一兵士では終わらない異世界ライフ
力の化身
☆☆☆
「市民の避難急いで!」
「「ハッ!」」
「こっちは侵入した魔術師達の掃討だよ!」
「「了解!」」
「お前達!何としても王都を守り抜け!」
「「おぉ!!」」
エリリーとノーラントの怒号が走り、二人の上司であるマリンネアの言葉に兵士達が湧き上がる。
エリリーの師兵団は市民の避難誘導と護衛を行ない、ノーラントの師兵団が敵の掃討を行う。マリンネアの下に付いている他の師兵団も忙しなく王都を駆け回り、魔術師との交戦を繰り返し、市民の避難を迅速に行なっていた。
敵の掃討を任されたノーラントは自身の師兵団を引き連れて、街を破壊して回る敵を一掃するために武器を持って街中を走り回っていた。
「そぉりゃあ!」
ノーラントの気合いの声と共に、腰に帯びていた剣は引き抜かれる。引き抜かれて直ぐに街を破壊していた魔術師を斬り、ノーラントは叫んだ。
「ここはウチらの国だよ!出ていきな!」
剣先を魔術師共に向け、ノーラントの存在に気付いた魔術師達は軍隊の出動に臆することなく顔を見合わせるとノーラントを嘲笑うかのように笑い声を上げた。
「クックック……その程度の数で我らを倒せると?」
「魔術協会をあまり嘗めてもらっては困りますな」
「……あれは」
ノーラントは魔術師達の背後から現れた数体の巨大な影を見て、戦慄した。
ノーラントにとっても馴染みのある代物だったからだ。雷帝の戦で何体も見た……バニッシュベルト帝国が誇る最強の軍事兵器魔導機械だ。
「どうしてそれが!」
ノーラントが叫ぶと同時に、人型の魔導機械三体がノーラントに向かって足に取り付けられたローラーを高速回転させてノーラントに急速接近する。
「ちょっ」
ノーラントは急に距離を詰めてくる大きな鉄の塊に頬を引攣らせ、咄嗟に横へ逃げるように飛び退いて地面に転がる。
人型の魔導機械はノーラントのいた場所を通り過ぎると右足を支点に反転し、飛び退いたノーラントに身体の正面を合わせて再び接近を開始する。それに合わせ、他の二体もノーラントを囲うように接近を始める。
「むぅ……」
ノーラントは眼球を回し、瞬時に状況を判断。頭を高速回転させ、およそゼロコンマ数秒の間に打開策を構築する。
キィィンという甲高いを音を立て、一体の人型魔導機械がノーラントの背後から強襲を開始、ノーラントは包帯の巻かれた左脚を蹴り上げる。そうするや否や、蹴り上げた左脚が爆発的に加速し、魔導機械が今まさにノーラントを押し潰そうとしていた鉄の拳をノーラントがバク転しながら蹴り上げた左脚と衝突すると衝撃が走ると共に弾かれた。
それだけには止まらず、人型魔導機械はその衝撃で後方数十メートルまでその巨大を後退させ、人型魔導機械は背面から地面に倒れた。
その圧倒的な膂力を前に、魔術師達がどよめいた。
ノーラントと人型魔導機械の体格差はもちろんのことだが、魔導機械の重さは到底普通の人族の力でどうにかできるものではない。魔術であっても熟練級を超えるものでなければまともにダメージも入らない分厚い装甲をしている。それを蹴り飛ばしたノーラントの膂力は尋常ではない。
当の本人はバク転したまま綺麗に地面へ着地し、剣を肩に担ぐようにしてその場に立っていた。
包帯の巻かれていた左脚は、包帯がボロボロになって剥がれるようにして隠されていた左脚が露見する。露見した左脚はまるで山羊の後ろ足のように逆屈折し、足先も山羊の蹄のようになっていた。
それに続くように左手の包帯も風に流されるようにして解け、力強い百獣の王の腕が露わとなる。
「は、半魔人化している……」
一人の魔術師がそう言うと、左目の瞳孔が獣のように細くなったノーラントが視線をそちらへ移す。すると、その鋭い眼光に魔術師達が恐れ慄いた。先ほどの驚くべき光景も合わさって、泡を食って逃げ出す者も出てくる。
だが、まだ人型魔導機械は二体残っていた。
二体の人型魔導機械はキイィィンと甲高い音を立て、左右から挟撃するようにノーラントを攻め入る。
ノーラントはそれを左から右へ流れるように確認し、一つため息を零した。
「はぁ、師匠には邪道だって言われてるんだけどね……っ!」
ノーラントは剣を肩に担いだまま腰を落として構え、まず左からくる人型魔導機械に向けて一閃……右手に握る剣を上段から斜めに振り下ろす。しかし、さすがに魔導機械とあってその装甲は厚く切り裂くには至らなかったが確かにダメージは与えていた。
ノーラントは振り下ろした剣をクルクルと回転させるように手放し、背中を通って回転させた剣を今度は身体を反転させて右足の甲で柄尻を蹴り飛ばす。
柄尻を蹴られた剣は、その剣先を魔導機械へ向けて宙を直進……丁度魔導機械の右膝の関節部分を貫通する。
ノーラントは蹴り飛ばした直後に貫通する先まで移動し、貫通して宙を舞っていた剣の先を左腕の肘で打ち上げ、打ち上がって回転しながら落ちてくる剣を右手で掴み、再び肩に担いだ。
「にししっ」
ノーラントはしてやったりと、満足げに右膝を失って立てなくなった魔導機械を見て笑う。
これがノーラントが師匠から邪道だと言われたノーラントの固有剣術とも言える技だ。ノーラントが独学で身に付けた完全なオリジナル剣術であり、剣士としては邪道なことに剣を殆ど手の中にキープすることなく剣を振るう剣術だ。剣を左手から右手に持ち替えたり、先ほどのように空中に投げて蹴り飛ばしたりなど……やることがあまりにも奇抜であり、それ故に予測されにくい動きが出来る。
もちろん、やる側にも繊細な剣捌きが必要である。その点、ノーラントは繊細な剣捌きというのをエリリーの師匠でもある者から武士道流として教わっていた。
右から挟撃しようとしていた人型魔導機械は左の魔導機械が沈黙したのを見て、攻めあぐねていた。ノーラントは肩に担いだ剣を下ろし、右手の指先で遊ぶようにクルクルと回す。剣の重さを考えても、指先だけであのようにクルクルと回す力と繊細さ……それはどちらともノーラントしか持っていないものだった。
「ほらほら、さっさと出て行って。さもないと、ウチの剣の錆にするよ!」
これがノーラント本来のスタイルとも言えるべき姿だった。その立ち姿はまさしく百獣の王……何者にも脅かされず、何者も従える風格があった。
☆☆☆
ところ変わり、エキドナがソニアを助けに王宮にある国王の寝室へ現れ、八番と戦闘になるところへ場所へ移る。
「八番……あなた程度でエキドナを倒せると?」
「私が貴様に劣っていたのは昔の話だったはずだがね、エキドナ。私を昔の私だと見くびっていると、痛い目を見るだろう」
「それは楽しみだわ。このエキドナを満足させられたらご褒美をあげるわ」
「ふむ……どこまでも忌々しい女狐だ。その口、黙らせてやろう。【ストーンランス】」
熟練級地属性魔術【ストーンランス】は初級の【ロックランス】の上位互換魔術だ。八番の周囲に槍状の岩が五つほど生成され、それが弾丸のようにエキドナに向けて放たれる。
エキドナは右手を前に出し、ソニアを守るように足の触手をソニアの腰に巻きつけて自分の背後に隠す。それと同時に達人級闇属性魔術の【念動力】で全ての岩の槍を自分の手前で停止させ、それを逆に八番に向けて放つ。
しかし、それらの岩の槍は八番の手間で粉々に砕けてしまい、八番にダメージは入らなかった。
「ふむ……昔と変わらんな」
「あなたは……昔よりは面白くなったわね?」
エキドナと八番は睨み合う。そんな中でエキドナの触手に捕まっているとソニアは、不安げに言った。
「エキドナさん……」
「市民の避難急いで!」
「「ハッ!」」
「こっちは侵入した魔術師達の掃討だよ!」
「「了解!」」
「お前達!何としても王都を守り抜け!」
「「おぉ!!」」
エリリーとノーラントの怒号が走り、二人の上司であるマリンネアの言葉に兵士達が湧き上がる。
エリリーの師兵団は市民の避難誘導と護衛を行ない、ノーラントの師兵団が敵の掃討を行う。マリンネアの下に付いている他の師兵団も忙しなく王都を駆け回り、魔術師との交戦を繰り返し、市民の避難を迅速に行なっていた。
敵の掃討を任されたノーラントは自身の師兵団を引き連れて、街を破壊して回る敵を一掃するために武器を持って街中を走り回っていた。
「そぉりゃあ!」
ノーラントの気合いの声と共に、腰に帯びていた剣は引き抜かれる。引き抜かれて直ぐに街を破壊していた魔術師を斬り、ノーラントは叫んだ。
「ここはウチらの国だよ!出ていきな!」
剣先を魔術師共に向け、ノーラントの存在に気付いた魔術師達は軍隊の出動に臆することなく顔を見合わせるとノーラントを嘲笑うかのように笑い声を上げた。
「クックック……その程度の数で我らを倒せると?」
「魔術協会をあまり嘗めてもらっては困りますな」
「……あれは」
ノーラントは魔術師達の背後から現れた数体の巨大な影を見て、戦慄した。
ノーラントにとっても馴染みのある代物だったからだ。雷帝の戦で何体も見た……バニッシュベルト帝国が誇る最強の軍事兵器魔導機械だ。
「どうしてそれが!」
ノーラントが叫ぶと同時に、人型の魔導機械三体がノーラントに向かって足に取り付けられたローラーを高速回転させてノーラントに急速接近する。
「ちょっ」
ノーラントは急に距離を詰めてくる大きな鉄の塊に頬を引攣らせ、咄嗟に横へ逃げるように飛び退いて地面に転がる。
人型の魔導機械はノーラントのいた場所を通り過ぎると右足を支点に反転し、飛び退いたノーラントに身体の正面を合わせて再び接近を開始する。それに合わせ、他の二体もノーラントを囲うように接近を始める。
「むぅ……」
ノーラントは眼球を回し、瞬時に状況を判断。頭を高速回転させ、およそゼロコンマ数秒の間に打開策を構築する。
キィィンという甲高いを音を立て、一体の人型魔導機械がノーラントの背後から強襲を開始、ノーラントは包帯の巻かれた左脚を蹴り上げる。そうするや否や、蹴り上げた左脚が爆発的に加速し、魔導機械が今まさにノーラントを押し潰そうとしていた鉄の拳をノーラントがバク転しながら蹴り上げた左脚と衝突すると衝撃が走ると共に弾かれた。
それだけには止まらず、人型魔導機械はその衝撃で後方数十メートルまでその巨大を後退させ、人型魔導機械は背面から地面に倒れた。
その圧倒的な膂力を前に、魔術師達がどよめいた。
ノーラントと人型魔導機械の体格差はもちろんのことだが、魔導機械の重さは到底普通の人族の力でどうにかできるものではない。魔術であっても熟練級を超えるものでなければまともにダメージも入らない分厚い装甲をしている。それを蹴り飛ばしたノーラントの膂力は尋常ではない。
当の本人はバク転したまま綺麗に地面へ着地し、剣を肩に担ぐようにしてその場に立っていた。
包帯の巻かれていた左脚は、包帯がボロボロになって剥がれるようにして隠されていた左脚が露見する。露見した左脚はまるで山羊の後ろ足のように逆屈折し、足先も山羊の蹄のようになっていた。
それに続くように左手の包帯も風に流されるようにして解け、力強い百獣の王の腕が露わとなる。
「は、半魔人化している……」
一人の魔術師がそう言うと、左目の瞳孔が獣のように細くなったノーラントが視線をそちらへ移す。すると、その鋭い眼光に魔術師達が恐れ慄いた。先ほどの驚くべき光景も合わさって、泡を食って逃げ出す者も出てくる。
だが、まだ人型魔導機械は二体残っていた。
二体の人型魔導機械はキイィィンと甲高い音を立て、左右から挟撃するようにノーラントを攻め入る。
ノーラントはそれを左から右へ流れるように確認し、一つため息を零した。
「はぁ、師匠には邪道だって言われてるんだけどね……っ!」
ノーラントは剣を肩に担いだまま腰を落として構え、まず左からくる人型魔導機械に向けて一閃……右手に握る剣を上段から斜めに振り下ろす。しかし、さすがに魔導機械とあってその装甲は厚く切り裂くには至らなかったが確かにダメージは与えていた。
ノーラントは振り下ろした剣をクルクルと回転させるように手放し、背中を通って回転させた剣を今度は身体を反転させて右足の甲で柄尻を蹴り飛ばす。
柄尻を蹴られた剣は、その剣先を魔導機械へ向けて宙を直進……丁度魔導機械の右膝の関節部分を貫通する。
ノーラントは蹴り飛ばした直後に貫通する先まで移動し、貫通して宙を舞っていた剣の先を左腕の肘で打ち上げ、打ち上がって回転しながら落ちてくる剣を右手で掴み、再び肩に担いだ。
「にししっ」
ノーラントはしてやったりと、満足げに右膝を失って立てなくなった魔導機械を見て笑う。
これがノーラントが師匠から邪道だと言われたノーラントの固有剣術とも言える技だ。ノーラントが独学で身に付けた完全なオリジナル剣術であり、剣士としては邪道なことに剣を殆ど手の中にキープすることなく剣を振るう剣術だ。剣を左手から右手に持ち替えたり、先ほどのように空中に投げて蹴り飛ばしたりなど……やることがあまりにも奇抜であり、それ故に予測されにくい動きが出来る。
もちろん、やる側にも繊細な剣捌きが必要である。その点、ノーラントは繊細な剣捌きというのをエリリーの師匠でもある者から武士道流として教わっていた。
右から挟撃しようとしていた人型魔導機械は左の魔導機械が沈黙したのを見て、攻めあぐねていた。ノーラントは肩に担いだ剣を下ろし、右手の指先で遊ぶようにクルクルと回す。剣の重さを考えても、指先だけであのようにクルクルと回す力と繊細さ……それはどちらともノーラントしか持っていないものだった。
「ほらほら、さっさと出て行って。さもないと、ウチの剣の錆にするよ!」
これがノーラント本来のスタイルとも言えるべき姿だった。その立ち姿はまさしく百獣の王……何者にも脅かされず、何者も従える風格があった。
☆☆☆
ところ変わり、エキドナがソニアを助けに王宮にある国王の寝室へ現れ、八番と戦闘になるところへ場所へ移る。
「八番……あなた程度でエキドナを倒せると?」
「私が貴様に劣っていたのは昔の話だったはずだがね、エキドナ。私を昔の私だと見くびっていると、痛い目を見るだろう」
「それは楽しみだわ。このエキドナを満足させられたらご褒美をあげるわ」
「ふむ……どこまでも忌々しい女狐だ。その口、黙らせてやろう。【ストーンランス】」
熟練級地属性魔術【ストーンランス】は初級の【ロックランス】の上位互換魔術だ。八番の周囲に槍状の岩が五つほど生成され、それが弾丸のようにエキドナに向けて放たれる。
エキドナは右手を前に出し、ソニアを守るように足の触手をソニアの腰に巻きつけて自分の背後に隠す。それと同時に達人級闇属性魔術の【念動力】で全ての岩の槍を自分の手前で停止させ、それを逆に八番に向けて放つ。
しかし、それらの岩の槍は八番の手間で粉々に砕けてしまい、八番にダメージは入らなかった。
「ふむ……昔と変わらんな」
「あなたは……昔よりは面白くなったわね?」
エキドナと八番は睨み合う。そんな中でエキドナの触手に捕まっているとソニアは、不安げに言った。
「エキドナさん……」
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