一兵士では終わらない異世界ライフ
対立の伝説
☆☆☆
ゼフィアンはヨリトからソニアを預かり、【念動力】でソニアを宙に浮かしながら近くのソファに横たえた。
「教えては貰えなさそうだな」
ヨリトの言葉が先ほどの、人質とはどういうことかという問い掛けなのは勿論直ぐにゼフィアンは気付いていた。意図的に隠しているわけではないが、男嫌いのゼフィアンが素直に教える気が起きるはずもない。
が、ヨリトは大切な駒だ。駒に臍を曲げられるのは避けたい。
「別にぃ〜?教えてあげるわよぉ……その子は、聞いた話だと誰にも治せない不治の病を一瞬で治したというわぁー。ねぇ〜?イガーラ王国の国王様が患っていた病気が何か知ってるかしらぁ〜?」
「国王様?……いや」
ヨリトが首をかしげると、ゼフィアンは露骨にそれを馬鹿にするよう嘲笑した。
「世俗に疎いのは宜しくないわねぇ〜?まあ、説明するわぁ〜」
ゼフィアンの説明によれば、イガーラ国王の病は実のところ呪いであり、それを掛けたのは紛れもないヨリトの目の前に座るゼフィアンその人であった。
「一体、なんの目的で……」
ヨリトは困惑しつつゼフィアンに尋ね、ゼフィアンは肩をすくめながら答えた。
「もちろん、国のトップが弱れば国力だって自然と弱まるでしょう?そうして、世継ぎ争いで内乱……悪くないでしょぉ〜?」
あっけらかんと言うゼフィアンにヨリトは溜息を吐き、そしてふとアヤト・ヨシモリのことを思い出した。風の噂だが、アヤトのいる国の王も不治の病だとか……。
「お前、アヤトのとこの……」
ヨリトが言いかけたところで、ふとゼフィアンの背後に黒い靄のようなものが現れたことに気がつき、咄嗟に口を噤んだ。
それはゼフィアンも同じであり、その後ろにいたシオンも同様に身体を硬直させた。
パカラッパカラッ
という蹄の音が聞こえたかと思うと、その人物はいるのだ。伝説序列一位、モーガン・ブラッキーが相棒の黒い馬に跨って、ゼフィアンの執務室に当たり前のように存在していた。
モーガンはソファに横たわるソニアを見下ろしている。ボロマントのフードの奥で、微かにだが懐かしき遠い思い出を見るかのような瞳の色をモーガンは見せた。それが酷く異様に思えて、ゼフィアンは眉間に皺を寄せて言った。
「ブラッキー……私の近くに突然出てこないで欲しいわぁ……」
飽くまでもモーガンは事の成り行きを見届けに来ている。この期間、モーガンがゼフィアンに何かすることは決してない。それに、モーガンは基本は無口で何事にも無関心。うるさいのは下の黒い馬の方だ。
現状、モーガンとゼフィアンの立場としてはゼフィアンが上といっても差し支えはなかった。
ゼフィアンの言葉にやはりモーガンは反応せず、代わりに馬が反応を示した。
『ブルゥ?ねぇーちゃんブルゥ!ご主人は、ねぇーちゃんのために戻ってきたんだブルゥ!そんなこと言わずに素直に感謝しろってんだブルゥ!!』
「はぁ〜??私のためって……っ!!!」
ゼフィアンは馬の戯言に反感を覚え、何かを口にしようとし……その口を閉ざした。理由は至極単純で、
瞬きの間に執務室が真っ二つに裂けていたからだ。
モーガンはその執務室の中央で、馬に跨ったまま何かを胸のまえで掴んでいた。見ると、それは光り輝く矢……やがてその輝きを失うと同時に推進力を一帯に爆発させる。
「きゃ!?」
「うぉ!?」
シオンとヨリトが爆風に吹き飛ばされて壁に激突し、ゼフィアンは何とかその場で堪える。机や椅子は飛ばされ、執務室には人しか残っていなかった。
これが、ゼフィアンのためだという馬の言葉の意味だとゼフィアンは直ぐに理解して口を開いた。
「な、何よ……今のは!?」
ゼフィアンの絶叫にも似た問い掛けに、やはり馬の方が答えた。
『グレーシュ・エフォンス……奴に決まってるブルゥ。このソニアという女は、グレーシュの姉だブルゥ!きっと、姉を取り返すためにこっちまで来るブルゥ』
グレーシュ・エフォンス……ゼフィアンは勿論、その人物のことを知っている。直に会ったこともある。が、まさかこのようなことができる人物には思えなかった。たしかに、ベルリガウスを倒すほどの実力はあったが……あれは単独ではなかったし、何より強者特有の覇気がなかった……と、そこまで考えてゼフィアンはモーガンを見つめた。
目の前に立つモーガン・ブラッキーとて、それは同じだ。
モーガン・ブラッキーもまた、強者の覇気を持たない。強者とはまた異質な存在感を持つ……グレーシュのもつものは、モーガンのそれと酷似しているようでならなかった。
モーガンは腕にソニアを抱き抱えて守っていた。それを優しく綺麗な床面に横たえると、再び馬が続けた。
『ご主人は伝説同士がぶつかると、そう考えていたブルゥ。しかし、その予想をグレーシュ・エフォンスが打ち砕き、単独で伝説の一角……セルルカ・アイスベートを打倒してしまったブルゥ……これはあってはならないことブルゥ……』
「あっては……ならない?どぉいうことかしらぁー?」
ゼフィアンの問いには馬は答えなかった。まるで、最初から言うべきことだけを伝えるためにここに来たかのようだ。
ゼフィアンは歯噛みしつつ、ハッとしてからソニアに目を向けながら再び尋ねた。
「ブラッキー……貴方は何を知っているのかしらぁ〜?ソニア・エフォンスのことを……」
ゼフィアンはソニア・エフォンスのことについて少なからず知っていた。ソニア・エフォンスの圧倒的な神聖属性の力は、紛れもなく神の力の一部だ。
両親のどちらかが神に関係しているか、もしくは神の転生か、はたまた全く違う存在なのか……全ては憶測にしかならないが、ソニアが神に関係しているのは確かだ。
【ゼロキュレス】もまた神であり、それを御するには同じ神に等しい力が必要だった。そのうちの一つがヨリトたちの持つ神器……人が人の分不相応の力を振るうための神が齎した神の業を振るう武器。それが神器……。
神器とソニアがいれば、【ゼロキュレス】を召喚した後も制御が可能であるというのは魔本の表記から見て取れた。
そして、目の前にいるモーガン・ブラッキーは恐らくだがソニア・エフォンスのことを知っている。彼女の正体を知っている。
もちろん、答えを期待しての問いではあったが答えないことも考慮していた。が、意外なことにモーガンはすんなりと答えたのだった。
「……彼女は、紛れもなく神の子だ」
「……ぇ?」
一瞬、聞き取れなかった。まるで音声に靄がかかっているようなものだったが、辛うじてゼフィアンは聞き取れた。今のは、馬の声ではない。間違いなく、モーガン・ブラッキー本人のものだった。
しかし、今の声は……?
そうゼフィアンが何か引っかかり、再びモーガンに問いかけようとした時であった。今度はビリビリと大気を震わせながら、ベルリガウスが現れたのだ。
全く今日は来訪者が多いと、ゼフィアンは嘆息して本能的に女の子を求めてシオンを見るが壁にぶつかった衝撃で気絶してしまったようだった。
真っ二つにって開けた室内からは夜空が見えていた。月明かりが照らすのは、ゼフィアンもモーガン、ベルリガウスの三人だけであり、シオンと同じく気絶していたヨリトも月明かりの中にはいない。
「よぉぉ〜??良いもんが見れたぜぇ」
「良いものぉー?なによぉそれぇ〜?」
「クックックッ……俺様はついてぇるぜぇ。ブラッキーは、飽くまでも中立で戦いには参加しねぇと思ったがぁ……どぉやら、グレーシュってぇ奴に個人的な因縁でもあるみてぇだなぁ?」
ベルリガウスの高圧的な問いかけに対してもモーガンは臆することなく手綱を引き、ベルリガウスへと目を向ける。
ゼフィアンは剣呑な雰囲気に、まさかと頬をひくつかせる。
ベルリガウスの目的は徹頭徹尾、強者との闘い……そしてこの場で最強なのは正しくモーガン・ブラッキーだ。もはや、この後ベルリガウスが何を口走るか理解出来た。
「悪りぃなぁ、ゼフィアン。俺様は、てめぇらと敵対するぜぇ?」
「っ!待ちなさい、ベルリガウス!」
「クックックッ……ここにいやがった俺様は良いことを考えるぅ。つえぇ奴と闘いてぇなら、自分で育てりゃあいい……そうだぁ、そうだよなぁ??」
ベルリガウスはそのまま帯電し、この場から疾走する。モーガンはそれを追うことなく、見つめる。
「ブラッキー……何故追わないのよぉ〜?」
ゼフィアンが頭痛でもするかのように問いかけると、モーガンの馬が鳴きながら答えた。
『ヒヒィーン!ご主人とベルリガウスがここで闘ってたら、大陸が消滅するブルゥ。それはご主人としては避けたいことブルゥ』
「消滅……そうねぇー……そういう人達だものねぇ……」
伝説同士の戦闘は大陸規模。知ってはいるが、本当に人智を凌駕しているとか、そんな生易しいレベルではないと、改めて思い知らされた。
それと同時に、ベルリガウスのことで頭痛を覚えた。
ベルリガウス・ペンタギュラスの思考は至極単純であり、あの口振りからして自らがモーガンと敵対して戦うつもりなのか、もしくは……グレーシュ・エフォンスを育てるのか……。
後者に関しては、ベルリガウスに教育者としての力がないと思われ、なさそうだった。
「何にせよ……邪魔だけはさせないわよぉ……」
荒れ果てた執務室で、月明かりが照らしていたのは床面に横たわるソニアだけ。イガーラとバニッシュベルトとの戦争は終盤を迎え、各々の企みや野望や希望を胸に、戦場は血に濡れる。
ゼフィアンはヨリトからソニアを預かり、【念動力】でソニアを宙に浮かしながら近くのソファに横たえた。
「教えては貰えなさそうだな」
ヨリトの言葉が先ほどの、人質とはどういうことかという問い掛けなのは勿論直ぐにゼフィアンは気付いていた。意図的に隠しているわけではないが、男嫌いのゼフィアンが素直に教える気が起きるはずもない。
が、ヨリトは大切な駒だ。駒に臍を曲げられるのは避けたい。
「別にぃ〜?教えてあげるわよぉ……その子は、聞いた話だと誰にも治せない不治の病を一瞬で治したというわぁー。ねぇ〜?イガーラ王国の国王様が患っていた病気が何か知ってるかしらぁ〜?」
「国王様?……いや」
ヨリトが首をかしげると、ゼフィアンは露骨にそれを馬鹿にするよう嘲笑した。
「世俗に疎いのは宜しくないわねぇ〜?まあ、説明するわぁ〜」
ゼフィアンの説明によれば、イガーラ国王の病は実のところ呪いであり、それを掛けたのは紛れもないヨリトの目の前に座るゼフィアンその人であった。
「一体、なんの目的で……」
ヨリトは困惑しつつゼフィアンに尋ね、ゼフィアンは肩をすくめながら答えた。
「もちろん、国のトップが弱れば国力だって自然と弱まるでしょう?そうして、世継ぎ争いで内乱……悪くないでしょぉ〜?」
あっけらかんと言うゼフィアンにヨリトは溜息を吐き、そしてふとアヤト・ヨシモリのことを思い出した。風の噂だが、アヤトのいる国の王も不治の病だとか……。
「お前、アヤトのとこの……」
ヨリトが言いかけたところで、ふとゼフィアンの背後に黒い靄のようなものが現れたことに気がつき、咄嗟に口を噤んだ。
それはゼフィアンも同じであり、その後ろにいたシオンも同様に身体を硬直させた。
パカラッパカラッ
という蹄の音が聞こえたかと思うと、その人物はいるのだ。伝説序列一位、モーガン・ブラッキーが相棒の黒い馬に跨って、ゼフィアンの執務室に当たり前のように存在していた。
モーガンはソファに横たわるソニアを見下ろしている。ボロマントのフードの奥で、微かにだが懐かしき遠い思い出を見るかのような瞳の色をモーガンは見せた。それが酷く異様に思えて、ゼフィアンは眉間に皺を寄せて言った。
「ブラッキー……私の近くに突然出てこないで欲しいわぁ……」
飽くまでもモーガンは事の成り行きを見届けに来ている。この期間、モーガンがゼフィアンに何かすることは決してない。それに、モーガンは基本は無口で何事にも無関心。うるさいのは下の黒い馬の方だ。
現状、モーガンとゼフィアンの立場としてはゼフィアンが上といっても差し支えはなかった。
ゼフィアンの言葉にやはりモーガンは反応せず、代わりに馬が反応を示した。
『ブルゥ?ねぇーちゃんブルゥ!ご主人は、ねぇーちゃんのために戻ってきたんだブルゥ!そんなこと言わずに素直に感謝しろってんだブルゥ!!』
「はぁ〜??私のためって……っ!!!」
ゼフィアンは馬の戯言に反感を覚え、何かを口にしようとし……その口を閉ざした。理由は至極単純で、
瞬きの間に執務室が真っ二つに裂けていたからだ。
モーガンはその執務室の中央で、馬に跨ったまま何かを胸のまえで掴んでいた。見ると、それは光り輝く矢……やがてその輝きを失うと同時に推進力を一帯に爆発させる。
「きゃ!?」
「うぉ!?」
シオンとヨリトが爆風に吹き飛ばされて壁に激突し、ゼフィアンは何とかその場で堪える。机や椅子は飛ばされ、執務室には人しか残っていなかった。
これが、ゼフィアンのためだという馬の言葉の意味だとゼフィアンは直ぐに理解して口を開いた。
「な、何よ……今のは!?」
ゼフィアンの絶叫にも似た問い掛けに、やはり馬の方が答えた。
『グレーシュ・エフォンス……奴に決まってるブルゥ。このソニアという女は、グレーシュの姉だブルゥ!きっと、姉を取り返すためにこっちまで来るブルゥ』
グレーシュ・エフォンス……ゼフィアンは勿論、その人物のことを知っている。直に会ったこともある。が、まさかこのようなことができる人物には思えなかった。たしかに、ベルリガウスを倒すほどの実力はあったが……あれは単独ではなかったし、何より強者特有の覇気がなかった……と、そこまで考えてゼフィアンはモーガンを見つめた。
目の前に立つモーガン・ブラッキーとて、それは同じだ。
モーガン・ブラッキーもまた、強者の覇気を持たない。強者とはまた異質な存在感を持つ……グレーシュのもつものは、モーガンのそれと酷似しているようでならなかった。
モーガンは腕にソニアを抱き抱えて守っていた。それを優しく綺麗な床面に横たえると、再び馬が続けた。
『ご主人は伝説同士がぶつかると、そう考えていたブルゥ。しかし、その予想をグレーシュ・エフォンスが打ち砕き、単独で伝説の一角……セルルカ・アイスベートを打倒してしまったブルゥ……これはあってはならないことブルゥ……』
「あっては……ならない?どぉいうことかしらぁー?」
ゼフィアンの問いには馬は答えなかった。まるで、最初から言うべきことだけを伝えるためにここに来たかのようだ。
ゼフィアンは歯噛みしつつ、ハッとしてからソニアに目を向けながら再び尋ねた。
「ブラッキー……貴方は何を知っているのかしらぁ〜?ソニア・エフォンスのことを……」
ゼフィアンはソニア・エフォンスのことについて少なからず知っていた。ソニア・エフォンスの圧倒的な神聖属性の力は、紛れもなく神の力の一部だ。
両親のどちらかが神に関係しているか、もしくは神の転生か、はたまた全く違う存在なのか……全ては憶測にしかならないが、ソニアが神に関係しているのは確かだ。
【ゼロキュレス】もまた神であり、それを御するには同じ神に等しい力が必要だった。そのうちの一つがヨリトたちの持つ神器……人が人の分不相応の力を振るうための神が齎した神の業を振るう武器。それが神器……。
神器とソニアがいれば、【ゼロキュレス】を召喚した後も制御が可能であるというのは魔本の表記から見て取れた。
そして、目の前にいるモーガン・ブラッキーは恐らくだがソニア・エフォンスのことを知っている。彼女の正体を知っている。
もちろん、答えを期待しての問いではあったが答えないことも考慮していた。が、意外なことにモーガンはすんなりと答えたのだった。
「……彼女は、紛れもなく神の子だ」
「……ぇ?」
一瞬、聞き取れなかった。まるで音声に靄がかかっているようなものだったが、辛うじてゼフィアンは聞き取れた。今のは、馬の声ではない。間違いなく、モーガン・ブラッキー本人のものだった。
しかし、今の声は……?
そうゼフィアンが何か引っかかり、再びモーガンに問いかけようとした時であった。今度はビリビリと大気を震わせながら、ベルリガウスが現れたのだ。
全く今日は来訪者が多いと、ゼフィアンは嘆息して本能的に女の子を求めてシオンを見るが壁にぶつかった衝撃で気絶してしまったようだった。
真っ二つにって開けた室内からは夜空が見えていた。月明かりが照らすのは、ゼフィアンもモーガン、ベルリガウスの三人だけであり、シオンと同じく気絶していたヨリトも月明かりの中にはいない。
「よぉぉ〜??良いもんが見れたぜぇ」
「良いものぉー?なによぉそれぇ〜?」
「クックックッ……俺様はついてぇるぜぇ。ブラッキーは、飽くまでも中立で戦いには参加しねぇと思ったがぁ……どぉやら、グレーシュってぇ奴に個人的な因縁でもあるみてぇだなぁ?」
ベルリガウスの高圧的な問いかけに対してもモーガンは臆することなく手綱を引き、ベルリガウスへと目を向ける。
ゼフィアンは剣呑な雰囲気に、まさかと頬をひくつかせる。
ベルリガウスの目的は徹頭徹尾、強者との闘い……そしてこの場で最強なのは正しくモーガン・ブラッキーだ。もはや、この後ベルリガウスが何を口走るか理解出来た。
「悪りぃなぁ、ゼフィアン。俺様は、てめぇらと敵対するぜぇ?」
「っ!待ちなさい、ベルリガウス!」
「クックックッ……ここにいやがった俺様は良いことを考えるぅ。つえぇ奴と闘いてぇなら、自分で育てりゃあいい……そうだぁ、そうだよなぁ??」
ベルリガウスはそのまま帯電し、この場から疾走する。モーガンはそれを追うことなく、見つめる。
「ブラッキー……何故追わないのよぉ〜?」
ゼフィアンが頭痛でもするかのように問いかけると、モーガンの馬が鳴きながら答えた。
『ヒヒィーン!ご主人とベルリガウスがここで闘ってたら、大陸が消滅するブルゥ。それはご主人としては避けたいことブルゥ』
「消滅……そうねぇー……そういう人達だものねぇ……」
伝説同士の戦闘は大陸規模。知ってはいるが、本当に人智を凌駕しているとか、そんな生易しいレベルではないと、改めて思い知らされた。
それと同時に、ベルリガウスのことで頭痛を覚えた。
ベルリガウス・ペンタギュラスの思考は至極単純であり、あの口振りからして自らがモーガンと敵対して戦うつもりなのか、もしくは……グレーシュ・エフォンスを育てるのか……。
後者に関しては、ベルリガウスに教育者としての力がないと思われ、なさそうだった。
「何にせよ……邪魔だけはさせないわよぉ……」
荒れ果てた執務室で、月明かりが照らしていたのは床面に横たわるソニアだけ。イガーラとバニッシュベルトとの戦争は終盤を迎え、各々の企みや野望や希望を胸に、戦場は血に濡れる。
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