花に集う戦乙女』が仕掛けるのを待ち……一人が背後から襲いかかってきた気配を感じた俺は、振り向きざまに足を大きくスイングさせて回し蹴りを放った。
完璧な反応とタイミングだったが、『花に集う戦乙女』の騎士も素晴らしい反応速度で、上体を反らしてスレスレで俺の蹴りを躱した。
回し蹴りのモーションの終点の俺へと他の騎士達が鋭い剣を四方から浴びせかけてくる。なるほど……攻撃の終わりを狙っていたのか。まんまと引っかかってしまったが、なぁに……大したことはない。
俺は大きくスイングしていた右足を止めずに、勢いそのままにまずは一人の剣を上から叩き落とし、支えの足を曲げて重心を落として地面に手をつき逆立つと、足を開脚させて地面についた手を起点に身体を回す……開脚した足が四方から襲いかかってきた騎士達を薙ぎ払っていく。
初級風属性体技【嵐脚】……風邪を纏って回転する俺を中心に突風が巻き起こる。
「くぅ……」
それで女騎士達は、後退を余儀なくされて後ろに飛び退き、俺から距離を取った。
「よっと……」
俺は逆立ちの姿勢から戻ってから手を払い、目の前にいる騎士達と先生二人を見据えてボヤいた。
「なるほどー……さすがにギルダブ先輩が教えているだけあって良い動きをしますね。連携もさることながら、個々の力も高い……しかし、この中で俺と真面に戦えるのはそこの亜麻色の髪の騎士さんと先生くらいですかね」
またもや挑発気味に言った俺に対して、『花に集う戦乙女』達は憤怒した。あら……ごめんあそばせ?
「エドワード……見たか」
「うむ……まさか体術とは」
何やら後ろの方でギシリス先生とエドワード先生が話し始めたな……要注意かね。俺の中でもはや『花に集う戦乙女』が記憶の隅に追いやられそうになった時、先ほどの亜麻色の髪の騎士が前に躍り出てきて言った。
「我が名はアフィリア・フォンマターだ。我々がここまで侮辱されたのは初めてだ……」
そうですか……そりゃあ今までされなかっただろうな。ギルダブ先輩から剣を教えられ、アリステリア様の護衛なんだから……でもな、あんたらは少し固すぎるよ。お高くとまってるだけじゃ、アリステリア様の護衛なんざ務まらないぜ?
俺はそれを口にこそ出さなかったが、表情だけで表し、それを読み取ったアフィリアという騎士はやる気になったのか鋭い視線で俺を射抜き、剣を構えた。他の騎士も同様に剣を構えた。
さっきまではお互いにウォーミングアップ……互いに互いの力をある程度測るための茶番だ。
ここからは俺もギアを上げていく……そうして俺は手を前に突き出してから魔力保有領域を解放した。
「【錬成】」
俺が使うのは錬成術だ。これもこの五年で学んできた技術である。
俺の命令に従い、魔力が地面へと流れていって、唯の土塊から硬質な真っ黒の剣を作り出した。
そいつが地面から飛び出してきたのと同時に柄を掴んで決めポーズ……決まった。最高にかっくうぃいぜ……。
「よぉし……」
俺は超合金製の片手剣を右手に握り、計八名と向き合う……ちょっと挑発し過ぎたかな?殺気を感じるよぉ……ふえぇぇ。
「……しっ!!」
俺が構えて暫くして、一人が剣を振って突っ込んできた。やっぱり速い……しかし、その程度なら受け流せる。
俺は軽い感じで構えて、突っ込んできた騎士の攻撃を全て受け流す。速さもあるが重みもあって、受けていてはやられてしまうかもしれない。
そうやって俺が一人の相手をしているところに左右から二人が挟撃してくる気配を感じ取り、一度後ろに回避する。だが、後ろからもくる気配を感じたので振り向きざまに柄の先で脇腹を強打した。
「がはっ……」
騎士の一人はその一撃で沈黙……まずは一人。
「くっ……上級闇属性剣技【ネガブレイク】!やあぁぁぁ!!」
先ほど、正面から攻めてきた騎士が仲間をやられて焦ったのか剣技を使って再び突っ込んできた。
あらら……。
「バカッ!よせ!」
アフィリアの怒号が轟くが、剣技というのは途中で止めることが出来ない。それが剣技の弱点でもあり、これにカウンターを喰らってしまえば致命的だ。
だからこそ、剣技や体技といった類いの技はここぞという時以外に使うと痛い目に遭う。
俺は【ネガブレイク】を放ってきた騎士の攻撃をヒラリと躱し、すれ違い様に再び柄の先で腹部を強打して気絶させた。
「はい、二人目……おほほ〜」 
俺は余裕こいて高笑いしてみたのだが、騎士達の顔が真剣そのものになっていて全然受けなかった。悲しい……。
仕方ない……おふざけはここまでだ。こっからは真面目にやるぞ……。
残り六人。
次はギシリス先生が突っ込んできて、俺との鍔迫り合いに持ち込んでくる。ギシリス先生は女性とはいえ獣人……力では残念ながら人間である俺は敵わない。だからこそ、【ブースト】のドーピングが必要だが、敢えて使わずにギシリス先生の力を利用してバランスを崩した。
「はっ!」
「……っ!」
バランスが崩れたところを狙って剣を振り下ろしたが、さすがはギシリス先生といったところで、直ぐに体勢を立て直すとギリギリで俺の剣を躱して、直ぐに反撃してきた。
剣を振り下ろしている俺には防げない上半身への攻撃……俺は上体を屈めて避けて、上体を起こす勢いで右腕に力を込めて斜めに斬り上げた。
風鳴りが鼓膜を震わせ、ギシリス先生の胸を僅かばかり掠る……上体を反らして避けられたようだ。そこからギシリス先生は、反らした身体を前に持って行って前傾になり、両手で握る剣をズバンッと鋭い踏み込みとともに放ってきた。
常人の反応速度では到底反応し得ない速度だったが、俺には見えていたし反応出来た。
ギシリス先生の放った攻撃を半身になってギリギリで躱し、肉迫する距離で剣を振るった。
しかし、俺の振るった剣はギシリス先生が引き戻した剣で遮られ、そのまま激しい打ち込み合いとなった。
アカン……ギシリス先生の相手をするので手一杯だな……ここでエドワード先生の援護が入ると非常にまずいですわね!
あ、これフラグ建築しちゃってね?
案の定、エドワード先生が詠唱して放った中級氷属性魔術【アイススピア】……氷の槍が幾つも俺に向かって飛来してきた。
ギシリス先生は俺を最後まで引き付けてから離れ、残された俺は【アイススピア】の迎撃のために剣を振るった。
「はっ!」
短い気合いの後に、次々に飛んでくる氷の槍を剣の腹で滑るようにして受け流していく。この程度の弾幕なんざ慣れたものだ。某幻想シューティングに比べたら甘い甘い!
氷の槍を全て受け切った後、間髪入れずに『花に集う戦乙女』が背後から襲ってきたのを感じた。俺は大きく跳躍し、宙返りしながら背後にいた騎士のさらに背後へ着地し、首筋に手刀を打ち込んで気絶させる。
これで三人……。
「グレーシュは相手の位置を正確に察知する能力がある。迂闊に死角に回って攻撃するのは控えた方がいい」
ギシリス先生は俺に鋭い視線を向けたまま、『花に集う戦乙女』の残りに言った。ありゃーバラされちゃった。あのまま背後を……死角を狙われていれば、そのまま全員倒せたのに。
「……エーデルバイカ殿」
と、アフィリアは俺に剣先を向けながら隣に立つギシリス先生の名前を呼んだ。
「どうした」
ギシリス先生は目線だけアフィリアに向けて、依然として俺への警戒は怠っていない。むぅ……隙がない。
「この試合……『花に集う戦乙女』として勝利して同然だと……そう思っていた。しかし、我々は既に半分がやられてしまった……あの男一人に。ここからは我らの誇りを賭けて本気を出すが……宜しいか?」
アフィリアの瞳の中に光が宿り、空気が変わったのを俺は感じた。ギシリス先生もそれに気が付き、目線を俺に戻してから頷いた。
アフィリアはそれを確認すると、深く腰を落として叫んだ。
「固有剣技……【刹那】」
その瞬間、俺の視界からアフィリアが消え、代わりに気配が直ぐ近くにまで来ていることを確認し、反射的に気配のした方向に剣を構えてアフィリアの攻撃を防いだ。
なんだ今のはっ……!
アフィリアと鍔迫り合いになり、強引に押し込もうとするが、さすがに剣術の熟練級だ。足腰がしっかりしていて、力押しが出来ない。
アフィリアは俺を引き付けている間に、残った騎士達に命令を下す。
「全員……【刹那】の使用を許可する。この男を本気で叩くぞ」
おっと……目がマジだ。ついに本気にさせてしまったようだな。
今まで簡単にやれていたのは相手が俺のことを格下だと決め付けていたお陰だ。しかし、今はそんな侮りはなくした『花に集う戦乙女』は、本来の力をフルに使ってくる……本気で来る前にもう少し減らして置きたかったんだけどねぇ……。
俺は前後左右を高速移動する騎士達について行けず、一度目の前のアフィリアと間合いを取る為に飛び退いた。
あの【刹那】という剣技……一瞬で加速して敵との間合いを詰めるのか。恐らくはギルダブ先輩の固有剣技……厄介なことこの上ないな。
本気になった彼女達を剣で相手にするには骨が折れる……そろそろ俺も本気を出そう。
俺は前後左右を駆け回る『花に集う戦乙女』が斬りかかってくる前にことを済ませるために、迅速に行動を開始した。 
「【錬成】」
俺は魔力保有領域を解放して、黒い剣を別のものに作り変える……作り出すは弓……そして矢と矢筒だ。
俺は数秒の間に全ての準備を整えて、弓を構えた。
「弓だと……?この速さの我ら当たるはずがない!」
騎士の一人が駆け回りながら言った。さて……それはどうかな?
俺は黒い弓に黒い矢を番え、高速で俺に迫る一人の頭の横スレスレを狙って放った。
「えっ……」
俺の放った矢は、狙い通りに頭の直ぐ近くを通り過ぎると、矢が通り過ぎた衝撃だけで騎士は気絶してしまった。
これで四人……。
「このっ!」
またもや【刹那】という剣技でもう一人が突っ込んできたので、俺はそれを躱して通り過ぎていく騎士の首根っこを掴んで地に叩きつけた。
これで五人だな。
俺は弓を構えながら、残った三人に向けて言った。
「さぁて……あと三人ですね」
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