一兵士では終わらない異世界ライフ
まどろみのエリリー
〈エリリー・スカラペジュム〉
『拙者はヤコウ・ヤフブキでござる。ノーラと共に学びたいと?』
『はい!私は負けたくないんです……』
『負けたくない……と?』
『はい……ノーラは親友で大好きです……でも、同時に恋敵でもあって……だから、私も』
『ずずっ……まあ、いいでござろう……エリリーよ。拙者の下で剣を学ぶといいでござる。それが役に立つかは……自分次第でござるがね』
「………………」
のらりくらりと私はベッドから起き上がった。昔の懐かしい記憶……私やノーラがまだ十歳くらいのときだったか……お師匠様との出会いは。
トーラの町を出た後、ノーラと一緒に私の……男爵家の実家に戻って暫く……私とノーラの間に色々とあった。喧嘩ではなく……まあ、とにかく色々あった。
色々とあって、ある日通りすがりの剣術家……ヤコウ師匠に出会ったのだ。ヤコウ師匠が私のお父様が主催の闘技大会に出場したのがきっかけだった。
流れるような足捌きの中で力強い一太刀……私とノーラが魅了されたその剣術は武士道流剣術だ。
「…………ふぁ〜あ」
大欠伸をしてしまった……まあ、誰も見てないしいいよね?
私は眠たい瞼を擦り、覚醒を促すために井戸の方へと足先を向けた。井戸水のひんやりとした冷たさに頬が打たれ、次第に意識が起き上がってくる。
「ふぅ……」
さて、と私は部屋から持ってきていた自分の剣を鞘から抜き放ち、ヤコウ師匠に教わった武士道流剣術の基本型の構えをとった。これは毎朝のルーティーン……日課だ。
もちろん、それだけではない。私は毎朝十キロ近い距離を武士道流剣術の足捌きをしながら疾走している……ちなみにノーラも毎朝やっていることだが、ノーラは私がやっていることは知らない。
声を掛けて一緒にやろうか迷ったけれど、しかし私とノーラは大親友でありながら恋敵……同じ超えたい目標がある私たちが朝の自主練で一緒にいるというのもちゃんちゃらおかしな話だ。
ふと、私は走りながら目標であり想い人でもあるグレーシュ・エフォンス……グレイのことを考えていた。
グレイは私たちの気持ちには昔から気が付いていた……と思う。そこら辺は、ノーラは少し能天気なので気付いていないみたいだけど……でも、私は多分気付いていると思う。
そもそも、グレイは人の思考を読んだり気配、雰囲気を察知する特技があるのだから気付かないわけがない。
それなのにグレイが答えてくれないのは何故……それはきっとソニア先輩やラエラさんがいるからなのだろう。
グレイが二人を想う気持ちは少し異常だ。それこそ、グレイが生きている目的とか、存在意義とか、そんな風に感じる。まあ、これは昔の話……今はどうなのだろうか。きっと変わってはいない……それでもグレイが私たちに何も言わないのは今の関係を壊したくないと少なからず思っているからじゃ……?
それなら……それだけで私は満足。想い人から少しでも想われているのなら、それ以上……私は望まない。
それ以上を望むのは強欲…… 私は今の幸せで十分なのだ。だから、これ以上は望まない代わりにグレイの側に居させて欲しい……置いていかないで欲しい。私は強くなったから、だから……と、こう思ってしまうのもやはり自分が強欲であるということなのかもしれない。
「はぁ……はぁ」
私は走る。走る。
まだまだ、追っていた背中はずっと先を歩いていて……ずっと遠い……。
そろそろ切り上げて、と私は家に戻って仕事にいく準備を始めた。戦いが終わった後の事後処理にマリンネア大師長が追われているのだ。それの手助け……と、それに今日は功労者の報告もある。
伝説を打ち倒したグレイはきっと昇級……一体どれだけ階級が上がるのだろう……私は首を傾げて考えてみた。
うぅ……実力でもまだまだ遠く及ばないのに階級でも負けるのはやだ!うわ……でも、報告すればこれグレイに貸し一だよね?いや、報告は当たり前なんだけど……そしたら、それを口実にで、デデデデデートとか!?
うわっ!うわっ!!私、何考えての!
恥ずかしい……。
とにかく、早く行かないとね。ここから王城イガルスの軍事塔までは十分程度……私は家から出て王城を目指して歩き出した。早朝の王都は静かで私がたった一人、この世界にいるようだ。そんな中にふと、ノーラを見つけた。
姿勢を正した歩き姿は私から見ても格好良く、思わず苦笑してしまう。そんなノーラに私は言うのだ。
「ノーラ」
「ん?あ、エリリー!おはよ」
「うん。おはよ」
私とノーラはこうして並んで歩き出し、二人でお喋りしながら王城を目指す……こんな一時でもグレイがいてくれたらと思うのはやはり強欲なのだろうか……。
「ん……?どうしたの、エリリー?」
「え?何が?」
「何か考え事……してたでしょ?」
「分かる……?」
「そりゃあね。どんだけエリリーと一緒にいると思ってんのー。なんかあったら言いなよ。エリリー」
「うん……そうだね。なにかあったらね」
私はついノーラの能天気さに、優しさに甘えてしまった。ノーラは優しい……ちょっとお馬鹿なところもあるけれどね。だけど、それがノーラのいいところ……そんなノーラが私は大好きなのだ。今はこのままでいい……ノーラと一緒に過ごす日々が今は心地いい……。
『拙者はヤコウ・ヤフブキでござる。ノーラと共に学びたいと?』
『はい!私は負けたくないんです……』
『負けたくない……と?』
『はい……ノーラは親友で大好きです……でも、同時に恋敵でもあって……だから、私も』
『ずずっ……まあ、いいでござろう……エリリーよ。拙者の下で剣を学ぶといいでござる。それが役に立つかは……自分次第でござるがね』
「………………」
のらりくらりと私はベッドから起き上がった。昔の懐かしい記憶……私やノーラがまだ十歳くらいのときだったか……お師匠様との出会いは。
トーラの町を出た後、ノーラと一緒に私の……男爵家の実家に戻って暫く……私とノーラの間に色々とあった。喧嘩ではなく……まあ、とにかく色々あった。
色々とあって、ある日通りすがりの剣術家……ヤコウ師匠に出会ったのだ。ヤコウ師匠が私のお父様が主催の闘技大会に出場したのがきっかけだった。
流れるような足捌きの中で力強い一太刀……私とノーラが魅了されたその剣術は武士道流剣術だ。
「…………ふぁ〜あ」
大欠伸をしてしまった……まあ、誰も見てないしいいよね?
私は眠たい瞼を擦り、覚醒を促すために井戸の方へと足先を向けた。井戸水のひんやりとした冷たさに頬が打たれ、次第に意識が起き上がってくる。
「ふぅ……」
さて、と私は部屋から持ってきていた自分の剣を鞘から抜き放ち、ヤコウ師匠に教わった武士道流剣術の基本型の構えをとった。これは毎朝のルーティーン……日課だ。
もちろん、それだけではない。私は毎朝十キロ近い距離を武士道流剣術の足捌きをしながら疾走している……ちなみにノーラも毎朝やっていることだが、ノーラは私がやっていることは知らない。
声を掛けて一緒にやろうか迷ったけれど、しかし私とノーラは大親友でありながら恋敵……同じ超えたい目標がある私たちが朝の自主練で一緒にいるというのもちゃんちゃらおかしな話だ。
ふと、私は走りながら目標であり想い人でもあるグレーシュ・エフォンス……グレイのことを考えていた。
グレイは私たちの気持ちには昔から気が付いていた……と思う。そこら辺は、ノーラは少し能天気なので気付いていないみたいだけど……でも、私は多分気付いていると思う。
そもそも、グレイは人の思考を読んだり気配、雰囲気を察知する特技があるのだから気付かないわけがない。
それなのにグレイが答えてくれないのは何故……それはきっとソニア先輩やラエラさんがいるからなのだろう。
グレイが二人を想う気持ちは少し異常だ。それこそ、グレイが生きている目的とか、存在意義とか、そんな風に感じる。まあ、これは昔の話……今はどうなのだろうか。きっと変わってはいない……それでもグレイが私たちに何も言わないのは今の関係を壊したくないと少なからず思っているからじゃ……?
それなら……それだけで私は満足。想い人から少しでも想われているのなら、それ以上……私は望まない。
それ以上を望むのは強欲…… 私は今の幸せで十分なのだ。だから、これ以上は望まない代わりにグレイの側に居させて欲しい……置いていかないで欲しい。私は強くなったから、だから……と、こう思ってしまうのもやはり自分が強欲であるということなのかもしれない。
「はぁ……はぁ」
私は走る。走る。
まだまだ、追っていた背中はずっと先を歩いていて……ずっと遠い……。
そろそろ切り上げて、と私は家に戻って仕事にいく準備を始めた。戦いが終わった後の事後処理にマリンネア大師長が追われているのだ。それの手助け……と、それに今日は功労者の報告もある。
伝説を打ち倒したグレイはきっと昇級……一体どれだけ階級が上がるのだろう……私は首を傾げて考えてみた。
うぅ……実力でもまだまだ遠く及ばないのに階級でも負けるのはやだ!うわ……でも、報告すればこれグレイに貸し一だよね?いや、報告は当たり前なんだけど……そしたら、それを口実にで、デデデデデートとか!?
うわっ!うわっ!!私、何考えての!
恥ずかしい……。
とにかく、早く行かないとね。ここから王城イガルスの軍事塔までは十分程度……私は家から出て王城を目指して歩き出した。早朝の王都は静かで私がたった一人、この世界にいるようだ。そんな中にふと、ノーラを見つけた。
姿勢を正した歩き姿は私から見ても格好良く、思わず苦笑してしまう。そんなノーラに私は言うのだ。
「ノーラ」
「ん?あ、エリリー!おはよ」
「うん。おはよ」
私とノーラはこうして並んで歩き出し、二人でお喋りしながら王城を目指す……こんな一時でもグレイがいてくれたらと思うのはやはり強欲なのだろうか……。
「ん……?どうしたの、エリリー?」
「え?何が?」
「何か考え事……してたでしょ?」
「分かる……?」
「そりゃあね。どんだけエリリーと一緒にいると思ってんのー。なんかあったら言いなよ。エリリー」
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